原電の村松衛社長が2017年3月、首長に、自治体の合意がなければ再稼働できないとする発言をしていたことが文書で明らかになったことで、昨年11月7日、最長20年の東海第二原発の運転延長が認可された際に、原電の和智信隆副社長が「協定に拒否権という言葉はない」と発言したのは、締結後、原電が自社に都合よく解釈を変えたものであると、新潟日報が社説で厳しく指摘しました。
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【社説】 日本原電 「事前同意」発言は方便か
新潟日報 2019年1月13日
再稼働を目指すなら、地元住民の理解が不可欠である。信頼関係をないがしろにするような日本原子力発電の対応は看過できない。
原電の東海第2原発(茨城県東海村)再稼働に関する周辺6市村の事前同意権を巡り、村松衛社長が2017年3月、首長に、自治体の合意がなければ再稼働できないとする発言をしていたことが明らかになった。
6市村のうち那珂市が情報公開請求に対し開示した公文書で判明した。
村松氏は各首長との会合で「自治体の合意が得られるまでは再稼働できないという覚悟を持っている」と述べていた。
原電と6市村は昨年3月、「事前協議により実質的に事前了解を得る仕組みとする」との協定を締結した。
立地自治体以外が同意判断に加わる協定を結んだのは、これが全国で初めてであり、唯一のことだ。
だが、原電はその後「それぞれが納得するまでとことん協議する」と述べるにとどまり、事前同意権の有無について明確にしていない。
今回の文書は、協議時には原電トップが事前同意権を認めていたように受け取れる。締結後、原電が自社に都合よく解釈を変えたのではないかとの疑念が強まったといえる。
文書によると、原電が示した協定案を巡る協議で自治体側が「実質的な事前了解という解釈でいいか」とただし、村松氏は「その通りです」と答えた。
東海第2原発を巡っては、原子力規制委員会が昨年11月7日、最長20年の運転延長を認可した。運転期限の40年を迎えるのを前に、駆け込みで廃炉を免れた格好だ。
その認可当日、原電の和智信隆副社長が「協定に拒否権という言葉はない」と発言し、事前同意を否定する考えを示した。6市村は強く反発し、和智氏は謝罪と発言撤回に追い込まれる事態となった。
東海第2を巡る協定の背景には、原発30キロ圏に全国最多の96万人が暮らすことがある。圏内に県庁所在地の水戸市もある。
立地する東海村の当時の村長が再稼働は周辺自治体の判断も必要として旗を振った。
東京電力福島第1原発事故の被害状況を見ても対象自治体の拡大は理解できる。
原発専業会社である原電側には、東海第2の再稼働が社の生命線である事情があったとみられている。
ならば、なおさら、締結後に幹部が否定したり、玉虫色の解釈を主張したりする姿勢は不誠実というほかない。
那珂市の海野徹市長は「当初と変わっており、謙虚さに欠ける」と批判した。市長は再稼働反対を表明しているが、原発への賛否にかかわらずうなずける発言だろう。
「事前同意」の対象拡大が再稼働のための方便だったとしたら到底許されることでない。
原電は真摯(しんし)に地元と向き合わねばならない。