茨城県内の市民団体「関東子ども健康調査支援基金」は独自の甲状腺検査を続け、国や自治体の支援もない中、4年半で延べ約8000人の子供たちを調べてきました。検査にあたる野宗特任教授や検査技師らは無報酬ですが、受検者は1回あたり2000円を支払います。
開始から4年間で結節の大きさと状態から病院受診が必要と判断された人の比率は0.39%で非常に高率です。
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甲状腺検査を継続 被ばく影響懸念 市民団体、独自で /茨城
毎日新聞 2018年3月14日
(茨城)県内の市民団体などでつくる「関東子ども健康調査支援基金」(事務局・守谷市)は、東京電力福島第1原発事故で放出された放射性ヨウ素による影響を懸念し、独自の甲状腺検査を続けている。国も関与する大規模な検査は福島県内に限定され、国や自治体の支援もない中、4年半で延べ約8000人の子供たちを調べ続けてきた。主催者は「被ばくの影響はいつ出るか分からない。長い時間調べ続けることが必要だ」と意義を訴える。【安味伸一】
4年半延べ8000人
10日は牛久市エスカード生涯学習センター会議室で検査があり、63人が受検した。土浦市の主婦、関智子さん(41)は小学4年の長男(10)と1年の長女(7)を連れて訪れた。島根大の野宗義博特任教授(67)は、関さんの長女の首に検査の探触子を当てながら、正面にあるモニター画面を見つめた。「右に1・6ミリののう胞(液体がたまった袋のようなもの)。成長に伴って出てくるものだから」と説明した。2~3分ほどで終了すると、スタッフがモニター画像をプリントアウトして手渡した。関さんの2人の子供が検査を受けるのはこれで3回目だ。関さんは「事故直後は外で遊ばせなかった。できれば学校や市町村で検査してほしい」とつぶやいた。
福島県と県立医大が実施する甲状腺検査は事故当時18歳までの子供約38万人全員を対象に実施するもので、これまでに160人が甲状腺がんと診断され、手術を受けた。検査費用は国と東電が負担している。
自己負担2000円
一方、支援基金の検査には公的な支援はなく、寄付や基金会員の会費で賄っている。国が福島県外での検査に否定的なうえ、県も専門家の見解などを理由に「必要ない」と判断したためだ。超音波検査の機器は基金が約350万円を投じて購入したものだ。探触子も昨年、約100万円を出して更新した。受検者は1回あたり2000円を支払う。検査にあたる野宗特任教授や検査技師らも無報酬だ。
2013年10月の検査開始から今月までの4年半に、茨城▽千葉▽埼玉▽栃木▽神奈川-の5県、延べ117会場で、事故当時18歳以下だった延べ8024人を検査した。
開始から4年間で受検した延べ7180人のうち、結節(しこり)の大きさと状態から病院受診が必要な「要専門医」と判断されたのは28人。がんかどうかを判断するにはさらに病院に行き、針を刺して細胞の一部を取り出す検査などが必要になる。
「継続が大事」
同基金の共同代表で常総生協理事の佐藤登志子さん(46)は「やはり継続することが一番大事。異常を早期発見できれば検診の意義はある」と活動を振り返った。
■ことば
原発事故と小児甲状腺がん
甲状腺は喉仏の下にある縦横4センチほどのチョウのような形をした臓器で、食物中のヨウ素を取り入れて成長や新陳代謝を促すホルモンを作る機能がある。原発事故で放出された放射性ヨウ素を吸い込むことでがんが引き起こされる恐れがあり、チェルノブイリ原発事故(1986年)後、周辺で特に子供の甲状腺がん患者が急増した。その数は約7000人と言われる。