福島県などから京都府に移った自主避難者中心の住民174人が国と東電に慰謝料など約8億4660万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は15日、自主避難の合理性を認め、国と東電双方に対し、110人へ約1億1000万円を支払うよう命じました。
全国で約30ある同種の集団訴訟では5件目の判決で、国の責任を認めたのは3件目です。
浅見宣義裁判長は、国の避難指示基準の年間被爆量20ミリシーベルトも「そのまま避難の相当性を判断する基準となり得ない」とし、「個々人の置かれた状況によって、各自がリスクを考慮して避難したとしても社会通念上」合理性があると判断しました。
原告側は、一部避難者の賠償が認められなかったことを不服として控訴する方針ですが、今度の判決でも、国と東電の責任を認めていながら、賠償額が要求から大幅に減じられていることが気になります。
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原発避難訴訟 「06年末に国は東電に安全対策命令義務」
毎日新聞 2018年3月15日
京都地裁判決 国と東電双方の過失責任を認める
東京電力福島第1原発事故に伴い、福島、茨城、千葉各県などから京都府に避難するなどした57世帯174人が計約8億5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、京都地裁は15日、国と東電に対し、原告110人に計約1億1000万円を支払うよう命じた。浅見宣義裁判長は、東電が「津波への対応を怠った」とし、国は「どれほど遅くとも2006年末時点で安全対策を東電に命じるべきだった」と述べ、国と東電双方の過失責任を認めた。また、原告の多くを占める自主避難者について原発からの距離や子供の有無など独自基準を示して一部請求を認めた。
原告側は、一部避難者の賠償が認められなかったことを不服として控訴する方針。
原発避難者の集団訴訟は全国で約1万2000人が約30件提起しており、判決は5件目。国の責任を認めたのは昨年3月の前橋地裁、同10月の福島地裁に続いて3件目。同9月の千葉地裁は国の責任を否定していた。
原告の事故当時の居住地は、福島市やいわき市など東電が賠償対象とする福島県内の「自主的避難区域」が143人で、同区域外の福島県や茨城、千葉など他県が29人。他の2人は国の避難指示などが出た福島県内の区域。いずれも平穏な日常生活を奪われたなどと訴え、原則1人550万円の賠償を求めていた。
判決は、政府の地震調査研究推進本部が02年に発表した福島沖でマグニチュード8級の津波地震が起きうるとする内容の「長期評価」について、「最新の公式見解であり、被害発生の確率などを積極的に検討すべきだった」と指摘。国や東電は「10メートルを超える津波が到来することを予見できた」と認定した。国の賠償責任について「東電に長期評価の見解に基づく津波の高さを試算させ、敷地高を超える津波への対応を命じなかったことは違法」と認めた。
自主避難の相当性を巡って判決は、原告が主張した「年間被ばく線量1ミリシーベルトを超える地域」は採用しなかったが、国の避難指示基準の同20ミリシーベルトも「そのまま避難の相当性を判断する基準となり得ない」と指摘。「個々人の置かれた状況によって、各自がリスクを考慮して避難したとしても社会通念上、相当な場合はあり得る」と述べた。
その上で、自主的避難区域に住んでいた人については、12年4月1日までに避難したか▽妊婦や子供がいたかなどを基準として提示。同区域外からの避難についても▽原発からの距離や放射線量▽避難した時期▽世帯に子供などがいたか--などの要素を考慮し、一部の請求を認めた。【飼手勇介、野口由紀、中津川甫】
原子力規制庁法務調査室は「判決の詳細は十分承知していないが、国の主張が認められなかったと聞いている。今後、関係省庁において判決内容を検討の上、対処方針を検討していきたい」とのコメントを出した。
東京電力ホールディングスは「今後、判決内容を精査し、対応を検討する」とのコメントを発表した。