2014年9月19日金曜日

大洗の高温ガス炉が再開へ

 原子力機構は、今度は新型原子炉である高温ガス炉高温工学試験研究炉HTTR)の研究の再開原子力規制委員会に申請する見通しだということです。
 
 既存の原発が原子炉によって過熱蒸気を発生させてタービンを回すのに対して、高温ガス炉はヘリウムガスを1000℃程度に加熱してそれでガスタービンを回して発電するものです。
 研究炉は1991年に茨城県大洗町に建設され1998年には臨界に達しましたが、2011年の福島原発事故で中断して現在に至っているものです。
 
 発電コストは現在の原発の2/3に収まり、装置停止時等に核分裂の暴走も起きず、「安全性、経済性に優れている」というのが、この高温ガス炉発電のうたい文句になっています。
 しかし「安くて安全」というのはもともと原発推進の合言葉でしたし、高速増殖炉「もんじゅ」に至ってはエネルギーを無限に生み出せる「夢の装置」とまで呼ばれました。
 その「もんじゅ」には延べ1兆円以上の資金が投じられたにもかかわらず何十年経っても完成せずに、停止中のいまも維持するだけで日額6,500万円を要するという、これ以上はない金食い虫になり下がっています。しかも事故が起きれば手がつけられないという「危険」のカタマリです。
 
 それでは高温ガス炉技術的な見通しはあるのでしょうか。計画によれば、これまで20年間取り組んできたにもかかわらず、研究が完成するのは2030年代の予定ということです。
 スタートしてから完成するまでに40年掛かるというわけです。まさに「もんじゅ」の二の舞、「見通しはない」というのが正確なところでしょう。
 それに2020年代にはウランが枯渇に向かい核燃料が暴騰するという、イギリスのシンクタンクの予想もあります。
 こんな計画は認められるべきではありません。
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「原発依存低減」に逆行 大洗の高温ガス炉、再開へ
東京新聞 2014年9月18日
 政府は十八日、東京電力福島第一原発事故の影響で運転を中止している新型原子炉の一つの高温ガス炉「高温工学試験研究炉」(HTTR、茨城県大洗町)について、運営主体の日本原子力研究開発機構(原子力機構)が十一月に、新規制基準に基づく研究再開のための審査を原子力規制委員会に申請する見通しだと明らかにした。世耕弘成官房副長官が十八日午前の記者会見で述べた。安倍政権は原発依存度をできるだけ下げる方針を掲げるが、逆行する動きとなった。
 
 世耕氏は、高温ガス炉について「安全性、経済性に優れているとされ、早期の運転再開が必要だと認識している」と述べた。政府が四月に閣議決定したエネルギー基本計画は「原発への依存度を可能な限り引き下げる」とする一方、高温ガス炉の研究開発を推進するとも明記している。
 
 世耕氏は、HTTRの運転再開や安全性の実証試験のため、文部科学省が来年度政府予算で十六億円を概算要求していると説明した。HTTRは一九九一年に着工し、九八年に核分裂反応が持続して起こる「臨界」を達成した。しかし、二〇一一年三月の震災を受け、運転を停止したままになっている。
 
 エネルギー基本計画に高温ガス炉の研究開発を推進する方針が盛り込まれたことに対しては、自民党内からも「将来の新増設につながり、原発に依存しない経済・社会の実現との公約に反する」などの批判が出ていた。実用化が疑問視されている高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が稼働しない中の高温ガス炉の推進については、自民党内に「トラブル続きのもんじゅに代わる予算確保が明らかだ」との指摘もある。
 
 <高温ガス炉> 現在の原発は炉内に水を循環させて燃料を冷やすのに対し、ヘリウムガスを循環させて燃料を冷やし、熱を取り出して発電する原子炉。現在の原発で発生する水蒸気の温度は約300度だが、ヘリウムガスは約1000度の高温になる。このため高い効率でタービンを回して発電できるとされる。原子炉で水素爆発が起こりにくい一方、扱う温度が高いので材料の耐久性など技術的に難しい点も多い。