2018年3月6日火曜日

06- 被災者援護資金回収が本格化 しかし ・・・

 東日本大震災で被災者に貸し付けた災害援護資金の返済猶予期間は6年で、最も早い被災者昨年12月に返済期日を迎えまし。しかし6年が経過しても別に家計が好転したわけではないので、滞納率は27%に達しているということです。

 市の担当者は「市に回収責任はあるが、何が何でも回収することが正しいとは言えない」と、ジレンマを表明しています。
 日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長の津久井進弁護士は、「自治体、被災者の両方に負担の大きい制度になっている。減免を自治体で弾力的にできる制度であるべきだ」と指摘しています。
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 東日本大震災
被災者援護資金回収本格化 自治体ジレンマ
毎日新聞 2018年3月5日
 東日本大震災で被災者に貸し付けた災害援護資金の回収が本格化し、市町村が危機感を強めている。生活再建が進まず、回収が滞る恐れがあるためで、貸付額が約233億円(1万5137件)と全国最多の仙台市では繰り上げ返済を除くと滞納率が3割近くに上る。回収を強いれば被災者を追い込むことになり、担当者は対応に苦慮している。

 東日本大震災での災害援護資金の貸付額は1月末現在、9都県で約519億円(2万9472件)に上り、約8割が宮城県の市町村。6年の猶予を含む13年が返済期間で、最も早い被災者で昨年12月に返済期日を迎えた。

 仙台市の滞納率は1月末現在26.6%(繰り上げ返済を除く)。貸付額が約63億円(3046件)と2番目に多い宮城県石巻市の滞納率は同27.1%(同)だった。両市によると、「仕事が軌道に乗らず生活が厳しい」などの理由が多く、震災後に病気になり治療費がかさんで生活が苦しいケースもあった。

 滞納分は市町村の負担となる可能性がある。このため仙台市は昨年4月、回収業務や相談窓口を担う災害援護資金課を約15人体制で新設。11月には担当者を神戸市に派遣し、阪神大震災での教訓を学んだ。宮城県は今年1月、市町村の担当者を集めた研修会を開き、神戸市の担当者を講師に招いた。仙台市災害援護資金課の清水充課長は「市に回収責任はあるが、何が何でも回収することが正しいとは言えない」とジレンマを口にする。

 阪神大震災では兵庫県内で5万6422件に総額約1308億円が貸し付けられた。国が免除要件を緩和するなどして147億円(昨年9月末現在)が返済免除となったが、55億円(昨年9月末現在)の未回収金が残る。約30億円の未回収金を抱える神戸市はこれまでに回収コストで43億円を費やしたという。

 日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長の津久井進弁護士(兵庫県弁護士会)は「自治体、被災者の両方に負担の大きい制度になっている。阪神の時を見ても生活再建のための制度としては失敗だった。減免を自治体で弾力的にできる制度であるべきだ」と指摘する。【堀和彦、森口沙織】

ことば「災害援護資金」
 災害弔慰金法に基づき、負傷や住宅が全半壊するなどした被災者に150万~350万円を貸し付ける制度。原資は国が3分の2、都道府県・政令市が3分の1を負担し、窓口や回収事務は市町村が担う。利子は3%だが、東日本大震災では特例として1.5%で、保証人がいれば無利子。返済期間も10年から6年の猶予期間を含む13年に延長された。