2016年3月15日火曜日

15- 政府ワーキンググループ 核の地層処分の有望地があると

 政府は、昨年12月に経産省の有識者ワーキンググループがまとめた結果に基づいて、2016年中にも原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場として適性のある地域「科学的有望地」を提示するということです。火山や活断層が少ない高知県を含む四国南部の沿岸部のほとんどが有望地に含まれる可能性があります
 
 最終処分場(=地層処分)は、放射性廃棄物をガラスと混ぜて固め、厚い金属製容器や粘土の緩衝材で覆い、地下300メートルより深い地層に埋める放射線量が安全なレベルになるには、数万年かかる)ものですが、これまでは日本学術会議が2年がかりで検討した結果、地震や火山活動が活発な日本列島で、万年単位で安定した地層を見つけるのは難しい東京新聞 2012年9月11日)とされていました。
 同会議は、2014年7月にも、国に自然災害のリスクなどを考慮すると、数百年を超える保管施設の安全確保は困難する報告書を提出しています。(東京新聞 2014年7月10日
 
 それがここにきて適性のある地域が見つかったというのは唐突の感を否めません。背景に安倍政権の何としても国内に適地を見つけるとする、強い意志が作用した可能性があります。
 一つの提案なのでしょうが、保存期間が10万年にも及ぶ「地層」をそんなに拙速に定めるのは間違いで、簡単な判断基準で定めるのではなく慎重に選定する必要があります。
 そもそも後世に重大な影響を与える措置を、ある政府が選定したごく一部の有識者で決めて良い筈はありません。
 やはり日本学術会議のような独立した機関の判断に依存するのが正しい態度であると思われます。
 
      (関係記事)
2014年7月12日 どうする核のごみ
2014年1月6日 核のごみの処分地選定急展開か 
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高知など四国南部が核ごみ最終処分「有望地」か 年内にも政府提示  
高知新聞 2016年03月14日  
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場候補地の選定をめぐり、政府は2016年中にも適性のある地域「科学的有望地」を提示する。2015年12月に経済産業省の有識者ワーキンググループ(WG)がまとめた「自然科学的観点」の要件を見ると、火山や活断層が少ない高知県を含む四国南部の沿岸部のほとんどが有望地に含まれる可能性がある。国の押し付けを懸念する自治体の警戒感が根強い中、提示の仕方やその後の選定作業が注目される。 
 政府が計画する「地層処分」は、放射性廃棄物をガラスと混ぜて固め、厚い金属製容器や粘土の緩衝材で覆い、地下300メートルより深い地層に埋める。放射線量が安全なレベルになるには、数万年かかるとされる。 
 
 原子力や地質学者らで組織するWGは、地質環境の長期安定性、施設建設や廃棄物輸送時の安全性などを検討。最適地を絞り込むのではなく、問題のある範囲を除外する形で要件を整理した。 
 有望地に適さない基準は、火山から半径15キロ以内▽活断層沿いは断層の長さの100分の1程度の幅に入る範囲▽10万年間で隆起速度90メートル以上▽地中の温度が高い―など。これらに該当しなければ「適地」として扱い、海上輸送に有利な海岸から20キロ以内を「より適性の高い地域」に分類する。 
 
 経産省などが2015年全国で開いたシンポジウムで説明した火山や活断層の位置=地図参照=のほか、日本地質学会がまとめた資料などでも、四国南部は火山や活断層がほとんどない。さらに日本地質学会の資料では、四国南部は地温も低く、室戸半島の一部を除いて基準を下回る隆起速度のため、沿岸部のほとんどが適地に含まれる可能性がある。 
 政府は今後、土地利用の制約や地権者数などWGが検討する「社会科学的観点」を踏まえ、適性の高さごとに日本地図を塗り分けて有望地を示す方針。 
 
 ただ、WG委員の吉田英一・名古屋大学博物館教授は「社会科学的観点のマッピング(地図での提示)は難しいのではないか」との見方を示している。その上で地域名の明言は避けつつ、「有望地は、処分の議論をする前に地質の状況をまず知ってもらうことが目的。提示後は(受け入れを)押し付けるのではなく、国やNUMO(原子力発電環境整備機構)が信頼を得るようなコミュニケーションができるかが重要だ」と述べた。 
 
 処分地選びは自治体の公募に頼っていたが、2007年に安芸郡東洋町が文献調査に名乗り出た後に取り下げて以降、具体的な選定は進んでいない。政府は2015年、基本方針を改定し、国の主導で有望地を提示して自治体に調査協力を申し入れる方式に変えた。 
 
経産省WG委員 吉田英一・名古屋大教授に聞く 
自治体向け説明会 非公開は反対、提示後「透明・信頼性が必要」 
 
 核のごみの最終処分地の「科学的有望地」の考え方を、経済産業省のワーキンググループ(WG)の委員を務める名古屋大学博物館の吉田英一教授に聞いた。 
 
―科学的有望地の意義は。 
 「処分の議論の前に、今の段階で把握しているデータや情報の範囲で地質の状況を知ってもらうのが趣旨だ。既にある高レベル放射性廃棄物は、本意かどうかは別として私たちが出したごみ。どう対応していくかを示すことは一つの責任の取り方であり、そのきっかけが有望地の提示だ」 
 
―社会科学的観点はどう盛り込むのか。  
 「今後WGで検討するが、マッピング(地図での提示)できるようなものじゃない。例えば人口密度が少ない方が良い、というようなことは判断できないのではないか」 
 
―自然科学的観点の要件を見ると、四国南部は有望地に含まれる可能性がある。 
 「要件を地図で重ねて見てもらって、今の状況で回避すべきことがあるのか事実の通り考えてもらえればいい。ただ、どういうふうに提示するか検討中で、まだ地域や地方を名指しするレベルにはなっていない」 
 
―2015年の共同通信のアンケートで、高知県を含む13府県が処分場を「一切受け入れる考えがない」と回答した。 
 「科学的マッピングの趣旨を知らずに判断するのはやめてほしい。最終的には反対でも構わないが、全部分かった上でコミュニケーションをしないと、『廃棄物が向こうに行って良かった』となりかねない。(受け入れ地域へ)感謝の意を示す気持ちの部分まで考えないといけない」 
 
―国からの押し付けに対する警戒感が強い中、提示後の展開は。 
 「精神的な部分が重要になる。『賛成しろ』ではなく、現状を了解してもらった上で次に何をしたらいいのか伝えていかないと、この問題は一般の人に広がっていかない。透明性と信頼性が必要で、2015年の自治体向け説明会を非公開にしたことには反対だ。国やNUMO、各電力会社が今までと違ったコミュニケーションをできるかが問われる」 
 
 吉田英一氏(よしだ・ひでかず)1962年宮崎県生まれ。名古屋大学博物館・大学院環境学研究科教授。環境地質学専攻。経済産業省の放射性廃棄物ワーキンググループ(WG)と地層処分技術WGの委員。