2018年4月2日月曜日

送電線の空き容量増へ 再生エネ普及に向け新ルール導入

 日本ではこれまで送電線の送電容量は50%の余裕を確保することを前提に、原発を含めて各発電所の最大限発電量の合計を送電量のベースにし、それで余った分を再生エネ発電を受け入れる「空容量」と定義していたので、太陽光発電を受け入れる空容量は殆どゼロということになりました。
 その結果、ある事業者が太陽光発電を計画し電力会社に接続を申し込んだところ、空きがないからと送電線増強工事費として27億円を請求され(総工費は29億円)、しかも接続できるのは15年後だと言われました。このようなケースが他にも数十件にも及んだということです

 そうしたクレームを受けて経産省は再生可能エネルギー発電の普及ため送電線の空き容量を増やすべく、ヨーロッパで既に実施されている「イギリス版コネクト&マネージ(=接続と管理にちなんだ「日本版コネクト&マネージ」を1日から導入します。

 あまりにも遅きに失した措置であるために、太陽光発電は海外では急激に低コスト化しているにもかかわらず、日本のパネルはいまだに高コストです。
 しかし、とにかく普及できる条件を整えないことには低コスト化も実現できないので、これを機に急速に世界のレベルに追いついて欲しいものです。
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送電線の空き容量増へ 再生エネ普及に向け新ルール導入
NHK NEWS WEB 2018年4月1日
太陽光や風力発電などの普及を進めるため、経済産業省は1日から新たなルールを導入します。送電線の空き容量を実質的に増やして、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が受け入れやすくする狙いです。
新たなルールは、再生可能エネルギーの活用で先行するヨーロッパの制度にちなんで「日本版コネクト&マネージ」と呼ばれ、送電線の利用のしかたを大きく見直すことが柱です。

送電線の空き容量は、これまで火力などすべてがフル稼働している前提で算出していたため、実際には余裕があっても空き容量が足りないとされて、太陽光発電などが十分に受け入れられていないと指摘されていました。
このため、新ルールは実態に合わせ実績をもとに計算することで空き容量を実質的に増やし、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が受け入れやすくします。
東北電力が試験的に導入したところ、空き容量が最大で60%増えたということで、経済産業省は新ルールの効果を期待しています。

資源エネルギー庁「再生エネ導入に弾み」
資源エネルギー庁の電力基盤整備課の曳野潔課長は「時間と費用がかかる送電線の増強ではなく空いている隙間を賢く使うことで、できるだけ多くの再生可能エネルギーの電源を導入していこうという取り組みだ。費用対効果が高い方法で導入に弾みがつくと考えている。ただ、当然、無限につなげるわけではないので、中長期的に見れば、再生可能エネルギーの導入に応じた送電網の増強などが必要になってくる」と話しています。

電力各社 対応を進める
新たなルールに合わせて、送電や配電の事業を手がける大手電力各社は対応を進めています。
このうち、風力発電など再生可能エネルギーの普及が進む東北電力の管内では、主要な送電線の6割以上で空き容量がゼロになっていたため、先行的に新たなルールを一部で導入しました。

それまで、東北電力では、送電線の空き容量を計算する際、火力発電などがフル稼働し出力100%になった状態を前提にしていました。
これを新たなルールに沿って、石炭火力は90%、太陽光は80%、風力は45%などと、実績に合わせて見直したところ、空き容量は最大で60%増えたということです。
東北電力は「設備を最大限活用しながら再生可能エネルギーの導入に積極的に取り組んでいく」としています。

各社は今月から本格的に運用を見直して、送電線の空き容量がどれだけ増えるかを順次、公表することにしています。
中部電力は送電線の空き容量を計算する際、これまで、太陽光や風力、水力の発電設備について、フル稼働し、出力100%になった状態を前提にしていました。
これを、1日からは、過去に実際に発電した量の最大値に見直しました。これにより、空き容量が最大で10%程度生まれるとしています。

中部電力電力ネットワークカンパニーネットワーク企画室の舘竜司設備総合計画グループ長は「送電線を増強しなければ発電設備をつなげないことがいちばんの問題だったが、新たなルールは既存の設備を最大限に使うものなので、確実に実施し、再生可能エネルギーの普及拡大に取り組んでいきたい」と話しています。

新ルールの導入に業者は大きな期待
愛知県碧南市の発電事業者は、これまで中部地方を中心に耕作放棄地などで太陽光発電を行ってきました。
しかし、新たに事業を計画し、送電線への接続を大手電力会社に申し込んでも、「送電線に空きがない」との理由で断られたり、送電線の増強工事が必要だとして工事費の一部の負担を求められたりするケースがこの数年増えたということです。

このうち、三重県松阪市で計画し、去年9月に接続を申し込んだ太陽光発電については、電力会社から空きがないと説明され、送電線の増強のために、工事費として29億円が必要だと示されたということです。
さらに、工事が終わり、接続できるのは15年後だと言われたため、事業を断念したといいます。この業者では、事業を計画したものの接続できないため断念したケースがほかにも数十件あるということです。
こうした中での新たなルールの導入に、業者は大きな期待を寄せていて、松阪市のケースについても改めて申請することを検討しています。
さらに、接続できる送電線が増えるのではないかと考え、事業の拡大に向けて、耕作放棄地などの提供を呼びかけるチラシを新たに36万部作り、一般家庭などに配ることにしています。

石川清成社長は、新たなルールの導入について、「再生可能エネルギーの普及に向けた大きな一歩で、事業のチャンスが出てくると思う」と期待しています。一方で、「すぐには大量に受け入れてもらえないと考えているので、今回の算出方法の見直しだけでなく、いろいろな方法を取り入れて空き容量を増やしてほしい」としています。
そのうえで、空き容量がどの送電線で増えるのかなどの情報が、電力会社からどの程度示されるかまだわからないとして、「情報をもとに事業を組み立てたいので、多くの情報を出してほしい」と話しています。

家庭などの負担は増加
再生可能エネルギーの普及に伴い、家庭などの負担は増えています。太陽光や風力などで発電した電気は電力会社に買い取られ、家庭や企業の電気料金に上乗せされる仕組みになっています。
太陽光発電などを普及させるための制度ですが、平成24年度に導入されてから負担額は増加が続き、今年度に上乗せされる額は年間で合わせて2兆3700億円。電気の使用量が標準的な家庭では年間で9000円を超えることになります。
今回の新ルールの導入は、既存の送電線を活用することで新たな送電線の整備などのコストを抑えることも狙いの一つです。
再生可能エネルギーの一段の普及に向けては、こうした取り組みを通じていかに負担を緩和していくかも大きな課題になっています。

専門家「効率よく使う方法の検討必要」
京都大学大学院の安田陽特任教授は、情報が公開されている全国の送電線399路線について、去年8月までの1年間の利用状況を分析しました。
このうち、電力会社が「空き容量がない」と公表している139路線について、送電線の容量に対し、実際に流れた電気の量の割合=利用率を会社ごとに見ると、年間の平均で、北海道電力が14.1%、東北電力が9.5%でした。最も高かった東京電力でも36.6%だったということです。
安田特任教授は「空き容量がないとされている送電線でも、実際は空いていることがわかった。送電線を効率よく使うための方法を検討する必要がある」と指摘しています。