2019年1月10日木曜日

被ばく量を過小評価 早野・名誉教授が論文修正へ(詳報)

 福島県伊達市の住民の被ばく量を推定する論文で、肝心の被曝量が実際の3分の1ほどに報告されていた問題について、NHKが多少詳しく報道していますので紹介します。
 原因は計算プログラムのミスということで、そう言われればそれまでですが、それ程複雑なプログラムではあり得ないので、極めてお粗末なミスであることに違いはありません。
 
 これについて原子力規制委の更田委員長は9日、「研究成果の信頼性を揺るがしてしまうのは大変遺憾なことだ」と述べました。
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原発事故の被ばく量を過小評価 東大名誉教授らが論文修正へ
NHK NEWS WEB 2019年1月8日
東京電力福島第一原発の事故による住民の被ばく量について、東京大学の名誉教授らが3分の1程度に過小評価する論文を発表していたとして、学術誌に修正を申し入れたことがわかりました。名誉教授は「計算プログラムのミスによるもので意図的な誤りではない」としています。
 
東京大学の早野龍五名誉教授らはおととし、イギリスの放射線防護学会が発行する学術誌に、原発事故による福島県伊達市の住民の被ばく量を推定する論文を発表しました。
その中では、平均的な一生涯の被ばく量を18ミリシーベルト以下としていましたが、別の研究者から疑義が寄せられたため、調べたところ、計算プログラムのミスが見つかり、実際はその3倍程度の50から60ミリシーベルトだったということです。
このため、早野名誉教授らは去年11月、学術誌に論文の修正を申し入れ、手続きを進めているということです。
 
また、この論文をめぐっては、およそ5万9000人分のデータのうち、およそ半数が住民の同意を得ないまま使われていたということで、住民が東京大学に研究倫理違反の申し立てを行っています。
 
早野名誉教授は「重大な誤りだが、計算プログラムの書き間違えによるもので意図的ではない。被ばく量が3倍になっても1年の平均では1ミリシーベルトを超えないレベルに収まると考えている。住民の同意を得ていないデータが含まれていることは知らなかったが、データを使ったことは事実で申し訳なく思う」と話しています。
 
 
被ばく論文「遺憾」と規制委員長 「信頼性を揺るがす」
共同通信 2019年1月9日
 東京電力福島第1原発事故後、福島県伊達市の住民の個人被ばく線量を分析した論文で、被ばく線量を過小評価する誤りや、研究への利用に同意していない人のデータが含まれていた問題を巡り、原子力規制委員会の更田豊志委員長は9日の記者会見で「研究成果の信頼性を揺るがしてしまうのは大変遺憾なことだ」と述べた
 
 国の放射線審議会は昨年の会合で、事故後に策定された放射線基準を検証する資料として論文を使用しており、事務局の原子力規制庁は今後の扱いを検討している。ただ、更田氏は「(論文の問題が)規制委員会の活動や判断に直接影響を及ぼすものではない」とも語った