2018年3月24日土曜日

玄海原発3号機再稼働 しかし問題は山積不安拭えず

 九州電力玄海原発3号機(佐賀県)、周辺四市の反対をよそに再稼働しましが、原発の30キロ圏内には約20の離島があり、住民は約3万人です。重大事故の際は船やヘリコプターで避難しますが果たして効率の良い避難が可能なのか、もしも悪天候が重なれば孤立する恐れがあります
 その他、玄海原発使用済み核燃料を保管するプールの空きに余裕がなく、・4号機は運転を続けると45年で満杯になる見通しであることや、3号機はMOX燃料を使いますが、使い終わったMOX燃料は有害な放射性物質の量が格段に多く、処分の方法は何も決まっていないなど、深刻な問題が沢山あります。(以上 東京新聞)

 西日本新聞は、避難計画が事故時の風向きを全く考慮しないものになっていることを取り上げました。
 佐賀県消防防災課は、「住民が覚えやすいように、避難経路や避難所は一つが望ましい」放射線濃度を測定。放射性物質を大量に含む放射性プルーム(雲)が通過するのを待ち移動するので、健康への影響はない」といいますが、そんな単純な問題でないことは明らかです。
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玄海原発3号機再稼働 離島避難 不安拭えず
東京新聞 2018年3月24日
民は事故時の避難に不安を抱える。玄海原発は使用済み核燃料の保管場所に余裕がなく、根本的対策がないままの見切り稼働となった。 (宮尾幹成、内田淳二)

◇地元同意拡大を
「住民の不安が拭えない」。三十キロ圏内の長崎県壱岐、平戸の両市議会は二十三日、再稼働反対の決議を全会一致で可決した。八日には圏内の同県松浦市も反対を決議し、佐賀県伊万里市も反対を訴える。
 三十キロ圏内の自治体は避難計画をつくる義務があり、佐賀、長崎、福岡の三県の八市町が対象。一方で、再稼働の前提となる地元同意の対象は、原発が立地する玄海町と佐賀県のみだ。
 東京電力福島第一原発の事故後、同意が必要な「地元」を広げるべきだという声は根強い。日本原子力発電の東海第二原発(茨城県東海村)では、「地元」が三十キロ圏内の水戸市など六市村に広がる動きがある。

◇孤立化の恐れも
 玄海原発の三十キロ圏内には約二十の離島があり、住民は約三万人。本土との橋がない十七島には約一万九千人が暮らす。重大事故の際は船やヘリコプターで避難するが、悪天候が重なれば孤立する恐れがある。
 壱岐市は市役所のある壱岐島南部が三十キロ圏。周辺の小島を含め約一万五千人が住む。計画では島南部の住民は島北部の一時避難施設に逃げる。しかし福島第一原発事故のように、風向きによっては三十キロを超えて放射能汚染が広がる。
 平戸市の平戸島は本土との間に橋があり、車やバスの避難も想定。ただ、市側は「島内の一本道では渋滞が予想される」と懸念する。船による避難も護岸の整備が間に合っていない。

◇4、5年で満杯
 玄海原発自体にも課題がある。使用済み核燃料を保管するプールの空きに余裕がない。3号機は運転を続けると四、五年で満杯になる見通し。五月に再稼働予定の4号機も同じだ。
 使用済み核燃料は本来、青森県六ケ所村の再処理工場に運ばれるが、工場はプールが満杯。再処理稼働の見通しもたっていない。
 九電は、プール内で核燃料の間隔を狭めて、保管量を倍近くに増やすほか、専用容器で空気冷却することを原子力規制委員会に申請する方針。ただ、プールに核燃料を詰め込めば、冷却性能が低下する恐れがある。専用容器に移すには、プールで十五~二十年冷やさないといけない

 また、3号機は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを再利用する混合酸化物(MOX)燃料を使う。使い終わったMOX燃料は有害な放射性物質の量が格段に多く、処分の方法は何も決まっていない


玄海原発避難計画、風を軽視 放射性物質は北へ南へ 経路は一方向、
再稼働で住民に不安
西日本新聞 2018年3月24日
 賛否が渦巻く中、6年余り全基停止していた九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)が23日、再稼働した。福島第1原発事故を教訓に、原発の安全対策工事が進められてきたが、問題は事故時の避難計画の実効性だ。放射性物質を運ぶであろう風向きが南へ、北へと変わっても、自治体が定めた避難路は原則、一方向と定められている。住民からは不安の声が漏れている。

 玄界灘に浮かぶ同県唐津市の馬渡島(まだらしま)。人口約350人の島は原発の北西約8キロにあり、対岸に原発が見える。「再稼働するからには、避難も万全でないと」。区長の牧山隆雄さん(71)がくぎを刺す。
 市の避難計画では、事故時、住民は県や市が準備する船舶などで本土の唐津港に向かい、車で県南部に逃げる。海上では原発を右に眺め、一時的に近づくようなルートだ。
 2月中旬に吹いた春一番は南西寄り。今後、夏にかけて南風が多くなる。「唐津港ではなく、遠回りして博多港に逃げればいいのに」と牧山さん。さらに言えば、南風が吹いている場合、逆方向の長崎方面に避難した方が合理的に見える。

 市によると、県外避難も検討したが、船に乗り続ける負担や被ばく検査の態勢を踏まえ、「最善」と判断したという。
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 では、北寄りの風が吹くと-。大部分が30キロ圏に位置する佐賀県伊万里市。避難計画では、住民は自家用車などで武雄市や鹿島市など県内3市2町に逃げる。
 「わざわざ、原発から吹く風の方向に向かうことになる」。伊万里市山代町区長会の吉崎弘会長(74)は懸念を訴える。避難所となる武雄市の学校は、玄海町の南東方向。原発からは北寄りの風にさらされる位置だ。

 実際、2011年11月の原子力防災訓練で、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」が予測した放射性物質の拡散先が、多くの避難所と重なっていた
 「事故はいつ起きるか分からず、風向きも変わる。もっと柔軟に避難できれば…」。吉崎さんは漏らす。
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 唐津市や伊万里市と同様に、福岡県や長崎県の自治体も避難計画に風向きを反映していない。なぜか。

 「住民が覚えやすいように、避難経路や避難所は一つが望ましい」と佐賀県消防防災課は説明する。避難時には放射線監視装置「モニタリングポスト」を用いて、放射線濃度を測定。放射性物質を大量に含む放射性プルーム(雲)が通過するのを待ち、移動する。放射線濃度が低い状況で逃げるので「健康への影響はない」という。
 ただ、関西電力美浜原発などが立地する福井県は、風向きや道路事情に応じた二つの避難ルートを設定している。

 災害リスクに詳しい広瀬弘忠東京女子大名誉教授は「モニタリングポストを満遍なく設置しているわけでなく、局地的に濃度が上がるホットスポットもある。測定値が出るころには、すでに被ばくしている危険性が高い。気象条件を考慮しない避難計画は楽観的だ」と疑問を呈した。