メルトダウンを起こした福島第一原発1号機で、ことし9月までに開始する予定だった原子炉を納める格納容器内部の調査について、東電は開始を遅らせる考えを明らかにしました。
1号機の鋼製の扉を高圧ジェット水で切断する方法を採りましたが、それにより格納容器内側にたまっていたとみられる放射性物質が舞い上がり周囲や大気を汚染したため、別の手段を検討中で扉の切断が出来ていないためです。
一方、高さ120mの排気筒(1・2号機共用)の解体について、東電は準備に時間がかかっていることから、7月下旬としていた工事の開始時期を8月上旬にすると発表しました。解体が終わる時期は、今年度内の来年3月までとしています。
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福島第一原発1号機 格納容器の調査開始遅らせる考え
NHK NEWS WEB 2019年7月25日
メルトダウンを起こした福島第一原子力発電所1号機で、ことし9月までに開始する予定だった原子炉を納める格納容器内部の調査について、東京電力は準備に時間がかかっているとして、開始を遅らせる考えを明らかにしました。
メルトダウンを起こした福島第一原発の3つの原子炉のうち、2号機と3号機ではすでに、溶け落ちた核燃料が混ざった「デブリ」とみられる堆積物が格納容器の底部などで確認されていますが、1号機ではまだ確認に至っていません。
このため、東京電力は原子炉を納めた格納容器内部のロボット調査をことし9月までに開始するとしていましたが、先月、格納容器の金属製の扉に高圧の水を噴射して穴を開けていた際、格納容器内側にたまっていたとみられる放射性物質が舞い上がり、配管の一部で濃度が上昇するトラブルが起きました。
その後、東京電力では作業を中断して放射性物質が舞い上がることを抑える切断方法を検討していて、扉に穴を開ける作業の本格的な再開は来月下旬以降になる見通しを示しました。
そして、これに伴い、ことし9月までに開始するとしていた調査についても開始時期を遅らせる考えを明らかにしました。
福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は、調査の具体的時期はまだ未定としたうえで「安全が大事なので何かあれば立ち止まって検討する」と述べました。
排気筒の解体は8月上旬に
一方、福島第一原子力発電所で、延期されていた高さ120メートルの排気筒の解体について、東京電力は準備に時間がかかっていることから、7月下旬としていた工事の開始時期を8月上旬にすると発表しました。
福島第一原発の1号機と2号機の建物の隣にある高さ120メートルの排気筒は、内部に高い濃度の放射性物質が付着していて、ことし5月から解体が始まる予定でしたが、直前に作業で使うクレーンの高さが1メートル60センチほど足りないことがわかり、延期されていました。
東京電力は、クレーンを排気筒に近づけて高さの不足を補うため、これまでに周辺の路面の強度を高める工事などを終えました。
そして、解体に使う切断装置や遠隔操作のための通信機器の動作確認などを進めていますが、確認に時間がかかっていることや天候不良が続いたことから、東京電力は今月下旬としていた解体工事の開始時期を来月上旬に遅らせると発表しました。
解体が終わる時期は、今年度内の来年3月までとしています。
東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は「遠隔操作でこれだけ大型のものを解体するのは初めての経験なので、スケジュールありきではなく、安全第一で進めたい」と話しています。