政府がまとめた「2016年夏季の電力需給対策」によれば、9電力会社合計の8月の最大電力需要に対して、供給量は9・1%増しで十分な余裕があるので、東日本大震災が起きてから初めて政府が「節電要請」をしない夏となりました。ふつう予備率が3%を超えていれば大丈夫とされています。
事故が起きれば取り返しがつかない原発を再稼働させる必要などはありません。
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主張 「節電要請」ない夏 原発再稼働せず「ゼロ」目指せ
しんぶん赤旗 2016年7月25日(月)
各地の梅雨明けとともに、いよいよ夏本番を迎えています。気温が急上昇する夏場は冷房や送風のため電力消費も急増する時期ですが、今年の夏は2011年に東日本大震災が起きてから初めて、政府が「節電要請」をしていない夏です。大震災による東京電力福島原発の事故後、全国のほとんどの原発は停止しているなか、節電の普及や再生可能エネルギーの利用拡大で、電力不足が起きなくなっているからです。原発を再稼働しなくても電力が足りている事実は重要です。原発の再稼働は強行せず、原発は停止したまま廃止し、「原発ゼロ」へ進むべきです。
電力はまかなえている
政府が夏を迎えるにあたってまとめた「2016年夏季の電力需給対策」によれば、原発がない沖縄電力を除いた9電力会社の8月の最大電力需要は1億5550万キロワットの見込みで、9電力合計の供給力1億6967万キロワットを1417万キロワット下回ります。ふつう3%を超えていれば大丈夫とされる予備率は9・1%と、電力不足は起きない計算です。電力会社ごとで見ても予備率が低いのは中部電力で6・7%、四国電力で5・8%など、問題のない水準です。
電力需要は猛暑となる可能性や経済成長などを織り込んで計算しますが、大震災前の2010年に比べ2437万キロワット減っています。福島原発事故後の「計画停電」などを体験した、節電の定着が大きいとみられています。
一方、供給力は、全国ほとんどの原発が停止しているため、稼働している原発は九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)だけです。四国電力伊方原発3号機(愛媛県)は7月中に再稼働させ、夏場の電力需要に間に合わせるとしていましたが、最近も1次冷却水循環ポンプなどのトラブルが相次ぎ、大幅に遅れる見通しです。再稼働しなくても四国電力の予備率は5・8%なので不足は起きません。
安倍晋三政権や電力業界は、原子力規制委員会の審査に合格した原発は再稼働させると、川内原発や伊方原発に加え、関西電力高浜原発(福井県)などでも再稼働の準備を進めています。しかし、この夏の電力需給の見通しは原発がほとんど停止していても電力がまかなえることを示しており、政府の「節電要請」もなしで済ませられることが示すように、原発再稼働を急ぐ口実は破綻しています。
もちろん、電力不足を引き起こさないためだけでなく、温室効果ガスを増大させる石炭など火力発電所の削減のためにも節電や再生可能エネルギーの利用拡大は重要です。原発に依存せず、「原発ゼロ」に進むことを明確にしてこそ、そのための対策が進むことになるのは明白です。
運転続けることが危険
重大なのは、原発を再稼働させ、運転を続けることの危険性がいよいよ明らかになっていることです。もともと技術的に未完成で事故が起きればコントロールできなくなる原発を、世界有数の地震列島に建設する危険性は福島原発事故などでも明らかになりましたが、今年になってからの九州地方の連続地震は川内原発や伊方原発などの危険性を浮き彫りにしました。事故が起きてからでは取り返しがつきません。再稼働の企てをやめるとともに運転中の川内原発は直ちに運転を中止すべきです。