2018年3月13日火曜日

13- 福島原発の事故で高度被爆の事実を隠してきた政府、電力会社、マスコミ

 櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
 文中で「トーラス」と呼ぶものは「格納容器下部のドーナツ状の部分」で、「サプレッション・チャンバー」とも呼ばれます。
 原子炉内で発生した高圧のガスをここに誘引して水に凝縮させることで、原子炉内の圧力を調整する機能を持っています。

 通常はトーラスでの放射能除去率は99%とされていますが、福島事故時には内部の水が沸騰状態にあったので除去はされなかったと見るべきです。
 そうなると政府が事故時に原発から放出された放射能の総量はチェルノブイリの10%とか17%だったとしているのは間違いで、実際はチェルノブイリの2~5倍であったという主張です。
 政府や福島県の検討委員会は、甲状腺がんの異常発生に対してもチェルノブイリよりも被爆量がはるかに少ないので放射能の影響は考えられないと一貫して否定していますが、その根拠がそもそも間違っているということです。

 11日には、甲状腺がんで通常の生活ができないでいる女性がTVで紹介されましたが、そういう甲状腺ガンで苦しむ人たちに対して、国も県も、放射能起因でないという口実で何の援助もしていません。
 高度に被爆した事実を隠蔽することで、いまも必要な援助をしない国の罪は重く、到底許せません。
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東電福島第一原発の事故で事実を隠してきた政府、電力会社、マスコミの責任
櫻井ジャーナル 2018年3月12日
​7年間の3月11日に東京電力の福島第一原発で炉心が溶融するという大事故が引き起こされた。原子力発電所の廃炉が簡単でないことは言うまでもないが、まして壊滅的な事故を引き起こした東電の福島第一原発の処分は困難だ。

1号機から3号機までの炉心が溶融したことは確定的で、溶けた燃料棒を含むデブリがどうなっているかは不明。事故当時、稼働していなかったという4号機の場合、使用済み核燃料プールに保管されていた1533本(使用済み1331本と未使用202本)の燃料棒に含まれる放射性物質は広島に落とされた原爆の約1万4000発分に相当、プールが倒壊したり水が抜けたなら現場へ近づけなくなり、福島第一原発の敷地内にある1万1000本以上の燃料棒から放射性物質が放出される事態もありえた。その場合、セシウム137放出量で比較するとアメリカの放射線防護審議会が見積もったチェルノブイリ事故の85倍以上になり、その影響は地球規模に及ぶ。

福島第一原発から環境中へ放出された放射性物質の総量はチェルノブイリ原発事故の1割程度、あるいは約17%だとする話が流されたが、原発の元技術者であるアーニー・ガンダーセンによると、福島のケースでは圧力容器が破損、燃料棒を溶かすほどの高温になっていたわけで、99%の放射性物質を除去するという計算の前提は成り立たない。圧力抑制室(トーラス)の水は沸騰状態で、ほとんどの放射性物質が外へ放出されたはずだと指摘、少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2~5倍の放射性物質を福島第一原発は放出したと推測している。(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)

別の元エンジニアは圧力容器内の温度が急上昇しているので爆発的な勢いで溶けた固形物が気体と一緒にトーラスへ噴出したはずだと指摘、そうなると水が放射性物質を吸収するという前提は崩れる。そもそも格納容器も損傷しているので放射性物質は外へそのまま出ていっただろうとも考えられる。

この事故では炉心が溶融しただけでなく、爆発があった。3月12日には1号機で爆発があり、14日には3号機も爆発している。15日には2号機で「異音」、また4号機の建屋で大きな爆発音があったとされている。12日は水素爆発だと見られているが、3号機のそれは1号機とは異質の強烈なもので、核反応(核暴走)が起こったという見方もある。

こうした爆発が原因で建屋の外で燃料棒の破片が見つかったと報道されているのだが、2011年7月28日に開かれたNRCの会合で、新炉局のゲイリー・ホラハン副局長は、発見された破片が炉心にあった燃料棒のものだと推測している。