ブログ「日々雑感」の記事を紹介します。
まず冒頭の記事は、9日付の日経新聞のタイトル「原発安全費、想定の3倍超す 関電・九電1兆円規模 エネルギー政策に影響も」のものです。
そこでは原発の安全対策費が、関電では総額1兆0250億円、九電では9千数百億円に達するなど、全11社で約4兆8千億円に達し、当然原発の「発電コストが高くな」り、「再生可能エネルギーなどとのコスト比較の議論にも影響しそうだ」としています。
「日々雑感」氏はそれに対して、原発や火力発などが「水力発電」をベースにした「総括原価方式」を取るのは間違っている(⇒悪用)として、特に原発において使用済み核燃料の処理費用を発電コストから除外するのは、会計学上「企業会計経験則」に反していると批判しました。
これまで「総括原価方式」は電気、水道、ガスなどの公共料金の安定性を確保するための方式と説明されてきましたが、現実には、電力会社などに多大な利潤を生みださせ、その反面で、一向に原価低減の発想を生み出さない(コストを上げればそれに比例して会社の利潤が増大するため)という弊害だけが目立ちました。
「日々雑感」氏は、これまで国と電力会社の言いなりになって国民を騙してきたことをメディアは素直に認めて謝罪すべきだとしています。
いずれにしても原発の発電コストが安いというのは明白な「偽り」で、もはや隠し切れない段階に達しています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原発について「安全神話」と「低廉発電原価」で国民を騙してきたマスメディア
日々雑感 2019.07.09
原子力発電所の安全対策費が電力会社の想定を上回り、各社に対策を迫っている。厳しい安全基準が導入された2013年時点から国の原子力規制委員会が求める対策が追加され、各社の対策投資は軒並み増えた。最も多い関西電力は1兆円規模に達する。事故の備えとしての安全対策費が増えれば、原子力を発電コストの低い安定電源と位置づけてきたエネルギー政策に影響を与える可能性がある。
政府が15年に明らかにした30年時点の発電コストは原発が1キロワット時あたり10.3円以上と、石炭火力(同12.9円)、太陽光(同12.5~16.4円)に比べ安い。一方、新規の原発1基あたりの安全対策費が1000億円増えるとコストが1円高くなる。
海外では太陽光や風力の発電コストが10円を割り込む事例が増え、一部の地域では原発のコスト競争力が揺らいでいる。電力各社が原発の安全対策に投じる費用は結果的に電気料金に上乗せされ、利用者の負担になることも想定される。
日本経済新聞社が沖縄を除く大手9電力に、日本原子力発電と原発の建設計画があるJパワーを加えた11社に聞き取りしたところ、今年6月末時点で対策の総額は約4兆8千億円だった。
東京電力福島第1原発の事故を受け、6年前の13年7月8日、安全対策を巡り世界で最も厳しいとされる基準が導入された。13年1月時点で各社が想定していた費用は総額約9千億円で、6年あまりで4兆円弱増えた。
13年以降は、規制委の安全審査の過程で地震の揺れや津波の高さの想定値を高くするよう求められ、配管の耐震補強などが生じた。テロ対策施設の対策が追加。規制委はテロリストによる航空機の衝突などに備え、遠隔操作で原子炉を冷やす設備の設置が求められた。
原発依存度が高い関電は、13年時点の見込みと比べ3.6倍の約1兆250億円になった。テロ対策施設の完成が遅れると表明しており、安全対策費の増加を懸念する声がある。関電は工期短縮策を探るものの「工法等で対策を見いだせたとしてもコストが膨らみ収益を圧迫する可能性がある」(関電幹部)という。
九州電力は川内原発(鹿児島県)と玄海原発(佐賀県)でのテロ対策施設の建設に約4600億円を見込み、対策費は13年時点の4倍超の9千数百億円に拡大した。
8日には規制委が「未知の活断層」への対策強化を全国の原発に促す報告書案をまとめた。九電は玄海、川内両原発の周辺に目立った活断層がなく、新たな対応が必要との見方が出ている。九電は「耐震性に余裕を持った施設と評価している」とするが、規制委によって想定より揺れが大きくなり建物が耐えられないと判断されると追加工事で対策費が増える。
中部電力に対しては、規制委が内閣府が示した南海トラフ地震の影響を厳しく見積もるよう求めた結果、中部電が建設した22メートルの防潮堤を上回る22.5メートルの津波が来る試算値となった。中部電は想定見直しに慎重だが、規制委から求められれば防潮堤の追加工事が必要になる。
