2014年9月4日木曜日

なぜそこまでして原発を支援するのか

 18年~20年に電気料金が完全に自由化された場合に、原発の発電コストが一般の発電コストを上回る分を、電気料金や税金で補填する制度を経産省が検討しています。それによって数十年来(政府と)原子力ムラが主張してきた「原発の発電コストは安い」という主張が虚偽であることが、白日のもとに晒されました。
 
 しかしことここに至っても、経産省は恥も外聞もなく、何が何でも原発を推進する姿勢を見せています。
 そんな不合理な政策が容認されるべきなのかは別にして、この問題を通して彼らの本性が暴露されたこと自体は大いに多とすべきものと思われます。
 
 いまや原発の唯一の利点は「発電段階で炭酸ガスを出さない」ということになりますが、そもそも炭酸ガスが地球温暖化の原因であるかどうかは、科学的テーマとしてまだ十分に解明されていません。
 また地球が、日本のように局部的に熱帯化していることは認められるものの、全地球規模で温暖化しているかどうかについては、むしろデータ的に見ると否定されます(武田邦彦氏)。
 
 それより何より、核燃料が掘削されてから燃料に精製される(一方劣化ウランは処分される)までの工程と、使用済み核燃料を数百年から数万年に渡って安全に管理する段階で、膨大なエネルギー(=炭酸ガスの発生)必要とするので、「原発は炭酸ガスの発生量が低い」という主張は成り立ちません。
 
 一つだけ明らかに言えるのは、効率面からいって原発がもっとも海水を温める原因になっているということです。
 
 政府の原発優遇を批判する2つの社説を紹介します。
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【社説】政府の原発支援 なぜ、負担強いてまで
東京新聞 2014年9月3日
 国民の多くは、原発依存から抜け出したいと願っている。福島の事故が身に染みているからだ。その国民に経済の負担を強いてまで国は原発を持ち続けていたいらしい。なぜ、そうまでするの
 語るに落ちたと言うべきか。あからさまな“原発えこひいき”の試みが、ひっそりと進んでいるようだ。
 
 二〇一六年に家庭向け電力事業が自由化され、既存の大手電力会社以外の参入が進むとともに、消費者が売り手を選べるようになり、これまで政府と電力会社が独占的に決めてきた、電気料金の値下がりが期待されている。
 ところが政府は、原発だけを特別扱いにして、維持、さらに新増設を支援する姿勢を打ち出した。
 原発の建設から廃炉、使用済み燃料の処分にかかる費用を計算し、基準になる電気の値段を、これまで通り政府と電力会社で決める。そして市場価格が基準価格を下回った場合には、全消費者の電気料金に、その差額分を上乗せするという。
 原発を動かす大手電力会社に損はない。国民の負担で穴を埋めてあげようというのである。
 自由化とは名ばかり、実際の電気料金は原発の都合で決まってしまうのだ。
 
 経済産業省の有識者会議でひっそりと話し合われるこの案は、多くの示唆を与えてくれる。
 例えば、これまで「安い電源」とされてきた原発が、自由競争に耐えられないほど高くつき、地域独占市場の中でなければ原発事業は成り立たないのを、国も認めているということだ。
 その上、事故が起きれば、補償は天文学的な額になる。福島の事故に見るとおり、一事業者に賄いきれるものではない。原発は経済的には成り立たない。
 差額の穴埋めで原発を維持するやり方は、英国にならうものだという。英国は温室効果ガスを抑えるために、発電段階では二酸化炭素(CO2)などを出さない原発を使い続ける方針だ。
 温暖化も危険だが、原発事故はそれ以上に恐ろしい。私たちは、そのことを知っている。原発維持を温暖化対策の口実にすべきではない。
 大手電力事業者も、これ以上原発を動かすリスクを負うことを、本当は望んではいないのではないか。国民に二重三重の負担を強い、福島の被災者の心を踏みにじってまで、なぜ政府は原発を持ち続けたいのだろうか。
 
 
社説 あまりに露骨な原発優遇策と言わざるを得ない。 
北海道新聞 2014年8月23日
 経済産業省は総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会で、原発で発電した電気に一定の価格を保証する新制度案を示した。 
 2016年に予定される電力小売りの全面自由化で、競争によって電気料金が下がった場合、電力会社は原発への巨額投資が回収できなくなるかもしれない。 
 だから、原発を維持、新増設できるように利益が確実に出る価格を設定するというのである。 
 政府は、必要なコストをすべて電気料金に上乗せする「総括原価方式」を将来廃止する方針だが、原発だけを例外扱いすることになる。さらに、原発建設の融資に債務保証も検討するという。 
 これでは電力自由化の意義は失われる。国民的合意もないまま、かさ上げされた電気料金と税金で原発を支える仕組みを導入することは断じて許されない。 
 政府と電力会社は「原発は安い電源」と主張して推進してきたが、福島第1原発事故後の検証で、コスト面の優位性は揺らいだ。 
 重大事故の賠償や処理、安全対策の強化などにかかる費用が膨らみ、電力各社は、自由化が進展した場合、原発の運営に支障をきたすと訴えている。 
 こうした声に応じて、経産省が価格保証を提案したことは、政府自ら、原発は安価ではなく公的支援抜きでは成り立たないことを認めたに等しい。 
 英国に類似の制度があるが、これは原発の新増設を目的としている。政府が新増設への態度をあいまいにしたまま、その環境を整備するようなやり方は不誠実だ。 
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を引き合いに出す議論もおかしい。 
 FITは再生可能エネルギーを主要電源に育てるため、新規事業者の参入を促す制度である。 
 これを電力大手の巨大電源にあてはめるのは筋違いだ。 
 政府は、民主党政権が国民的議論を経て掲げた「原発ゼロ目標」を覆し、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けるエネルギー基本計画を決定した。 
 一方で、基本計画には「原発依存度を可能な限り低減する」と明記されている。その道筋を示さず、原発優遇策まで打ち出すのは、民意軽視も甚だしい。 
 政府が国民に新たな負担を求めると言うのであれば、原発政策の是非について、正々堂々と国民的な議論にかけるべきだ。