福島県などから福岡、佐賀、熊本、鹿児島の4県へ避難している10世帯31人が9日、国と東電に1人あたり550万円の損害賠償を求め、福岡地裁に提訴しました。原発事故の避難者による集団提訴は九州では初めてということです。
この記事で佐賀新聞は、「インターネットで『避難するのは風評被害。不安をあおるな』、『福島で生活する人が気の毒』などの避難者バッシングや『福島の農産物を食べて応援しよう』といった復興ムードが、避難者の口をつぐませ孤立させてしまう」、と記述していますが、そうした心ないバッシングや間違った考え方が、避難者に対する圧力になっているという現実を改めて知らされます。
発言の自由が保障されているインターネットの中では、どうしてもそうした一部の意見も表明されますが、それは基本的には政権への応援団の発言と見るべきです。
そんな雑音には惑わされないようにしていただきたいものです。
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避難者置き去りに憤り 原発事故九州訴訟
佐賀新聞 2014年09月10日
東京電力福島第1原発事故で九州に避難してきた人たちが9日、国と東電に損害賠償を求め提訴に踏み切った。鳥栖市に逃れてきた牧師金本友孝さん(53)も原告に名を連ねた。放射能による死の恐怖から、一家5人の生活基盤を奪われて3年半。今なお不自由な生活を強いられる避難者を置き去りにしたまま、事故を「終わったこと」にして、原発再稼働へと突き進む現状に憤りを感じている。
金本さんは福島第1原発から40キロ離れた福島県いわき市から自主避難。小学生から高校生までの子ども3人を連れ、妻の実家がある福岡県内に身を寄せた。福島に仕事はなく、健康被害の不安もぬぐえないことから、自宅に戻ることを断念。教会の仕事を得て昨年3月、鳥栖市に移り住んだ。
事故から1年半後、避難のため2カ月間途絶えた収入の賠償を東電側に照会すると、回答は「2万円払う」。あまりに低い評価にあぜんとした。「加害者側が一方的に金額を決めて被害者は泣き寝入り。苦しい避難生活の中で、その責任を追及する余裕もない」。避難者が置かれた、そんな現実を何とかしたかった。
東日本大震災に伴う佐賀県内への避難者は70世帯174人(8月18日現在)とピーク時のほぼ3分の1。時間の経過とともに、世論の関心も遠ざかっていく。それと呼応するように、「避難者への風当たりが強くなるのを感じる」という。
インターネットでは「避難するのは風評被害。不安をあおるな」「福島で生活する人が気の毒」など避難者バッシングが起き、避難者同士の会話の端々にも後ろめたさがにじむ。「福島の農産物を食べて応援しよう」といった復興ムードは一方で避難者の口をつぐませ、孤立させてしまう。
今回の訴訟でも、原告として表に出ることをためらった人たちがいる。そんな避難者の痛みをよそに、原発再稼働は現実味を増す。「まだ3年半しかたたないのに事故を忘れかけている。声を上げられない避難者のためにも、東電と国の責任を明らかにしなければ」。金本さんは強く誓った。
原発避難者、東電と国を集団提訴 九州では初めて
朝日新聞2014年9月9日
東京電力福島第一原発事故で精神的苦痛や経済的な損害を受けたとして、福島県などから福岡、佐賀、熊本、鹿児島の4県へ避難している10世帯31人が9日、国と東電に1人あたり550万円の損害賠償を求め、福岡地裁に提訴した。請求総額は約1億7千万円。原告弁護団によると、原発事故の避難者による集団提訴は九州では初めてという。
31人は、福島県いわき市、郡山市からの4世帯14人▽宮城県亘理町からの1世帯3人▽茨城、千葉、埼玉県、東京都からの5世帯14人。いずれも自主避難してきたが、「避難指示区域外のため、被害は変わらないのに賠償が十分されていない」と主張。原発事故の責任を明らかにし、すべての被害者が等しく被害回復できるよう求めている。
原告らは3月、国と東電に1人あたり1千万円の損害賠償を求めて催告書を送ったが、「納得のいく回答が得られなかった」として提訴に踏み切った。吉村敏幸弁護団長は「原発事故から逃れてきた人たちは苦しい生活を強いられている。救済されるよう、一緒に闘いたい」と語った。
弁護団によると、国と東電を相手取った同種の訴訟は全国17地裁で争われており、原告数は約2300世帯の約7千人(今年6月現在)。