ダイヤモンドオンラインが題記の記事を出しました。
原発の延長運転では、安全対策に多額の投資をしても採算が合わないことで廃炉に傾区ことが多く、いまや「エネルギー基本計画」は現実から全く遊離した絵空事になっています。そもそも立案の当初からそういう側面がありましたが、なぜか昨年もそのままの内容で閣議決定されました。
本来なら「エネルギー基本計画」の見直しが必要なのですが、今年は選挙の年、国民に不人気な原発政策はとても取り上げられないということです。政府もひたすら議論から逃げ続けたい、というのが原発問題の実態です。
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「廃炉ラッシュ」で原発計画頓挫でも議論から逃げ続ける安倍政権
堀内 亮 ダイヤモンドオンライン 2019年1月29日
週刊ダイヤモンド編集部
政府が新たなエネルギー基本計画(以下、エネ基)を昨年に閣議決定して以降、電力各社で廃炉検討のラッシュが起きている。東京電力ホールディングスは福島第二原子力発電所の1~4号機全てを廃炉にする検討に入り、東北電力は女川原発1号機の廃炉を決めた。
これに続き、九州電力が玄海原発2号機(佐賀県玄海町)の廃炉に向けた検討に入った。同2号機は営業運転開始から37年が経過。原則40年と規定される運転期間の期限が迫っている。20年間の運転延長を原子力規制委員会に申請するかどうかが注目されていた。
関係者によれば、原子力規制委の新規制基準に適合させるため、安全対策に多額の投資をしても、採算が合わないことが廃炉に傾いた要因だ。各社の廃炉への動きはエネ基に大きな影響を及ぼす。
エネ基は2030年度の電源構成(総発電量に占める各電源の割合)の原発比率を20~22%としている。これは15年に策定したもので、昨年のエネ基の見直し議論では“現状維持”と決まった。原子力規制委の安全審査や立地自治体の同意プロセスが長引いて順当に再稼働が進まず、計画の頓挫が明白になったにもかかわらず、だ。
11年に発生した東日本大震災後に再稼働までこぎ着けた原発は、現時点で9基にとどまる。計画目標を達成するには、30基程度の再稼働が必要とされ、それはもはや絶望的な状況といえる。
エネ基を議論する政府の有識者会合のメンバーで、当初から計画の見直しを主張していた橘川武郎・東京理科大学大学院教授は「規制委の安全審査をクリアしても、地元の反対で再稼働できない可能性がある原発もある。エネ基がいよいよ絵空事ということが明らかになった」と指摘する。
「原発はアンタッチャブル」
それでも現安倍政権はエネ基を見直す気はないようだ。目下のところ、現政権の悲願は憲法改正。政権支持率を下げる不人気な政策の筆頭格である原発政策を真正面から取り上げるはずもない。しかも、今年は統一地方選や参院選が控える“選挙イヤー”。ある自由民主党関係者は「原発はアンタッチャブル」と明かす。
しかし、それほど悠長に構えていられないはずだ。安倍政権がインフラ輸出の目玉とした英国やトルコでの原発事業は頓挫した。
世界のエネルギー政策は急激に変化している。再生可能エネルギーの伸びが著しく、国内では原発と同じベースロード電源(一定量の電力を安定的に供給できる電源)に位置付けられていた石炭火力発電が低炭素社会を阻む悪者として退場を迫られている。
選挙イヤーはエネルギー政策の在り方を真正面から捉える好機であるはず。原発の議論から逃げ続けるならば、安倍政権はエネルギー政策に汚点を残すことになるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)