これまで電力7社が震災後に電気料の値上げを実施しており、一部では原発の停止が原因であるかのように喧伝されています。しかし勿論そうではありません。
東電の家庭用モデル料金で見ると、震災が発生した2011年3月分は6251円だったのに対して2014年9月分は8477円と2226円も、率にすると35.6%も増加しています。
その内訳は、太陽光発電促進付加金が14円、再生可能エネルギー発電促進賦課金が359円、2014年5月分の消費税率引き上げで230円、それに1407円が「燃料費調整」制度による値上がりです。
この「燃料費調整」とは、火力発電の燃料である原油や液化天然ガス(LNG)、石炭の価格変動分で、これが震災前に比べて68%も上昇しています。これはドルベースで原油価格が33%上昇し、それに連動してLNG価格も50%上昇したのに加えて、急激な円安が起きたためで、原発の停止とは関係のないことです。
東洋経済オンラインの記事を紹介します。
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原発停止だけじゃない、電気料金上昇の真相
震災前に比べて4割近くも値上がり
中村 稔 東洋経済 2014年09月22日
(編集局記者)
これまで東電を含め7社が震災後に改定値上げを実施。北海道電力は再値上げを申請した
東日本大震災以降、電気料金の上昇が目立っている。原子力発電所の停止による影響が大きいと見る向きが多いが、実際はどうか。
東京電力の家庭用モデル料金で見ると、震災が発生した2011年3月分は6251円だった。それが2014年9月分は8477円まで上昇している。上昇幅は2226円、率にすると35.6%増だ。
内訳は、口座振り替え割引額の増加が1.5円の値下げ要因となった一方、2011年4月から導入された太陽光発電促進付加金で14円、2012年8月導入の再生可能エネルギー発電促進賦課金で217円、同年9月の料金改定で359円、2014年5月分からの消費税率引き上げの影響で230円の上昇となった。それ以外の1407円が燃料費調整制度(燃調)を通じた値上がりだ。
燃調とは何か
燃調とは、火力発電の燃料である原油や液化天然ガス(LNG)、石炭の価格変動を毎月自動的に電気料金へ反映する制度。2011年3月分の料金に反映された平均燃料価格(貿易統計実績)は1キロリットル当たり3万2800円だったが、2014年9月には5万5100円と68%も上昇している。
これは、ドルベースで原油価格が33%上昇し、それに連動してLNG価格も50%上昇した影響が大きい。加えて、為替が1ドル=83円から102円へ大きく円安に振れた影響も甚大だ。LNG高の一部は日本の原発停止に伴う需要増大の影響も考えられるが、原油高や円安は原発停止とは基本的に関係ない。
原発停止との関係が深いのは、料金改定値上げだ。東電の場合、原発の発電収入がなくなった反面、原発の代替となる火力発電の燃料費が大幅に増加。燃料単価の上昇は燃調で料金へ反映されるが、使用量の増加による燃料費増大は料金に反映されない。
燃料費は原価全体の4割強を占めるだけに業績は急悪化。そのため、人件費削減など合理化を前提に値上げを政府に申請し、平均8.46%(モデル家庭は5.1%)の値上げが認められた。
料金改定の影響は小
ただ、震災後の値上げ幅のうち、料金改定による影響は2割にも満たない。値上げ要因の大半は燃調を通じた燃料単価高、円安といえる。
東電は料金改定による来年以降の再値上げの可能性も示唆している。前回の値上げ時に、今年7月からの柏崎刈羽原発の再稼働を前提に置いていたが、今もそのメドが立たないためだ。現在、合理化の加速による値上げ回避を模索しているが、なお不透明だ。
今後の見通しについて、富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は、「燃料価格上昇や増税、再エネの賦課金増加などが値上がり要因となる反面、(2016年度からの)電力小売り完全自由化による競争が値下がり要因となりうる」と語る。
すでにエネットなどの新電力会社は、大手より割安な企業向け料金でシェアを拡大している。家庭分野が自由化されて競争がさらに激化すれば、大手電力への値下げ圧力も高まる可能性がある。
(「週刊東洋経済」2014年9月20日号<9月15日発売>掲載の「価格を読む」を転載)