2016年7月25日月曜日

25- 原発の耐震想定でも規制委は信頼を損なった

 島崎邦彦東大名誉教授(前規制委委員長代理)が、熊本地震に対して「入倉・三宅式」を適用して得られれる地震動と実際の地震動の差異の大きさ(「入倉・三宅式」が過小値を与える)から、同式を用いて基準地震動を定めた大飯原発の基準地震動について、規制委に再検討するように求めた件で規制委は右往左往しました。
       (関係記事 下記他)
7月21日 大飯原発の基準地震動 再議論へ 規制委
7月20日 大飯原発基準地震動 「再々計算しない」と規制委
 24日の毎日新聞が社説でそれを取り上げました。
 社説は、島崎氏の指摘が正しければ大飯原発は耐震性の一層の強化などが迫られるとして、19日に島崎氏が規制委に再々計算を申し入れた際の規制委側の対応を見て、規制委の能力に疑問府が付くと指摘しました。 
 そして島崎氏地震動の専門家の意見を広く聞き、良いものは審査に取り入れていくべきだと提言したのに対して、田中委員長「そういう余裕はないし、やるべき立場にもない」と応えたことに首をひねらざるを得ないとし規制委は、原発の安全確保の「最後のとりで」としての機能を果たしていないと述べました。重大な指摘です。
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社説 原発の耐震想定 規制委は信頼損なった
毎日新聞 2016年7月24日
 原子力安全の番人たるべき原子力規制委員会の信頼性が、大きく損なわれる事態となっている。 
 関西電力大飯原発(福井県)で想定する地震の最大の揺れ(基準地震動)が過小評価されていると、規制委の島崎邦彦・前委員長代理が指摘している問題を巡ってのことだ。 
 島崎氏は日本地震学会長などを歴任した地震学の権威だ。規制委に在職中は、大飯原発を含め電力会社が策定した原発の地震想定の審査を担当していた。 
 2年前に退任した後、データを調べ直し、震源として想定する活断層の種類によっては、基準地震動を算出する計算式が不適切なため、過小評価を生むことがあるとの研究結果を得たという。島崎氏の指摘が正しければ、大飯原発は耐震性の一層の強化などが迫られる。 
 
 規制委は関電の想定をおおむね了承していたが、島崎氏の指摘を受けて、関電とは別の計算式を用い、揺れを再計算した。その値は関電の想定を下回り、過小評価にはなっていないとして、13日の定例会で基準地震動は見直さないことを決めた。 
 これに対し、島崎氏は、再計算結果を巡り、基準地震動を大幅に上回るはずだと反論した。通常の審査では、安全性に余裕を持たせるため、計算で導いた値の一部を1・5倍にして評価するが、再計算ではそうしていなかったからだ。 
 再計算をしたのは規制委の事務局の原子力規制庁だ。島崎氏と面談した規制庁の担当者は、再計算は「無理を重ねた形で計算し、精度がない。どの程度余裕を加えるべきか分からない」と釈明した。 
 しかし、この対応は「想定は過小評価だ」との批判を避けるためだったと言われても仕方があるまい。規制庁が上げてきた「過小評価ではない」との報告を、うのみにした規制委の能力にも疑問府が付く。 
 
 5人いる規制委の委員に地震動の専門家はいない。田中俊一委員長は大飯原発の基準地震動は見直さない考えを示しているが、耐震審査が適切に行われているのか心配になる。 
 島崎氏は規制委に対し、地震動の専門家の意見を広く聞き、良いものは審査に取り入れていくべきだと提言している。島崎氏の研究結果に対する専門家の評価が分かれたとしても、提言自体は妥当だろう。 
 ところが、田中委員長は「そういう余裕はないし、やるべき立場にもない」と応えた。こうした姿勢には首をひねらざるを得ない。 
 規制委は、原発の安全確保の「最後のとりで」として、常に安全性の向上に取り組む責務がある。耐震想定の手法についても、自ら改善を図ることが求められている。