2016年7月17日日曜日

「原発神話」見直す時期に 新潟日報社説

 16日、(新潟県)中越沖地震から9年を迎えるにあたり新潟日報が「『原発神話』見直す時期に」とする社説を掲げました。
 その中で、福島事故で原発の「安全神話」は崩壊したものの「経済神話」はなお残っているとして、同社が昨年地元100社を対象に行った調査の概要を示しました。
 
 それによると原発停止による売り上げ減少について67社が「ない」と回答し、残る33社のうち減少幅が1割以上だったのは7社にとどまっています。
 原発が地域経済に貢献してきたのかについても、同社が柏崎市に関する各種統計データを分析したところ、サービス業、製造業、卸売・小売業への波及効果はほとんど見られずに、建設業への効果も原発建設期だけにほぼ限られていました
 
 社説は、原発が地域経済に貢献するという根拠の乏しい「神話」にしがみつくことが正しいのかどうか、考え直す時期に来ているとしています
 
 現実に出来あがっている原発を動かさないことは電力会社にとっては確かに損失になりますが、企業の利益のために『大事故を起こす』危険を冒すことは許されません。自社がより利益を出すために、様々な言いつくろいをして誤魔化すことも許されません。
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中越沖地震9年 「原発神話」見直す時期に
新潟日報 2016年7月16日
 柏崎市などを震度6強の揺れが襲い、関連死を含め15人が犠牲になった中越沖地震から16日で9年となった。
 今年は4月に熊本地震が発生した。中越地震、中越沖地震を経験した本県から多くの支援、助言が九州の被災地に届けられた。
 「地震列島」に住む者として、教訓を伝え続けることの大切さを再認識した中で迎えた9年だ。
 柏崎市には昨年11月、中越沖地震のメモリアル施設を併設した「市民活動センターまちから」が完成した。
 地震発生時の状況を、被災者の証言を交えた映像で伝えるコーナーや、復興の歩みを紹介するパネルなどがある。語り部の活動も行われている。風化を防ぐ取り組みに、最大限活用してほしい。
 
 中越沖地震を考える上で、切っても切り離せないのは東京電力柏崎刈羽原発だ。
 強い揺れに見舞われ全7基が停止状態となった柏崎刈羽原発は、2011年の福島第1原発事故を受けて、再びすべて停止した。
 現在、6、7号機が原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査を受けているが、運転再開の見通しは立っていない。
 さらに、東電は不祥事が相次いだ。柏崎刈羽原発のケーブルが不適切に敷設され、火災対策に不備があったことが判明した。福島事故時に「炉心溶融」を隠蔽(いんぺい)した上、その後も虚偽の説明を繰り返していた。
 大事故を起こせば取り返しがつかないのが原発だ。「運転する資格はあるのか」との思いを強くした人が多いのではないか。
 
 福島事故で「安全神話」が崩壊した原発だが、「経済神話」はなお残る。地元では経済界を中心に再稼働を望む声が根強い。
 「立地地域の経済を活性化させるためには、再稼働が必要」という声はよく聞くが、本当にそうなのだろうか。
 新潟日報社が昨年、地元100社を対象にした調査では、原発停止による売り上げ減少について67社が「ない」と回答した。実に3分の2の社は停止の影響がなかったことになる。
 33社は「ある」と答えたとはいえ、減少幅が1割以上だったのは7社にとどまった。
 
 さらに原発がこれまで地域経済に貢献してきたのかも疑問だ。
 柏崎市に関する各種統計データを新潟日報社などが分析したところ、サービス業、製造業、卸売・小売業への波及効果はほとんど見られなかった建設業への効果も原発建設期だけにほぼ限られていたことが分かった。
 原発が地域経済に貢献するという根拠の乏しい「神話」にしがみつくことが正しいのかどうか、考え直す時期に来ているといえるのではないだろうか。
 
 11月には任期満了に伴う柏崎市長選と刈羽村長選が行われる。
 柏崎市の会田洋市長は4選不出馬を表明した。いまのところ両首長選とも立候補の表明はないが、再稼働是非の判断は、次期首長が担う可能性が高い。市民の選択が問われる年になる。