2018年3月17日土曜日

東京地裁も国と東電に賠償命令 4例目 原発避難訴訟

 福島原発事故で福島県から東京都などに避難している自主避難者ら17世帯47人が、国と東電に計約63500万円の賠償を求めた集団訴訟の判決で、東京地裁は16日、国と東電の責任を認め、17世帯42人に計約5900万円を支払うよう命じました。全国で約30件が争われている原発避難者の集団訴訟でで国・東電の責任を認めたのは4件目で、国側敗訴が続いています
 
 しかし賠償額については、国と東電に事故の責任があると認定したにもかかわらず、東電の既払い額からの上積みとは言えあまりにも少額である上に、避難に合理性がある期限を、11月12月まで(18未満者や妊婦、その家族は128月まで)としたのは、一体どういう根拠に基づくのか、とても理解できないことです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原発避難訴訟  東京地裁も国と東電に賠償命令 国は4例目
毎日新聞 2018年3月16日
原告42人に計5900万円支払い命令
 東京電力福島第1原発事故で福島県から東京都などに避難している17世帯47人が、国と東電に計約6億3500万円の賠償を求めた集団訴訟の判決で、東京地裁(水野有子裁判長)は16日、両者の責任を認め、17世帯42人に計約5900万円を支払うよう命じた。同種訴訟で国の責任を認めたのは4件目で、国側敗訴の判断が続いている。
 約30件ある同種訴訟のうち、地裁判決は6件目。国が被告とされた訴訟の判決は5件目で、これまでに前橋、福島、京都の3地裁が国の責任を認め、千葉地裁だけが否定していた。
 
 今回の原告の大半は福島市やいわき市、田村市などに住み、事故で県外に避難した。46人は自主避難者らで、残る1人は国が避難を指示した「緊急時避難準備区域」からの避難者。
 判決は、政府の地震調査研究推進本部が2002年に公表した、福島沖でマグニチュード8の地震が起こりうるとした「長期評価」に基づき、国と東電は同年末までに、10メートル超の津波が第1原発を襲う可能性を予見できたと指摘。「国は06年末までに東電に津波対策を命じるべきで、東電も対策に着手すべきだったのに怠った」とした。
 さらに、避難者は憲法が保障する居住・移転の自由に基づく居住地決定権を侵害されたと指摘。自主避難者も「事故直後に健康被害の有無を判断するのは不可能だった」とし、11年12月までの避難は合理性があったとした。18歳未満や妊婦、その家族は12年8月までの避難の合理性を認めた
 
 その上で、避難による生活費増を1人当たり月1万円、家財道具購入費を5万~10万円などと算出。自主避難の41人について1人当たり308万~42万円、避難を指示された1人に406万円の支払いを命じた。事故当時、生まれていなかった原告や他の賠償を既に得ている計5人の請求は棄却した。【近松仁太郎】
 
対処方針を検討
 原子力規制庁の話 国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかった。関係省庁とともに判決内容を検討の上、対処方針を検討していく。
 
原発事故避難者訴訟東京地裁判決骨子
 
・東京電力は2002年中には10メートルを超える津波が第1原発を襲う可能性を予見でき、06年末までに対策に着手する義務があった
・国も東電と同様、02年中に10メートル超の津波を予見でき、06年末までに規制権限を行使する義務があった
・事故直後に健康被害の有無を判断することは不可能で、原則11年末までの自主避難には合理性があった.
 
 
(社説)原発避難者訴訟 国は重い責任の自覚を
北海道新聞 2018年3月17日
 東京電力福島第1原発事故で、避難指示区域外からの自主避難者らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の判決が相次いで下された。
 京都、東京の両地裁の判決はいずれも国と東電の責任を認め、原告の一部への支払いを命じた。
 これで全国で約30ある集団訴訟のうち6件で判決が出た。
 
 重要なのは、国も被告となった5件のうち、4件で国の責任が認められたことである。
 未曽有の過酷事故の責任は東電だけではなく、規制権限を行使しなかった国にもある。こうした判断が定着したと言えよう。
 このことを国は重く受け止めるべきだ。被災者支援に尽くすとともに、再稼働ありきの原発回帰政策を根本から改める必要がある
 
 京都地裁判決は、原告174人のうち110人に対し、避難から2年分に限り慰謝料などを支払うよう求めた。
 判決からは、混乱の中、家族の健康を守ろうとやむなく古里を離れた自主避難者の立場に配慮したことも読みとれる。
 賠償の対象となった原告には、福島市などのほか千葉県松戸市から京都府へ移った人も含まれる。
 妊婦や子供の有無、原発からの距離など個々の事情に着目し、避難指示区域の内か外かで線引きした国とは異なる立場を取った。
 
 一方、東京地裁判決は、原告47人中42人への支払いを命じた。自主避難者らは、憲法22条に定める「居住、移転の自由」に基づく居住地決定権が侵害されたと指摘した点に注目したい。
 国の責任を認めた4件の判決の構成は共通している。
 国の地震調査研究推進本部が2002年に示した地震活動の長期評価を基に、東電、国とも巨大津波の発生を予測できたと指摘。規制権限があるのに国はそれを行使しなかった、としている。
 原発事故を「想定外」の自然災害によるものとして済まそうとする。そんな国の姿勢を、司法が否定したと言えるだろう。
 
 原発事故に伴う福島県内外の避難者は、自主避難を含めて今なお、約5万人に上る。
 ところが、国の帰還政策が進行するのと並行し、住宅無償提供などの支援は縮小している。
 政府は、古里での平穏な生活を奪った原発事故の過酷さを直視しなければならない。
 被災者に向き合い、きめ細かく生活を支えるべきだ。同時に、脱原発依存の方向へエネルギー政策を転換する議論が求められる。