河北新報が、来年3月末に避難指示解除予定の飯舘村で、帰還を志す人が自力で居久根(屋敷林)の除染に取り組んでいる様子を報じました。
昨年7月に行われた家屋除染の検証測定では、玄関側はほぼ毎時1マイクロシーベルト未満に下がったものの、居久根がある裏側では同3~4マイクロシーベルトという値でした。
正常値は0.05マイクロシーベルトなので、その実に20倍~80倍の高さということになり、とても居住できるレベルではありません。
現在行われている「除染実験」は、家から半径40メートルの居久根の枝落としと、根元の腐葉土化した土を10センチずつ剥ぎ取るというものです。その結果当面の放射能レベルがどこまで下がるのか、それが時間の経過とともにどう推移するのかなどは全て未知数です。
それに除染が、家から半径40メートルの範囲内の林に限定されるというのも不可解なことです。
除染がロクに進んでいない中で避難指示解除の予定だけを決めるというのは余りにも無責任な話です。
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除染の苦闘置き去り「避難解除は無責任」
河北新報 2016年7月6日
東京電力福島第1原発事故後の避難指示解除が来年3月末に迫る福島県飯舘村で、帰還を志す農業菅野啓一さん(61)が自力で居久根の除染に取り組んでいる。居久根の放射線量は依然高く、「生活再建を妨げる環境を住民の手で取り除くしかない」と重機を操る。無人の被災地の苦闘を、参院選(10日投開票)の候補者が目にすることはない。
放射性廃棄物を詰めた黒いフレコンバッグの山が、集落中央の水田に広がっていく。同村比曽地区で環境省が造成中の約30ヘクタールの仮々置き場の光景。同省が計画する中間貯蔵施設(福島県双葉町、大熊町)の着工が遅れたまま、避難指示解除後も居座る見込みだ。
87世帯が避難中の集落で6月下旬、農地除染とは違う重機の音が響いた。菅野さんが自宅裏の居久根でクレーン車を運転。先端のシャベルを高さ約20メートルの杉木立に伸ばし、葉を茂らせた長い枝を次々に落とした。
「放射性物質を付けた葉や土を除去しないと、居久根に囲まれた家の中も外も放射線量が下がらない。帰還しても、農家は安心して暮らせない」
除染は、村の生活環境回復を支援するNPO法人・ふくしま再生の会(田尾陽一理事長)と共同の実験。帰還困難区域の長泥地区に隣接する比曽は村内でも放射線量が高い。集落の家々で汚染土の剥ぎ取りが行われたが、居久根は林床の落ち葉などの除去だけだ。
昨年7月、比曽行政区が行った家屋除染の検証測定では、玄関側がほぼ毎時1マイクロシーベルト未満に下がったが、居久根がある裏側で同3~4マイクロシーベルトという値が相次いだ。
同省は本年度、放射線量が減らない場所の追加除染を始めた。「うちでは母屋の周囲の土を削っていった。『やってほしいのは居久根なんだ』と担当者に言ったが、作業の対象外と説明された」
除染実験は今月中に家から半径40メートルの居久根で枝落としのほか、落ち葉が腐葉土化した土も10センチずつ剥ぎ取る。地下に浸透しない粘土層まで穴を掘って埋め、線量の変化を確かめる。
第3種放射線取扱主任者の資格を自ら取った菅野さんは言う。「汚染土の袋も置き去りの避難指示解除は無責任。参院選の候補者は被災地に来て、現状を見てから復興を訴えてほしい」