栃木県北部には福島県内と同様の放射能汚染がありますが、福島県外ということで国から受ける支援はあまりありません。
那須塩原、那須、大田原の三市町は、住民有志による「栃木県北ADRを考える会」を結成し、弁護士による説明会を6月以降これまで7回開きました。
参加者は合わせて300人以上にのぼり、原発ADRへの申し立てを目指す住民運動が、いま栃木県北部で静かに広がっています。
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住民運動の輪 原発ADR (栃木)県北部ジワリ
東京新聞 2014年8月31日
東京電力福島第一原発事故の損害賠償を求める裁判外紛争解決手続き(原発ADR)への申し立てを目指す住民運動が、(栃木)県北部で静かに広がっている。6月に始まった計7回の説明会には300人以上が参加。県北部には福島県内と同様の放射能汚染があるが、国の支援内容に差があり、その状況に一石を投じる手段としても注目されている。(大野暢子)
説明会を催しているのは、那須塩原、那須、大田原の三市町の住民有志「栃木県北ADRを考える会」。一部の幼稚園も協力しており、保護者向けの説明会を開くなどしている。
説明会には毎回、原告団の弁護士が出席し、制度の仕組みやスケジュールを解説。三十日、那須塩原市の黒磯公民館で開かれた説明会では、親子連れら約三十人が粟谷(あわや)しのぶ弁護団長の話に聞き入った。
質疑では、参加者が「賠償が認められれば、住民の健康に影響が出た際、国に事故との因果関係を認めさせられるのか」と質問。粟谷団長は「住民に共通する被害を認めさせるのがADRの目的なので、そうはならない」と応じた上で「ただ、こうした地道な動きが国を変えていくことにつながるはずだ」と語りかけた。
説明会後、那須塩原市の主婦(37)は「事故後の子育ては不安の連続で、安全な食料を探すのも苦労した。県境で支援に差があるのは不公平だと思った」と感想を話し、参加に前向きな姿勢を見せた。
長女(6つ)と生後間もない長男がいる大田原市の会社員男性(34)は参加を決め、「自宅の雨どいを除染したが、線量が下がらず不安だ。この土地で生きていく子どもたちのために、今できることをしたい」と語った。
「栃木県北ADRを考える会」は九月中にも、希望者に申込用紙の配布を始め、応募を受け付ける。十月には那須塩原、大田原両市の公民館にも用紙を置く予定。希望者を集約し、年度内にも申し立てる。問い合わせは同会=電090(7013)0330=へ。
<原発ADR> 原子力損害賠償紛争解決センターを通じ、東京電力と被災者が和解協議をする制度。県北部では那須塩原、那須、大田原の3市町で事故当時暮らしていた大人に12万円、子ども・妊婦に各52万円の賠償を求めていく。
福島県では、健康調査や表土除去が国費で実施されているが、栃木県は対象外。県北部で申し立てを準備する住民はこの差を不服とし、賠償額を福島市などの自主的避難等対象区域と同水準にした。