2019年7月14日日曜日

六ケ所村再処理工場の稼働は問題解決に繋がらない

 西日本新聞が原発と参院選との関係を取り上げていますが、本記事では原発そのものではなく、そこで生じた使用済み核燃料を処理する六ケ所村再処理工場を取り上げました。
 
 同工場は1993年に着工しましたが、その後延々と稼働延期が繰り返され、いまだに稼働の見通しが立たない状況にあります。その間同工場の原料となる「使用済み燃料」は貯まる一方で、貯蔵プールの収納量はすでに「99%」に達し、これ以上受け入れられない状態です
 それでは工場が稼働すれば解決するのかと言えばそんなことはなく、そもそも無用・有害なプルトニウムを一体どういう主旨で精製しようとするのかという根本的な問題が解決されていません。ウランの処理で経済的メリットが皆無であることも証明済みです。
 
 それに仮に工場が稼働して廃ウランを「ガラス固化」に変換できたとしても、材料を分別することでトータルの体積は当然増えるし、「ガラス固化体」は熱にも衝撃にも弱いので、それを野積みしたり通常の貯蔵所に蓄えることはテロ対策上もあり得ないことです。
 その問題を解決しないで稼働に入っても、原発内に使用済み核燃料を貯蔵する危険性がそのまま六ケ所村に移転・集積されるだけのことです。
 
 また政府は19年度から 安全性や経済性に優れた新型炉の研究開発始めるということですが、所詮は目先を変えようとするもので、せいぜいお手並み拝見というところです。そこに何かの期待を持つのは間違いでしょう。
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原発の針路かすむ議論 「反発強い」避ける与党 参院選
西日本新聞 2019/7/14 
参院選で原発エネルギー政策を巡る論争がかすんでいる。政府は「(野党が主張する)原発ゼロは責任あるエネルギー政策とは言えない」(安倍晋三首相)として原発再稼働を進める一方で、新増設の是非は語らず、将来像をあいまいにしているためだ。与党が議論を避ける間にも、再稼働に伴い、使用済み核燃料は確実に積み上がるなど課題は山積している。
 
青黒く見えるプールの水の中で、冷温管理された使用済み燃料が並ぶ。「99%埋まっていて、これ以上受け入れられない。当面は各原発でためてもらうしかない」。6月半ば、青森県六ケ所村にある使用済み燃料の再処理工場で、日本原燃の関係者は淡々と語った。
国策として推進する「核燃料サイクル」の中核施設である再処理工場は、1993年の着工後、トラブルなどで24回、稼働を延期してきた。この間、使用済み燃料を新しい核燃料に生まれ変わらせる処理は進まず、全国の原発から搬入される使用済み燃料はたまった。2016年を最後に燃料の受け入れを停止再稼働した九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)や川内原発(鹿児島県薩摩川内市)では使用済み燃料が留め置かれる状態が続く。
 
「原子力規制委員会の再処理工場の審査はもう最終盤」。21年度上期の本格稼働を計画する日本原燃は強調するが、規制委の更田豊志委員長は「見通しが言える状態にはない」と語る。
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「原発の新増設は認めない方」。公示前日の3日に開かれた、与野党7党首による党首討論会で、安倍氏はただ一人、手を挙げなかった。しかしその後、隣に座る公明党の山口那津男代表が「新増設は基本的に認めない」と発言すると、安倍氏は割り込むように「自民も政府も」と早口でまくし立てた。
 
「選挙でプラスにならない不人気政策」(電力業界関係者)に対し、政府のあいまいさが浮き彫りとなった形だが、核燃料サイクルは、原発の将来にわたる安定稼働と再処理が並び立つことで可能になる。再処理工場が稼働しない間にも、九電が玄海原発2号機の廃炉を決めるなど全国の小規模炉を中心に廃炉が進む。一方で、新増設は表だった議論すらされていない
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とはいえ、政府は脱原発を目指しているわけではなく、新増設に後ろ向きなわけでもない。昨夏改定した政府のエネルギー基本計画では「安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求を進める」として、将来の新増設に含みを持たせた。
 
実際、経済産業省は19年度予算で、安全性や経済性に優れた新型炉の研究開発に向け、6億5千万円を新規に計上。東京電力福島第1原発事故から8年がたち、じわりと新増設に向けた足場がつくられようとしている。
 
日本世論調査会が2月に実施した全国調査では、「原発は段階的に減らして将来はゼロ」と回答した人が63%に上る。福島第1原発事故を発端にした国民の不信感は根強い。ある政府高官は「国民の原発への反発はまだ強い。そんな中、オープンな議論をやっても収拾がつかなくなるだけ」と漏らす。