玄海原発3号機のプルサーマル発電に反対する九州の市民がMOX燃料の使用差し止めを求めた訴訟で、佐賀地裁は20日、差し止めを認めず、原告の請求を棄却しました。
プルサーマル発電をめぐり裁判所が司法判断を下したのは全国で初めてです。
玄海原発3号機では核燃料の25%がMOX燃料ですが、MOX燃料ペレットの膨張率はウラン燃料よりも小さいため、ペレットが挿入される被覆菅との間に隙間が生じ、水による冷却が不十分となり燃料が高温化すると原告は主張しました。
それに対して地裁は、「ギャップ再開」は起こらないという九州電力側の主張を採用したということになります。
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【速報】佐賀地裁、玄海原発プルサーマル差し止め認めず
玄海原発MOX燃料使用差し止め訴訟
NET IBニュース 2015年3月20日
九州電力を相手取って、ウランにプルトニウムを混ぜたMOX燃料を玄海原発3号機で使用することの差し止めを求めた訴訟で、佐賀地裁(波多江真史裁判長)は3月20日、判決を言い渡し、差し止め請求を棄却した。
地裁前では、集まった原告、支援者らが「不当判決」と抗議の声を上げた。
原告側は、MOX燃料を覆っている被膜と燃料の隙間が開く「ギャップ再開」が起こると、燃料の外側から冷却しても燃料の温度が上昇し、燃料溶融の重大事故が起こる恐れがあることや、使用済MOX燃料の冷却期間がウラン燃料の数年間に比べて約100年と長期間にもかかわらず処分方法、搬出先が決まっていないなどの危険を指摘していた。
九州電力側は、ギャップ再開は起こらず、重大事故が起こらないように設計されているなどと主張し請求棄却を求めていた。
MOX燃料をウラン燃料用原子炉で使用するのは、プルサーマル計画と呼ばれ、使用済核燃料を再処理してプルトニウムを取り出して高速増殖炉で利用する核燃料サイクルの一環。高速増殖炉は、運転再開のめどが立っていない。
玄海原発3号機、プルサーマル差し止め認めず 佐賀地裁
佐賀新聞 2015年03月20日
玄海原発3号機(東松浦郡玄海町)のプルサーマル発電に反対する九州の市民130人が、九州電力にプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の使用差し止めを求めた訴訟で、佐賀地裁(波多江真史裁判長)は20日、差し止めを認めず、原告の請求を棄却した。
プルサーマル発電をめぐり裁判所が司法判断を下したのは全国で初めて。
訴訟は提訴から4年半にわたって14回の口頭弁論が行われた。原告側は、3号機でウラン燃料より膨張しにくいMOX燃料を使用すると、運転期間中に燃料と冷却水を通す被覆管の間に隙間が生じる「ギャップ再開」が起きる可能性を主張。「燃料溶融や原子炉容器の破壊など重大事故の危険性がある」と訴えた。
これに対し九電側は、3号機で使用するMOX燃料は十分な実績のあるウラン燃料と同様の設計とし、運転中の燃料棒の内圧は基準の範囲内であるためギャップ再開は起こらないと反論。「重大事故が発生する具体的危険性はない」として全面的に争ってきた。
玄海原発のプルサーマル導入をめぐっては、九電が2004年に計画を表明後、佐賀県や玄海町の同意を受けて09年12月に国内初のプルサーマルの営業運転を開始した。市民団体が約5万人の署名を集め計画の是非を問う住民投票の条例制定を請求したが、県議会は07年に否決。計画に反対する市民が10年8月、全国初のMOX燃料の使用差し止めの訴えを起こした。
訴訟の係争中、東日本大震災と福島第1原発事故が発生し、国の原子力政策は見直しを余儀なくされ、プルサーマル計画も不透明になっている。また、玄海原発への導入前、県が主催した公開討論会で九電が計画推進の「仕込み質問」や動員を行っていたことも発覚、県も一部関与を認めた。