2019年1月16日水曜日

【原発の廃止費用】国民負担の総額を示せ(高知新聞)

 原発の廃炉費用について様々に積算されていますが、これまで出された数値は、除染を含む施設の「解体費」、放射性廃棄物をドラム缶に詰めるなどの準備作業に必要な「処理費」、実際に処分場に埋設する「処分費」にとどまっていて、原発の廃止には30~40年がかかると言いながら、その間に必要な維持管理費や老朽化対策費などが含まれていません。使用済み核燃料の最終処分費もそうです。
 
 廃止費用を実質的に負担するのは私たち国民で、電力会社は廃止費用を電気料金に上乗せしています。
 国民負担する以上、政府や電力会社は費用の総額をきちんと示すべきで、拙速にいい加減な試算をして国民を欺くべきではありません
 高知新聞も社説を紹介します。
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【原発の廃止費用】国民負担の総額を示せ
高知新聞 2019年1月15日
 国内にある原発や核燃料サイクル工場など商業用原子力関連の73施設を廃止するには、少なく見積もっても計12兆8千億円の費用がかかることが分かった。
 電力会社などが法に基づき公表した試算を共同通信が集計した。巨額の費用だが、試算には疑問が多い。明らかになったのは「氷山の一角」との声も出ている。
 
 廃止費用を実質的に負担するのは私たち国民だ。電力会社は廃止費用を電気料金に上乗せして集め、積み立てている。
 政府や電力会社は費用の総額をきちんと示すべきだ。国民に負担を求めるなら、いいかげんな試算やまやかしのような数字は許されない
 
 改正原子炉等規制法により、事業者は先月末までに「廃止措置方針」の公表が義務付けられていた。電力11社を含む計19社が廃止の見積額を明らかにした。
 共同通信によると、公表された69施設の廃止費用は計4兆8千億円だった。これには事故を起こした東京電力福島第1原発1~4号機の費用が含まれておらず、政府試算の8兆円を加算した。
 だが、公表された見積額に盛り込まれている費目は、除染を含む施設の「解体費」、放射性廃棄物をドラム缶に詰めるなどの準備作業に必要な「処理費」、実際に処分場に埋設する「処分費」にとどまっている。
 
 これで済むはずがない。例えば、原発の廃止には30~40年がかかると言いながら、その間に必要な維持管理費や老朽化対策費などが含まれていない
 そもそも日本では商業用原発で廃止が完了した例はなく、実績はゼロだ。試算の信頼度を上げるには相応の丁寧な算出が必要になる。
 問題は他にもある。福島第1原発の廃炉では、溶け落ちた核燃料物質の回収技術さえ確立されていない。作業に時間がかかればかかるほど費用も膨らむだろう。
 放射性廃棄物の処分も厳しい。高レベル廃棄物は最終処分場の候補地すら決まっていない。
 
 今回の推計では低レベル廃棄物も約52万トンの発生が予想されている。福島第1原発から出る分も含めればさらに膨大な量になるが、全てを処理できるめどは立っていない。
 政府は「発電コストが安価だ」として原子力を推進してきた。原発が半世紀以上にわたって電力需要を支えてきたのは確かだが、福島第1原発事故で多くの国民が原発のリスクの大きさを再認識した。
 高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉決定などでも、原発の後始末には長い年月と莫大(ばくだい)な費用がかかることに気付いた。政府や電力会社が打ち出す「数値」は信頼を失っていると言ってよい。
 
 日本の原子力政策は後始末の問題を置き去りにしてきた。そのつけはあまりに重いが、逃れることはできない。国民的論議の俎上(そじょう)に載せるためにも、政府や電力会社は真摯(しんし)に試算や説明をすべきだ。