東海第二原発について、日本原電と30キロ圏内にある6つの自治体は、29日夜、再稼働の際に自治体側の「実質的な事前了解」が必要となる新たな協定を結びました。
原発を再稼働させる際の事前了解の対象が立地する自治体以外に広げられたのは全国でも初めてのケースです
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再稼働「実質事前了解」立地自治体以外では全国初 東海第二原発
NHK NEWS WEB 2018年3月29日
茨城県東海村にある東海第二原子力発電所について、日本原子力発電と原発から30キロ圏内にある6つの自治体は、29日夜、再稼働の際に自治体側の「実質的な事前了解」が必要となる新たな協定を結びました。原発を再稼働させる際の事前了解の対象が立地する自治体以外に広げられたのは全国でも初めてのケースです。
原発を再稼働させる際、電力各社はこれまで、自治体と結んでいる安全協定に基づき、原発が立地する自治体と県にだけ事前に了解を得る手続きをとってきました。
しかし、福島第一原発の事故を受けて、茨城県東海村の東海第二原発では、30キロ圏内にある水戸市や日立市など6つの自治体が事前了解の対象とするよう求め、日本原電との間で協議が進められてきました。
そして、29日午後6時から東海村で開かれた会合で、再稼働の際には6つの自治体の「実質的な事前了解」が必要となる新しい協定が締結されました。
新たな協定では、原発の再稼働などの際に東海村を含む6つの市と村が「追加の安全対策の要求などを通じ、事前協議により、実質的な事前了解を得る仕組みとする」としています。
そのうえで、協定の内容の確認書では、6つの自治体が「それぞれ納得するまでとことん協議を継続することを日本原電に約束させた」としています。
原発を再稼働させる際の事前了解の対象が立地する自治体以外に広げられたのは、全国でも初めてのケースです。
日本原電社長「とことん議論し対応」
新しい協定について、日本原子力発電の村松衛社長は「締結までにかかった5年半という期間を大変重く受け止めている。今後の協議については、6つの自治体との懇談会で、さまざまな質問や意見を真摯(しんし)に聞いて、納得を得られるまでとことん議論し、対応させていただきたい」と話していました。
東海村長「新協定締結 ほっとしている」
懇談会の座長を務める東海村の山田修村長は「5年半かけてようやく新協定を締結できたことにほっとしている。再稼働の前提となる審査の結果が出る前に協定を結ぶことが大事だった。6つの自治体の『実質的な事前了解を得る』という内容が明確に盛り込まれたのは大きな成果だ」と話しました。
水戸市長「これまでの要求が通った協定」
原発から30キロ圏内にある水戸市の高橋靖市長は「私たちのこれまでの要求が通った協定だと思っている。新しい協定にある『実質的な事前了解』は、東海村との間に結ばれている現在の協定の『事前了解』と同じものだ。今後は有識者会議などを通じて市民の意見を集約していきたい」と話しています。
6市村の懇談会とは
東海第二原発から30キロ圏内にある6つの市と村で作る懇談会は、福島第一原発の事故のあと、6年前に設立されました。
懇談会のメンバーは、東海村、水戸市、日立市、ひたちなか市、那珂市、常陸太田市、6つの市と村です。
原発事故が起きれば、その影響は広範囲にわたるとして、東海第二原発の再稼働をめぐる判断は、立地自治体の東海村だけではなく周辺の自治体とともに協議していく必要があるとして設立されました。
そして、日本原電が東海村と茨城県との間で結んでいる安全協定を見直し、現在は再稼働などの際に東海村と茨城県にだけ認められている事前了解の権限を、周辺の5つの市にも拡大するよう求める要望書を平成24年に提出して協議を進めていました。
事前了解 周辺自治体が求めるも協定結ばれず
原発を再稼働させる際、これまで電力各社は、原発の立地自治体と結ぶ安全協定などに基づき、事前に自治体の了解を得る事前了解の手続きが取られてきました。
ただ、福島第一原発の事故では、放射性物質が広い範囲に拡散したことなどから、原発周辺の自治体は、事故が起きた場合、立地自治体と同じような被害が起こりうるとして、事前了解の手続きを求める動きが活発化しました。
しかし、電力各社によりますと、原発を再稼働させる際、周辺の自治体に範囲を広げて事前了解の手続きを定めているケースはこれまでありませんでした。
おととし再稼働した福井県にある高浜原発をめぐっては、原発から30キロ圏内に入る京都府と滋賀県は関西電力に対し、事前了解の手続きを求めましたが、結局、そうした協定は結ばれませんでした。
原発事故のあと、新しい規制基準の下で再稼働した原発は全国で5原発7基となりますが、電力各社が再稼働させる際、いずれも県と立地する市と町だけで事前了解の手続きが取られてきました。
東海第二原発とは
東海第二原子力発電所は、福島第一原発と同じ、沸騰水型と呼ばれるタイプの原発で、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が終盤を迎えています。
ただ、ことし11月で運転開始から40年を迎えるため、再稼働のためには運転期間を20年延長することが必要で、そのための審査にも合格する必要があります。
また、国の防災指針で避難計画の策定が義務づけられる原発から30キロ圏内には、全国の原発で最も多い96万人が住んでいて、事故の際、住民を安全に避難させることができるのかが大きな課題になっています。