福島原発事故4年目に当たり、時事通信が福島原発の現況を伝える3つの電子版記事を載せました。
以下に紹介します。
記事のタイトルは下記のとおりです。
燃料取り出し遅れも=3号機、線量依然高く-福島第1・東日本大震災4年
汚染水対策、新たな段階=タンク保管分は処理増-福島第1・東日本大震災4年
変わる姿、遠い廃炉=汚染水対策に追われ-苦闘続く福島第1・東日本大震災4年
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燃料取り出し遅れも=3号機、線量依然高く
-福島第1・東日本大震災4年
時事通信 2015年3月8日
史上最悪レベルの原子力事故から4年を迎える東京電力福島第1原発では、依然として困難な状況下で作業が続けられている。2015年度の主要目標の一つは、3号機使用済み燃料プールからの燃料取り出し開始だが、プールにはがれきが多く残り、放射線量も高いため遅れが懸念される。
東電によると、3号機原子炉建屋のプールには使用済み燃料が514体、未使用燃料が52体の計566体が保管されている。原子力規制委員会の更田豊志委員長代理は「3、4号機プールの燃料取り出しが完了すれば、福島第1のリスクは大きく下がる」と強調する。
だが、作業は工程通り進んでいるとは言い難い。3号機は1~4号機で最も建屋の損傷が激しく、プールには多くのがれきが沈む。中には重さ約35トンの燃料交換機もあり、大きな障害となっている。東電は3月中の交換機撤去を予定していたが、4月以降にずれ込むという。
加えて、放射線量も思うように下がらない。3号機原子炉建屋は線量がもともと高く、毎時100ミリシーベルトを超える所が多かった。昨年10月から最上階の除染が行われていたが、低下幅は緩やか。同60ミリシーベルトと高い場所も残る。
目標の同1ミリシーベルトは遠く、東電は放射線を遮る板を設置したり、追加で除染したりすることで一層の低減を目指す。その後、燃料取り出し用のクレーンを設置する予定だが、線量が十分下がらなければ、さらに対策が必要となる。
昨年12月に燃料取り出しが完了した4号機は、作業員が現場で目視しながら機器を操作した。線量が高い3号機では同じようにできず、取り出しにはより高い技術が求められる。
汚染水対策、新たな段階=タンク保管分は処理増
-福島第1・東日本大震災4年
時事通信 2015年3月8日
東京電力福島第1原発で、事故直後から大きな問題となってきた放射能汚染水。東電は浄化装置を増強したが、目標としていた3月末までの処理完了は果たせなかった。ただ、タンクに保管されている高濃度汚染水の処理量は増えており、対策は新たな段階を迎えつつある。
東電は昨秋から、汚染水の放射性物質を大幅に減らす装置「ALPS」(アルプス)を増強。稼働率は想定より低いが、平均処理量は以前の2倍以上に増えた。
一時は36万トン以上タンクに保管されていた未処理の汚染水は、2月末時点で約11万トン減少。2号機トレンチ(ケーブルなどの地下トンネル)にたまっていた高濃度汚染水約5000トンも、失敗を繰り返しつつ大半を除去できるめどが立った。同様に3、4号機トレンチでも作業が進められている。
汚染水が増え続ける主な要因は、1~4号機建屋の配管の隙間や壁の亀裂などから地下水が流れ込み、中の高濃度汚染水と混じるためと考えられている。その量を東電は1日約300トンと推計している。
一方、2号機原子炉建屋の「大物搬入口」屋上にたまった汚染雨水が、排水路を通じて外洋に流出していたことが判明。東電が測定データを公表していなかったことも明らかになり、批判が高まった。
東電は1~4号機の周囲で地下水をくみ上げ、放射性物質を取り除いて海に放出する「サブドレン計画」や、周囲の地盤を凍らせて地下水の流入量を減らす「凍土遮水壁」の準備も進めている。ただ、地元の了解や原子力規制委員会の認可をまだ得ておらず、開始の時期は見通せない。
変わる姿、遠い廃炉=汚染水対策に追われ
-苦闘続く福島第1・東日本大震災4年
時事通信 2015年3月8日
構内の森や桜並木は切り倒され、灰色のタンク群が広がる。水素爆発で大破した原子炉建屋は姿を変えたが、内部の放射線量は依然高い。事故から間もなく4年。東京電力福島第1原発は汚染水対策に追われながら、遠い廃炉への道を手探りで進んでいる。
2月26日、第1原発に時事通信記者が入った。雨の中、1号機原子炉建屋の西約100メートルの高台でバスを降りると、東電の担当者が「放射線量が高いので短時間でお願いします」と注意を促した。線量計は毎時300マイクロシーベルト前後を示した。
1号機を覆う白いカバーは、解体に向け準備が始まっている。南側には爆発を免れた2号機。その脇にある大物搬入口の屋上にたまった放射性物質を含む雨水が、排水路から海に流出したことが明らかになったばかりだ。
隣の3号機は水素爆発で原子炉建屋上部が吹き飛んだ。放射線量が高いため遠隔操作で大きながれきを撤去し、上部は平らになっている。使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向け、建屋はクレーンなどの足場になる構台で囲まれたが、2号機側で崩れた壁が今も無残な姿をさらしている。
廃炉作業が最も進んでいるのは4号機。事故当時は定期検査中で原子炉内に燃料がなく、炉心溶融(メルトダウン)を免れた。燃料プールに1535体も燃料があり危険視されたが、昨年12月に取り出しを終えた。
燃料プールがある5階に上がった。放射線量は毎時10マイクロシーベルト。プールには制御棒などが残っているが、他の作業を優先するため水を張ったまま置かれている。
構内の樹木は多くが伐採され、汚染水を保管するタンクが800基余り並ぶ。あちこちで表土が削られ、雨水が地面に染み込むのを防ぐため灰色のモルタルが吹き付けられていた。染み込んだ雨が建屋地下に流れ込み、汚染水が増えるのを防ぐためだ。
東電は汚染水の増加抑制策として、地下水のくみ上げや建屋周囲の土壌を凍らせて「氷の壁」を造る計画を進めているが、担当者は「(地面を覆う)フェーシングは効果が高い」と期待する。
プレハブの上に大きな文字で「子供たちの未来のためにがんばろう」と掲げられていた。第1原発では1日6000~7000人が働く。正門脇には3階建ての仮設休憩所が2棟。企業ごとに分かれ、カーペットの座敷で作業員が休んでいた。
9階建ての大型休憩所が4月上旬に完成する予定だったが、タンクの点検中に起きた死亡事故で作業が一時中断し、完成が遅れているという。