テロ対策施設は工事認可から5年以内とする期限に完成が間に合わなければ、稼働の停止を迫られる。福島第1原発の事故後、原発は運転できる期間が最長でも60年となった。事故前に動いていた原発も安全対策や地元との調整に時間がかかれば、低コストで発電できるとする電力大手の収益改善が進まない。
17年度の電源構成に占める原子力の比率は3.1%だった。政府のエネルギー基本計画では30年時点でこの比率を20~22%としている。電力会社も収益改善と、電気料金の引き下げになるとして原発再稼働を進めたい考えだ。関電は再稼働後に料金を引き下げたが、対策費が膨らむと前提が変わる可能性がある。
政府は稼働年数が限られる既設の原発の対策費のコストに与える試算を出していないが、一般には採算性が下がり「発電コストが高くなる」(経済産業省関係者)。再生可能エネルギーなどとのコスト比較の議論にも影響しそうだ。株式市場では原発のコスト増などを懸念する機関投資家も出始めている。
(以上「日経新聞」より引用)
|
天下の「日経新聞」ともあろうものが「厳しい安全基準が導入された2013年時点から国の原子力規制委員会が求める対策が追加され、各社の対策投資は軒並み増えた。最も多い関西電力は1兆円規模に達する。事故の備えとしての安全対策費が増えれば、原子力を発電コストの低い安定電源と位置づけてきたエネルギー政策に影響を与える可能性がある」との記事を掲載しているとは驚く。
総括原価主義とはかつて水力発電の原価計算に適した計算方式として発明され、実際の原価計算に用いられたものだった。それはダム建設が用地買収から膨大な額に上ると同時に灌漑用水から工業用水、さらには洪水調節機能まであることから、ダム建設費用を発電電力に賦課するのが困難との見解から用いられた「特殊」な原価計算方式だ。
それを火力発電から原発まで用いるとは「悪用」としかいいようがない。それに対して再生エネの発電コストは「総投資額」を予定発電期間に配賦して算出する、という企業会計原則に基づく原価計算方式を採っている。だから再生エネとそれ以外の発電コストを比較するのが間違っている。
原発に関して安全基準を満たすためのコストを関電で1兆円と見積もって原発コストに入れる、というが、それなら廃炉から放射性物質の最終処分に要するコストも予定見積りで発電コストに賦課すべきではないか。そうすると原発は安価な発電装置ではないということが明らかになる。
いや、もともと明らかだったはずだ。誰も原発が安価な発電装置だとは思っていなかったはずだ。それを「発電時のコスト」が11円だとかいって「安い」という大嘘を国民につき続けた。同じ基準で再生エネを表現すれば発電時のコストだから発電コストは限りなくゼロ円に近い。そうしたトリックを未だに日経新聞が踏襲しているのには驚く。
いかに政府・電力会社が「総括原価主義」で原発の発電コストを発表しようと、マトモな経済新聞社の経済学を学んだ記者なら企業会計原則に基づく原価試算くらいは併記すべきだった。そうすればこの狭い国土の日本全国に55ヶ所という狂気じみた原発の乱立を見なかったはずだ。
もちろん大津波で原発放射能漏れ大惨事も起きなかった可能性が高い。いや、当初通り原発耐用年数40年で運用していれば福一原発で三期も四基も原子炉が破壊されることはなかった。その耐用年数を20年延長を決めたのは二次安倍内閣だ。
日本国民は腐り切ったマスメディアによって洗脳されている。国民はまともな発電原価による比較や、放射能の安全判断すら出来なくなっている。
いかに日本のマスメディアが恣意的に原発を国民に伝えているか、上記記事を子細に検討するまでもなく分かることだろう。安全性確保の修繕費が減価算入されるのなら、当然発電停止後の「廃炉費用」も発電原価に入るはずだ。そして原発稼働により出た放射性廃棄物の処理費用も当然原発発電電力の原価に算入されるべきだ、というのが企業会計経験則の考え方だ。
現行の原発発電電力の原価計算は「公取」によって取り締まられるべきものだし、証券取引所のSEC監査によって指摘される「粉飾決算」というべきものだ。そうした数々の犯罪の上に成り立つのが原発「神話」だ。マスメディア関係者はこれまでの電力会社や政府の言いなりに、非常識な原価方式を原発にも適用して国民を騙してきたことを素直に認めて謝罪すべきだ。