2019年1月31日木曜日

再処理工場 稼働させる意味はない(信濃毎日新聞 社説)

 信濃毎日新聞が、社説「再処理工場 稼働させる意味はない」で、「利用する見通しがつかないものを大量に作り出す意味がどこにあるのか」と述べました実に明快です。
 
 六ケ所村に建設中の再処理工場使用済み核燃料から燃料に再利用するプルトニウムなどを取り出すのが目的ですが、日本は既に外国などに委託して分を含めて約47トンという膨大な量のプルトニウムを保有しています。それらをどうするのか海外から問われていますが、具体的には何の方策もないというのが実情です。
 
 プルトニウムは使用済み核燃料に1%含まれているので、もしも原発がフル稼働すれば年間800トンの廃核燃料から8トンが生成されることになります。利用する見通しがつかないものを大量に作り出す意味どこにもありません
 
 プルサーマルを普及させるというのが政府の意向ですが、物質収支上の意味は小さく、経済的なメリットいので電力会社は消極的です何よりもMOX燃料を作るためには新しい工場が必要になります。
 六ヶ所村の再処理工場の総事業費は139300億円といわれますが、その計画は当初7600億円と喧伝されてスタートしました。それが国民に全貌を秘したままで延々と建設が続けられ、ついにはそんな額に達しものでその責任は挙げて政府にあります。
 経済的に何のメリットもない再処理からは直ちに撤退すべきです。
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社説 再処理工場 稼働させる意味はない
信濃毎日新聞 2019年1月30日
 利用する見通しがつかないものを大量に作り出す意味がどこにあるのか。
 日本原燃が青森県六ケ所村に建設中の再処理工場である。原発の使用済み核燃料を化学処理(再処理)して、燃料に再利用するプルトニウムなどを取り出す
 
 原子力規制委員会の審査会合で合格確実の見通しになった。規制委が最終的に了承すれば、意見公募などを経て正式合格となる。
 施設は、使用済み核燃料を再処理する「核燃料サイクル」の中核である。国は燃料を一度使って処分するより、資源を有効活用できるなどと主張している。
 国内の使用済み核燃料は全て再処理することが前提だ。国策といえるだろう。しかし、この政策は事実上、破綻している
 
 すでに外国などに委託して再処理して取り出したプルトニウムを約47トン保有している。核爆弾約6千発分に相当する。それなのに使い道がほとんどない。
 ウランと混ぜてつくる混合酸化物(MOX)燃料を使用するはずだった高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)は廃炉が決まっている。通常の原発でMOX燃料を燃やすプルサーマルは、原発の再稼働が進まず停滞している。経済的なメリットも少ない。電力会社は消極的とされる
 しかもプルサーマルの使用済みMOX燃料を再処理するには、新たな処理施設が必要だ。核燃サイクル政策は袋小路に陥っている
 
 原燃は2021年度上半期の完成を目指すという。総事業費は13兆9300億円に上っている。膨大な経費である。
 だからといって、これ以上、プルトニウムの量を増やす理由は説得力を持って説明できない。稼働すれば、プルトニウムがさらに最大年8トン増えていく。安全保障上の懸念も高まる。諸外国には核兵器の所有を画策しているという疑いを持たれかねない。
 
 再処理工場は1993年の着工だ。トラブルなどで、これまでに完成が20年以上遅れている。技術的な安全性が担保されるのか不安もつきまとう。本格稼働は断念するべきである。
 必要なのは、使用済み核燃料を全量再処理する方針を取りやめて、核燃サイクルから完全に撤退することだ。再処理前の使用済み核燃料は、そのまま処分する方向へ政策を変更する必要がある。
 すでに保有するプルトニウムの安全な処分方法も研究しなければならない。工場の稼働は負の資産しか生み出さない。