福島大学災害心理研が実施している福島県内で暮らす小学生、幼稚園児、保護者に与えた福島原発事故の心理的影響調査の結果が公表されました。
今回の調査は平成23年、24年、25年に続き4回目で、1月に実施され、2854人から回答を得ました。
グラフ①は、母親の放射線への不安、母親のストレス、子どものストレスをそれぞれ数値化(小さい方が不安・ストレスが小さい)して示したもので、相対的には年々減少してはいるもののいわゆる正常値との差異は不明です。
数値的な減少は、不安耐性やストレス耐性が強化されたことの反映、またはそこに留まらざるを得ない以上、極力感じないようにしようと努力したことの反映と思われます。
グラフ②は 子どもに外遊びをさせるか(左上)、洗濯物を外で干すか(左下)、子どもが飲むものを気にするか(右上)、食品の産地を気にするか(右下)、を聞いたものです。
「子どもに外遊び」や「洗濯物を外で干す」は経年的に緩和されてはいますが、事故前と比較すれば放射能不安は何ら解決されていません。
飲み物や食品に対する不安は、事故時と殆ど変わっていないと考えられ、これはこの先も減少しないのではないでしょうか。
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母子ストレスさらに低減 原発事故受け福大調べ
福島民報 2014年9月12日
東京電力福島第一原発事故を受け、福島市の福島大災害心理研究所の筒井雄二所長(共生システム理工学類教授)が実施している県内で暮らす小学生、幼稚園児、保護者に与えた心理的影響調査で、母親の放射線への不安とストレス、子どものストレスは過去3回の調査結果と比べて低減した。筒井所長が10日、同大で記者会見し発表した。
調査は1月に実施した。福島市内の小学校8校、幼稚園8園の児童・園児と保護者合わせて4706人に質問用紙を配布し、60・6%の2854人から回答を得た。平成23年、24年、25年に続き4回目で、不安やストレスの要素が高いほど数値が大きくなるように点数化し平均点を比較した。各年の調査結果は【グラフ(1)】の通り。
このうち、母親の放射線への不安に対する主な質問は【グラフ(2)】で、「お子さんに外遊びをさせるか」の質問では、23年には「させない」が66・7%だったのが4・3%にまで減少した。
母親のストレスについては、「疲れ」「睡眠」「イライラ」などの8項目を聞いた。子どものストレスでは、「かんしゃくを起こす」「集中できない」など19項目を質問した。
筒井所長は「時間の経過とともに不安やストレスは確実に減少している」と分析する一方、秋田、福井、兵庫の各県で実施した調査と比較すると県内の数値が高いことを挙げ「長期にわたる不安やストレスが、今後どのような影響を与えていくか注視していく必要がある」としている。
筒井所長は11日、京都市の同志社大で開かれる日本心理学会の大会シンポジウムで、今回の調査結果を踏まえ、原子力災害の心理的問題の現状と今後について発表する。
■子どものメンタルヘルス支援事業を継続、強化へ 福島大
震災と原発事故による避難生活が長期化し、子どもの発達障害や非行、虐待などの問題が増えているとして、福島大は、4月から始めた子どものメンタルヘルス支援事業を継続、強化する。同大子どものメンタルヘルス支援事業推進室の生島浩副室長が10日、福島大で記者会見し、事業の中間報告を行った。
被災・避難地を中心に小、中、高校に児童精神科医や臨床心理などの専門員を派遣している。これまでに、心の教育プログラムを24校、巡回相談事業を31校でそれぞれ実施した。
今後も、県内の関係機関と連携して支援事業を進める。
グラフのタイトル
(左上) お子さまに外遊びはさせますか?
(左下) 洗濯物は外で干していますか?
(右上) お子さまの口にする飲み物(水など)を気にしますか?
(右下) 食品を購入する際、産地を気にするようになりましたか?