2014年9月28日日曜日

柏崎刈羽原発 安全審査長期化か

読売新聞 2014年9月27日
 東京電力が柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の再稼働に向けた安全審査を国に申請してから、27日で1年を迎える。原子力規制委員会は今夏から同原発の審査を本格的に再開したが、鍵を握る「フィルター付き排気(ベント)設備」に疑問を呈しており、(新潟)県内からは審査が長期化するとの見方が出ている。(石橋正洋)
 
■再開直後に「宿題」
 「(現状では審査で)不適合になる」。8月26日の規制委の審査会合で、山形浩史・安全規制管理官は東電側の同設備の計画をこう突き放した。
 原発の新規制基準は、柏崎刈羽原発のような沸騰水型の原子炉に対し、放射性物質の放出を抑える同設備の設置を義務づけている。同原発では頑丈な原子炉建屋の外に造られており、四方は遮蔽壁で囲まれているが、屋根がない。規制委側は、航空機の衝突などで機能喪失する恐れがあるとして、代替となり得る「同等の設備」を別途示すよう“宿題”を課した。
 優先的に進められた九州電力川内原発が、事実上審査に「合格」したことで、7月から審査が半年ぶりに再開したばかりだっただけに、東電の出ばなをくじく格好となった。
 
■「地下式」巡る攻防
 規制委側の念頭にあるのは、別に造る予定で、現在は審査対象となっていない地下式のベント設備だ。地下にあれば、機能喪失の恐れも減少する。同日の会合後、山形管理官は「地下式設備があるなら、こんな議論はいらない」と述べ、要求する「同等の設備」に地下式設備が含まれることを示唆した。
 東電も昨年9月、地下式設備の増設を泉田知事に約束し、申請の承認を取り付けた経緯がある。ただ、完成までには約3年かかるとの当初の見通しがある上、立地自治体との安全協定に基づいて県と柏崎市の事前了解を得る必要もある。知事も、「設計図ができていなければ当然審査できない」と、東電側をけん制する。
 地下式設備が審査対象となれば再稼働は更に遠のくだけに、東電としてはあくまでも安全のために自主的に設置するものとして、当面は地上式設備だけでの審査合格を目指す方針だ。
 
■沸騰水型に義務づけ
 約1年で審査を終えた川内原発は加圧水型で同設備の設置が猶予されていた。それだけに、新設の同設備が不可欠な沸騰水型は審査で更に時間がかかるとの見方は強い。
 柏崎刈羽原発については、3月から始まった断層調査についても、当初予定していた最長6か月間を超え、10月以降にずれ込む見通しとなっている。
 原発については、自民党県連が7月、安全審査終了後に順次再稼働するよう求める決議をするなど、再稼働に向けた機運も醸成されつつあるが、ある同党県議は、「規制委に作業を早めようとする姿勢は見られないし、まだまだ時間はかかるだろう」とあきらめ顔だ。