2016年3月17日木曜日

SPEEDI信頼性なく避難に使えないと規制委

 政府は自治体の裁量でSPEEDI活用することを容認しましたが、原子力規制委は活用しない立場で、16日、SPEEDIを用いた放射性物質の拡散予測「信頼性ない」とし、原発事故時住民避難に活用するのは弊害が多いとする文書をまとめました
 同文書では、放射性物質の放出タイミングを事前に把握することは不可能とし、SPEEDIの予測を住民避難に活用すれば「かえって避難を混乱させ、被ばくの危険性を増大させる」と強調しているということです
 
 SPEEDIが(原発が決める)放射性物質の放出のタイミングや放出量を予測することができないのは当たり前のことで、元々SPEEDIは、放射能放出のタイミングと量について原発から情報を得て、それに気象条件(風向・風速・気温・降雨量などの予測値)を加味することで、放射能の拡散状態を予測するものです(その精度は福島原発事故時では実際の汚染の実態とほぼ一致するほどに高いものでした)。
 
 それを信頼性がないとか、拡散予測が出ると却って混乱するなどと言って、SPEEDIを使わないことを必死に合理化しようとするのは何故なのでしょうか。規制委は昨年4月~8月に唐突にそうした方針に転じましたが、その時も納得できる理由は提示されませんでした。ひたすらSPEEDIの効能を否定したいという気持ちが目立って、事故時にはSPEEDIにタッチしたくないのだとしか理解できません。
 
 避難の基準は、5キロ圏内は即時避難、毎時500マイクロシーベルト以上は即時避難、毎時20マイクロシーベルト以上が1日続いた場合は1週間以内に避難となっていますが、SPEEDIを使わないとしたら、即時避難者がどちらに避難すべきかは、誰が何時どういう根拠で出すというのでしょうか。
 このままでは、そうと知らずに汚染された飯館村に避難してそこにとどまったという、浪江町民の悲劇が繰り返されてしまいます。
 それに災害の中で、いつ来るかも分からない次の指示を自宅に退避してじっと待っていることが可能である、という考え方も浅すぎるように思われます。 
 
   (関係記事)
2015年4月20日 「SPEEDI」は使用せず 規制委が不可解な決定 
2015年8月13日 SPEEDI予測 政府も「不確実」として防災基本計画から外す
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
SPEEDI「信頼性ない」 規制委、避難で活用の弊害指摘
東京新聞 2016年3月16日
 原子力規制委員会は十六日、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を用いた放射性物質の拡散予測について「信頼性はない」との見解で一致、原発事故時の住民避難に活用するのは弊害が多いと結論付ける文書をまとめた。
 
 政府は自治体側からの要望を受け、自治体の裁量でSPEEDIの活用を十一日に容認したが、政府自身は活用しない方針を変えていない。
 規制委がSPEEDIの信頼性にあらためて否定的な見解を示したことで、自治体は難しい判断を迫られそうだ。
 政府の活用容認は、原発再稼働に対する地元同意を円滑に進めたい思惑が背景にあるが、自治体任せの政府対応に批判が強まる可能性もある。
 
 規制委はこの日まとめた文書で、予測に必要な放射性物質の放出タイミングを事前に把握することは不可能と指摘。その上で、予測を住民避難に活用すれば「かえって避難を混乱させ、被ばくの危険性を増大させる」と強調した。
 田中俊一委員長は会合で「拡散予測が出れば人々は冷静さを失い、われ先にと行動を取りがちだ」と述べた。
 東京電力福島第一原発事故では、予測の前提となる放射性物質の放出状況などのデータが確保できず、SPEEDIを活用できなかった。そのため規制委は住民避難について、原子炉から放射性物質が放出された後に、地域で測定される放射線量の実測値で判断する仕組みに見直した。
 
 全国知事会は「放射性物質の拡散が始まった後の避難では遅い」としてSPEEDIの活用を政府に要望していた。