今回の小出裕章ジャーナルは「どうすれば原発を止められるか」がテーマです。
小出氏は、脱原発を実現するためには一人一人が原子力の持っている問題にもっとはっきりと気がついて、それが投票行動に結びつくことが必要で、そのためにはマスメディアの役割が重要なのに、現実はそうなっていないと述べています。
また、立地自治体に出される原発交付金に自治体も人間も慣れてしまって次から次へと新しい原発を造らざるを得ない構造になっていることについては、「ウラン資源は多くないのでいつまでもすがりつくことはできない。国が脱原発に方針を転換して、地域の人たちが生きられるような政策を作らなければいけない」と述べています。
追記 文中の太字箇所は原文の太字強調個所を示します。また原文では小出氏には「さん」がついていましたが、この紹介文では外しました。
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どうすれば原発を止められるか
〜第166回小出裕章ジャーナル 2016年03月12日
「再稼働しないほうがいいという意見の方が未だに多いわけですが、それでも国がやるならしょうがないかなぐらいに、たぶん思ってる方も多いのではないかと思います」
石井彰: 実は、今日は小出さんに「どうすれば原発をやめることができるのか?」というですね、一番難しいテーマでお話をして頂きたいと思ってるんですが、現実に、原子力発電をやめるにはどうしたらいいんでしょうか?
小 出: 教えて下さい(笑)
石 井: すいません、難しい質問で申し訳ないんですが、もちろん今までは、私達はある部分だまされていた、例えば原発がなくても電気は十分足りていたり、電気代を押し上げているのはとんでもない原発のコストだったり、あるいは、原発は特にクリーンはエネルギーでは全然ない。
小 出: そうですね。
石 井: それから、原発の小出さん流に言わせると「廃物」、廃棄物ではなく「廃物」はどこに保管するのか未だに決まってないにも関わらず、つまり私達は原子力発電が本当に大変困ったものだ、とんでもないものだってわかっていながら、これをやめられないのはなぜなんでしょう?
小 出: 石井さんは今、原子力発電の持っている問題をきちっと整理して発言して下さったわけですけれども、たぶん多くの日本人は未だにそのことに気づいていないということだと思います。
福島第一原子力発電所の事故が起きて、今まで思っていたのと少しどうも違うようだというようには、たぶん皆さん感じていると思いますし、例えば世論調査などをすれば、原子力発電所再稼働しないほうがいいという意見の方が未だに多いわけですが、それでも国がやるならしょうがないかなぐらいに、たぶん思ってる方も多いのではないかと思います。
私自身は、原子力などはもうもってのほかで、一刻も早くやめるべきだと思いますし、原子力をやろうとするような政権は、やはり退陣してもらわなければいけないと思うのですけれども、残念ながら選挙をすると自民党が勝ってしまうというような状況がずっと続いてきているわけで、やはり日本の多くの人が原子力の持っている問題に、もっとはっきりと気がつかなければ、この状況を乗り越えることはできないと思います。
石 井: はるほど。まず私一人一人がもっとはっきり気がつくこと。それを的確にそれこそ家族で話せるように、あるいは職場で話せるようになっていかない限りなかなか難しいでしょうねえ。
小 出: と思います。そのために本当だったらば、マスコミも含めてメディアがきちっとした情報を流すべきだと私は思うのですけれども、残念ながら、今のマスコミはなかなかそうは動いてくれない。だからこそ石井さん達がこのラジオフォーラムを始めて下さったわけで、本当にありがたいと私は思ってきました。
石 井: ありがとうございます。それでね、小出さんもう一つ最後に、実はね、最も危険な原発が立地されている自治体からですね、あるいは自治体に住んでらっしゃる方から「再稼働してくれ」というような動きが出てきてしまう。
小 出: そうです。
石 井: もちろん現実に、作業員が泊まってる宿舎で働いている人だとか、あるいは作業員たちがその飲みに行く飲食店の皆さんとか、生活がかかってることは本当によく分かるんですよ。一概に「原発ダメ」って言うと「じゃあ、俺達に死ねって言うのか」っていう議論になってしまう。だけど原発っていうのは一度受け入れると、その原発交付金に人間は慣れてしまって、次から次へと新しい原発を造らざるを得ない構造になっちゃってるじゃないですか?
小 出: そうです。
石 井: 目の前のお金なのか、未来永劫にわたっての安全なのかという二者択一の厳しい議論に入らざるを得ないんじゃないかって思ってるんですけど。
小 出: おっしゃる通りだと思います。私は原子力など本当に一刻も早く全部をやめるべきだと思っていますけれども、でも例えば、自民党の安倍さんなどは経済最優先だと。だから再稼働もするし、原発を輸出もするようなことを言ってるわけですね。
本質的な命の問題よりも、むしろ目先のお金の方が大切という人達が今、この日本の国を動かしているわけですし、そういう国である限り、地域という所で原子力発電所を押しつけられてしまった人達も、またやはり金にすがるしかないという、そんなことになってしまっているのだと思います。
ただし、原子力発電というのは、どっちにしても機械ですから発電所も止まってしまうわけですし、原子力の燃料であるウラン資源も多くありませんので、どっちにしてもいつまでもすがりつくことはできないものなのです。
ですからいつかの時点で、やはり自分達が自立して立てるような村・町・社会をつくっていかなければいけないわけで、早くやはりそのことに気がついて、きちっと生きる道をつくり出すということをやらなければいけないし、もちろんそのためには国そのものが方針を転換して、地域の人たちの生きられるような政策というものを作らなければいけないと思いますし、地域の人たち自身もやはり自分で立つということを覚悟するというか、そういうふうな考えに行ってほしいと私は願います。
石 井: そうですね。もちろん原発が立地されている自治体のみんなが賛成しているわけではなくて、いろいろ難しい中でも声をあげている少数の人達に何人も出会ってきて、彼らの声にぜひ地域の皆さん耳を傾けてほしいなあと切実に願うんですよねえ。
小 出: はい、そう思います。
石 井: 小出さん、どうもありがとうございました。
小 出: はい、ありがとうございました。