2014年9月29日月曜日

宇大で福島現状報告会|貯蔵施設補償総額は事故前の8割|仮置き延長 住民は固定化を懸念

 「原発いらない栃木の会」による福島視察報告会が27日、宇都宮大で開かれ、ボランティア臨床心理士や、福島原発に近い避難指示区域を訪れた会員が福島の実態を報告しました。「世間は忘れているが、避難者の実態は限界を超えている」ことが強調されました
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 政府は大熊、双葉両町での中間貯蔵施設用地買い取り額について、事故前の価格の5割程度で調整していることが分かりました。地権者に対する県の財政支援を含めても土地の補償総額は事故前の8割程度にとどまる見通しです自由意志に基かない土地の買取価格が、事故前の価格よりも下がるのは理解できません。
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 環境省は27日、除染廃棄物の仮置き場での保管期限を当初の3年から延長する方針です。地権者からは固定化を懸念し「約束が違う」との批判や「周辺住民の了承もしっかりと得るべきだ」といった意見が出されました。楢葉町には国の仮置き場が24カ所あり、最も早い3カ所では15年8月に契約が切れます
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宇大で福島現状報告会 仮設の避難者「限界」 栃木県市民団体
下野新聞 2014年9月28日
 脱原発などを訴える市民団体「原発いらない栃木の会」による福島視察報告会が27日、宇都宮市峰町の宇都宮大で開かれ、福島県南相馬市にボランティアとして通う臨床心理士や、東京電力福島第1原発に近い避難指示区域を訪れた会員が福島の実態を報告した。
 
 千葉県市川市在住で毎週末、避難者の心の相談のために南相馬市の仮設住宅に足を運ぶ臨床心理士相馬勉さん(59)が現状を説明。住民の自殺や孤独死が相次いでいるといい、1人暮らしの避難者のケアを喫緊の課題に挙げた。
 80歳の女性からは涙ながらに「外へ出て人と顔を合わせるのも嫌なんです」と悲痛な訴えを聞いた。長引く仮設住宅暮らしにより、高齢者の引きこもりも始まっているという。「世間は忘れているが、避難者は限界を超えている。将来への絶望感が言い尽くせないほど重い」と強調した。
 
 会員は8月上旬に9人で福島県を訪れた様子を映像と写真で紹介。飯舘村では道沿いに除染廃棄物の袋が山積みとなり、周辺では空間放射線量率が毎時6マイクロシーベルト超を記録した。浪江町の新聞販売店内では、2011年3月12日付の朝刊が大量に放置されていた。
 同会の共同代表を務める大木一俊弁護士は「現地を訪れて衝撃を受けた。まだまだ知らない被害の実態があり、被災者にふさわしい救援の手が届いていないのではないか」と述べた。
 
 
補償総額は事故前の8割 中間貯蔵、国の買い取り5割
福島民友ニュース 2014年9月28日
 県内で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設をめぐり、政府は大熊、双葉両町での用地買い取り額について、事故前の価格の5割程度で調整していることが27日、分かった。地権者に対する県の財政支援を含めても土地の補償総額は事故前の8割程度にとどまる見通し。政府が29日から開く地権者説明会で買い取り額のモデル事例などを示し、理解を得たい考え。
 県の財政支援は地権者の生活再建などに向け、事故前の土地の市場価格と買収額の差額を実質的に補てんするため総額150億円で行う。しかし政府の買い取り額が5割程度の場合、県の支援を含めても事故前の価格水準までの補てんは難しい見通し。
 用地買収について政府は、公共事業の基準により売却を合意した時点の市場価格を基に行う方針。しかし用地は全域が帰還困難区域で住民帰還の見通しが立たず、不動産取引も当面行われる見通しがない。
 このため政府は5~10年後の避難指示解除後に使用を見込める土地として価格を算定する。ただ現状は利用できない土地の評価となるため、将来の利用価値を上乗せしても買い取り価格の大幅な減額は避けられない状況だ。
 
 
「約束違う」 仮置き延長固定化を懸念・楢葉
 河北新報 2014年9月28日 
 環境省は27日、福島第1原発事故に伴う除染廃棄物の仮置き場での保管期限を当初の3年から延長する方針について、福島県楢葉町の仮置き場地権者に説明した。地権者からは固定化を懸念し「約束が違う」との批判や「周辺住民の了承もしっかりと得るべきだ」といった意見が出た。
 いわき市での説明会には地権者182人のうち約40人が参加。環境省の担当者が、中間貯蔵施設の計画の遅れを理由に、2015年度内に3年契約が切れる場所では15年4月1日付で新たに1年契約を結び、必要に応じ更新したいと要請した。
 今後の追加除染や家屋解体で出る廃棄物については、仮置き場のある行政区以外からも搬入するとの新たな方針も明らかにした。
 参加者から強い反対はなかったが、「約束を破った責任は誰が取るのか」「いつまで契約を更新し続けるのか」「国が近隣住民の同意を得ない限り、契約しない」などの意見が出た。「仮置き場を見ると胸が苦しくなり、帰町できない」「本音は嫌だが、現状では認めざるを得ない」と苦しい胸の内を明かす人もいた。
 地権者の男性(48)は「中間貯蔵施設で(候補地の)大熊、双葉両町の人が苦渋の決断を迫られている。複雑な気持ちだが、前向きに考えなければならない。ただし、何度も延長して固定化はさせない」と話した。
 楢葉町には国の仮置き場が24カ所あり、最も早い3カ所では15年8月に契約が切れる。環境省は10月4~6日に一般町民向けの説明会を開く。