2019年1月22日火曜日

<女川2号機再稼動 施策を問う>(2)有識者検討会

 河北新報が、東北電力女川原発2号機再稼働に向けての「有識者検討会」のあり方について取り上げました。
 有識者検討会10人の専門家で構成され、14年11月から会合が続いていますが、規制委の審査を終えた項目に関する東北電の説明に多くの時間が割かれ現状は規制委の議論の後追いをしているにすぎないという批判があるということです。
 宮城県が検討会を諮問機関ではなく懇話会的な位置付けにとどめた点も、検討会の設置を県に求めた市民団体「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」の意図とずれているようです。
 河北新報:<女川2号機再稼動 施策を問う>シリーズの2回目です。
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<女川2号機再稼動 施策を問う>
(2)有識者検討会/地域の視点 置き去り
河北新報 2019年1月21日
 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)が再稼働に向けた重要局面を迎えている。再稼働を審査する原子力規制委員会が年内に「合格」を出す可能性が大きい。東京電力福島第1原発事故で甚大な被害を受け、今なお影響が続く東北で初めて現実味を帯びる再稼働。住民の疑問や不安を解消し、安全性を保障する施策は十分か。宮城の現状を報告する。(報道部・高橋鉄男)
 
 東北電力は、2013年12月に原子力規制委員会へ女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働審査を申請した際、宮城県には施設変更の可否を問う事前協議を申し入れた。審査に合格後、自治体が事前協議に了解すれば東北電は最終盤の安全対策工事に入ることができる。再稼働に直結するプロセスだ。
 申し入れの可否を決めるため、県と立地市町で構成しているのが県有識者検討会。原発の安全対策を検討事項に、原子力や地震の専門家10人が顔をそろえる。
 14年11月から続く検討会の会合では、規制委の審査を終えた項目に関する東北電の説明に多くの時間が割かれる
 
<規制委後追い>
 15回目を数えた昨年6月の会合も、流れは変わらなかった。委員からは「住民が安心できる資料を示してほしい」と東北電に要望が上がった一方「審査会合で十分説明して納得してもらったということなので分かりました」と質問を打ち切る場面もあった。
 女川原発は、東日本大震災で地震や津波の被害を受けた「被災原発」だ。
 初会合前、県幹部は「国と同じ審査にはしない」と独自性を強調していた。だが、傍聴を続けている宮城県七ケ浜町の元教諭兵藤則雄さん(72)は「現状は規制委の議論の後追いをしているにすぎない」とあきれる。
 東京電力福島第1原発事故後、同様の有識者会議が各原発立地県にできた。宮城とは異なり、事故時に県民の生命財産が守られるかどうかを議論の主眼とする県もある。
 新潟県は事故原因、健康生活、避難と県民の安全に直結する三つの検証委員会を設置。静岡県防災・原子力学術会議は南海トラフの最新知見を持ち込むなど独自の論点を導き、広域避難計画も検証する。
 宮城県の委員で東北大災害科学国際研究所の今村文彦教授(津波学)は静岡県の委員も務める。「静岡は原発の安全ではなく、地域の安全を大前提に原発を考える。宮城は規制委のダブルチェックどまりで、県内に立地しているという観点が抜けている」と自戒を込めて語る。
 
<意見ただ羅列>
 有識者検討会が最終的に目指す「ゴール」の在り方にも疑問符が付く。
 県は検討会を条例制定などの際に答申を出す諮問機関ではなく、懇話会的な位置付けにとどめた。論点に挙げた85項目のうち36項目の説明を既に終えたが、出された意見をまとめずにただ羅列した状態で県や立地市町が判断の参考にする
 「答申だと委員の責任が重くなりすぎる」と県は釈明するが、議論が深まらない最大要因だ。
 検討会の設置を県に求めた市民団体「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」の篠原弘典世話人(71)=仙台市=は「原発事故後、専門家に対する住民の信頼は失墜したままだ。委員同士が議論して独自の論点を導くなど仕切り直さなければ、県民への説明責任は果たせない」と警鐘を鳴らす。