2018年3月2日金曜日

福島原発 凍土壁は凍結不完全 1日約110トン プラスα が流入

 福島原発「凍土遮水壁」の効果について、東電は1日、汚染水発生量が1日95トン減っているとの試算を公表しました。
 凍結開始前に比べると1日約380トン減りましたが、大半は建屋周囲のサブドレンによるもので、それらの効果を除外すると減少量は1日95ンと「ほぼ半減」(⇒現在は1日約110トンの汚染水が発生)したということです。

 燃料デブリの冷却水はクローズドシステムになっているので水量の増加はありません。汚水の発生は建屋の破損部(亀裂等)から流入する地下水によるもので、凍土壁が完全に遮水していれば、建屋内外の水位差をコントロールすることで理論上はゼロ近くに抑えられます。凍土遮水壁が当初、汚染水の発生抑制の「切り札」とされたのはそのためです。

 しかしいまも日量110トンの汚染水が発生しているということは、少なくともそれに匹敵する水量が遮水壁を透って建屋周囲ゾーンに流入しているということになります(実際の流入量は110トン+サブドレン量)。
 東電は、凍土遮水壁はそれなりの効果を発揮していると言いたいのでしょうが、東電の報告は、逆に凍土壁の遮水が不完全(=凍結しない箇所がある)であることを示しています。
 地下水の流速が01m/日以上あると凍結しないとされているので、必ずそういう箇所が生じるということは当初から指摘されていたことで、それが確認されたことになります。お粗末なことです。
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凍土壁の効果「1日当たり95トン」 東電発表 問われる費用対効果
産経新聞 2018年3月1日
 東京電力は1日、福島第1原発で汚染水の原因となる建屋への地下水などの流入を防ぐために設けた「凍土遮水壁」の効果が、汚染水の低減量で1日当たり約95トンとする評価結果を発表した。建屋周辺の井戸などを合わせた複数の対策による低減量は約380トンだった。凍土壁には約350億円の国費が投入されているが、原子力規制委員会は当初から「井戸の方が有効では」と効果を疑問視しており、「95トン」の費用対効果が問われそうだ。

 東電の廃炉汚染水対策の責任者を務める増田尚宏氏は、凍土壁の効果を「限定的」とする見方に対し「凍土壁によって、降雨後の水位の暴れ方が非常に小さくなった」などとして否定的な考えを示した。

 凍土壁は1~4号機を地中約30メートルに打ち込んだ約1500本の凍結菅で取り囲み、冷却剤を循環させて地盤を凍結させる。平成28年3月に凍結を開始し、現在は「地中深くの一部をのぞき完成している」と東電。維持費は年十数億円とされている。
 建屋への地下水流入への対策は凍土壁のほかに、敷地を舗装し雨水の浸透を抑制▽建屋手前で地下水バイパスでくみ上げる▽凍土壁を超えた地下水を井戸でくみ上げる-の4段構えで行っている。

 評価結果によると、これらの組み合わせで、凍土壁完成前は1日当たり約490トンあった雨水や地下水に起因する汚染水の発生量が、完成後は約110トンにまで減った。東電は「建屋に地下水を近づけない重層的な水位管理のシステムが構築された」としている。


東日本大震災
福島第1原発事故 汚染水発生95トン減 東電、凍土壁効果試算
毎日新聞 2018年3月2日
 東京電力福島第1原発で土壌を凍らせて地下水の流入を防ぐ「凍土遮水壁」について、東電は1日、凍土壁によって汚染水発生量が1日95トン減っているとの試算を公表した。凍土壁単独の効果の試算は初めて。

 凍土壁は、1~4号機を囲むように約1500本の管を地下30メートルまで打ち込み、氷点下30度の液体を循環させて凍土の壁(全長約1・5キロ)を造る。原子炉建屋に地下水が流れ込むのを防ぎ、汚染水の発生を抑制する。建設には国費345億円が投じられた。
 東電は地下水の流れをコンピューターで計算。凍土壁がない場合に比べ、ある場合は汚染水発生量が1日95トン抑えられ、ほぼ半減しているとの結果になった。
 一方、東電によると、実際の汚染水発生量は、凍土壁がほぼ完成した2017年冬には凍結開始前の15年冬より1日約380トン減った。
 第1原発では上流側で地下水をくみ上げて海に流したり、建屋周辺の井戸(サブドレン)から地下水をくみ上げたりする対策も取っており、これらの効果に比べ、凍土壁の効果は限定的だとみられる。

 東電は「凍土壁単独でも汚染水低減の効果があるとはっきりした」と説明した。今後、政府の有識者会議で今回の試算の妥当性を議論する。【鈴木理之】

■解説
国費345億円投入、検証作業が必要
 凍土遮水壁は当初、汚染水の発生抑制の「切り札」とされた。建設が決まったのは、2020年東京五輪の招致活動が山場を迎えつつあった13年5月。政府が前面に立って汚染水対策にあたっていることをアピールすると同時に、長さ1・5キロもの凍土壁の建設は、民間企業が起こした事故の後始末に税金を投入する「口実」にもなった。

 この日、東電は凍土遮水壁単独の効果の試算を初めて公表し「一定の効果はある」と述べた。しかし、汚染水の発生が減っているのは、原子炉建屋周辺などから地下水をくみ上げていることによる効果の方が大きいとみられる。凍土遮水壁には国費345億円が投じられた上、今後も凍結の維持に年間十数億円かかる。原子力規制委員会は当初から費用対効果を疑問視していた。本当に凍土壁が必要だったか検証する必要がある。【岡田英】