九電玄海原発3、4号機を巡り、住民らが運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審で、福岡高裁は10日、佐賀地裁決定を支持し住民側の抗告を退ける決定をしました。
佐賀や福岡など16都府県の計173人の住民らは、福島原発事故後の2011年7月に「耐震設計の目安となる基準地震動が過小評価されている」などと訴えて仮処分を申し立てましたが、佐賀地裁は17年6月に住民側主張を退けました。
住民側は高裁での即時抗告審で新たに「火山の破局的噴火の可能性が小さいとはいえない」と、火山リスクに関する主張を追加しましたが、山之内裁判長は火山リスクについて「巨大噴火の可能性が全くないとは言い切れないが、相応の根拠を持って噴火の可能性が示されないかぎり原子炉施設の安全確保上、想定しなくても安全性に欠けるところはない」という判断を示し、「住民が生命や身体に重大な被害を受ける具体的な危険が存在するとは認められない」として、申し立てを退ける決定を出しました。
住民側は記者会見し「極めて不当な決定で理不尽だ。今後も原発の抱える危険性を訴えていく」との声明を発表しました。
弁護団は、最高裁への特別抗告については、いたずらに不利な判例を生むことに結びつく可能性があるとの立場から慎重な態度を見せています。
玄海原発3、4号機は17年1月に原子力規制委の審査に合格し、18年に順次再稼働しました。
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佐賀 玄海原発運転停止求めた仮処分退ける 福岡高裁
NHK NEWS WEB 2019年7月10日
佐賀県にある玄海原子力発電所3号機と4号機を運転しないよう地元の住民などが求めた仮処分について、福岡高等裁判所は、「具体的な危険が存在するとは認められない」として、住民側の申し立てを退ける決定を出しました。
佐賀県にある玄海原子力発電所3号機と4号機をめぐり、佐賀県や福岡県などの住民は、地震や火山の巨大噴火に対する安全性が確保されていないとして九州電力に対して運転しないよう求める仮処分を申し立てました。
おととし、佐賀地方裁判所は申し立てを退ける決定を出し、住民173人が即時抗告しました。
これまでの審理では、地震の揺れの想定が妥当かどうかや、九州にあるカルデラ火山の巨大噴火の可能性などが争われました。
10日の決定で福岡高等裁判所の山之内紀行裁判長は、「地震に関する国の規制基準には合理性があり揺れの想定の計算過程などに不合理な点はない」と指摘しました。
また、火山については「巨大噴火の可能性が全くないとは言い切れないが、相応の根拠を持って噴火の可能性が示されないかぎり原子炉施設の安全確保上、想定しなくても安全性に欠けるところはない」という判断を示しました。
そのうえで、「住民が生命や身体に重大な被害を受ける具体的な危険が存在するとは認められない」として、申し立てを退ける決定を出しました。
九州電力「妥当な決定もらった」
決定を受けて九州電力は会見を開き金田薫司事業法務グループ長は「玄海原発には具体的な危険がなく安全性は確保されているとする妥当な決定をもらったと思っている」と述べました。
また、今村和紀原子力技術支援グループ長は「原発の安全性について新たな知見が出れば、それを踏まえて活動している。今後、新たな対策が必要なものが出てくれば反映していきたい」と話しました。
市民団体「極めて不当な判決だ」
決定を受けて住民たちでつくる市民団体は記者会見を開き、石丸初美代表は「ひとたび事故を起こせば取り返しのつかないことになるという事実に目を向けない極めて不当な判決だ。これからも原発の抱える危険性を訴えていく」と話しました。
また、冠木克彦弁護団長は「今回の決定は佐賀地裁の決定をほぼそのまま認めたもので、われわれの主張に対して論じようとしない形式的なものだ」と批判しました。
また、裁判所が巨大噴火の可能性について「原子炉施設の安全確保上、想定しなくても安全性に欠けるところはない」と判断したことについては「認めるわけにはいかない」と批判しました。
最高裁への特別抗告については今後、検討するとしたうえで「仮処分で勝ったとしても、その後開かれる裁判で負ければひっくり返るので特別抗告するメリットはあまりないと考えている」と述べました。