2018年4月7日土曜日

ニセコ高 エネルギー授業 原発関係修正要求は行き過ぎ

 泊原発から30キロ圏内にある町立ニセコ高校で昨年10月、北大大学院助教が行ったエネルギー問題の講演で、北海道経済産業局幹部が事前に原発関連の内容の修正を求めていたことで、北海道新聞は行き過ぎとする社説を出しました。

 講演者が事前に高校に送付した説明資料を、高校が取り決めに基づき経産局に送ったところ、直後に経産局幹部が講演者の元に訪れ、原発の発電コストや事故の危険性を指摘した記述や写真に対し、「他の見解もあるのではないか」として変更を求めたということです。
 これは明らかに原発を悪く言うことは許さないという態度で、原発の維持を至上命題とする経産省の本性を示したものです。特に水素爆発時の(建屋上屋などの)写真の掲載を「印象操作だ」というに至っては、その感を強くします。
 助教が、僅かの修正には応じたものの基本的に要求を断ったのは当然ですが、国の威光を笠に着た圧力に対して毅然と抗したのは評価されます。

 今回、毎日新聞の記事で公けにされたのは、不当な干渉に警鐘をならすことになりました。こうした干渉は止めるべきです。
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社説 エネルギー授業 修正要求は行き過ぎだ 
北海道新聞 2018年4月6日
 後志管内ニセコ町の町立ニセコ高校で昨年10月、北大大学院の助教が行ったエネルギー問題の講演で、北海道経済産業局幹部が事前に内容の修正を求めていた。
 対象となったのは、原子力発電の問題点を指摘した部分だ。
 「教育への不当な介入」という住民からの批判に対し、経産局は「中立的な講演内容を求めただけだ」と説明している。
 だが、経産局幹部が助教の研究室を直接訪ねて修正を迫るやり方は、明らかに行き過ぎだ。
 原発に悪い印象を与えかねない講演内容に、横やりを入れたとみられても仕方あるまい。
 ニセコ高は公益財団法人・日本科学技術振興財団の「エネルギー教育モデル校」に選ばれ、講演は、経産省資源エネルギー庁の委託で同財団が実施した。
 講演に先立ち、助教が高校に説明資料を送り、高校は取り決めに基づき経産局に転送した。
 直後に助教の研究室に来た経産局幹部は、原発の発電コストや事故の危険性を指摘した記述や写真に対し、「他の見解もあるのではないか」として変更を求めた。
 事業の主催者側として、その趣旨に沿って口を出すのは当然と言わんばかりの対応である
 しかし、講演が、公開授業として実施されたことを忘れてはならない。個別の授業への口出しは控えねばならないとの認識を、経産局は欠いているようだ。
 助教は「原発に関する記述ばかりを指摘したので、普通ではないと思った」と語っている。
 経産局側は、福島第1原発事故の水素爆発時の写真掲載については「印象操作だ」とまで述べたそうだが、あの爆発は、7年前、多くの国民がかたずをのんで見つめた事実ではないか。
 助教は記述や写真は削除せず、自然エネルギーの短所に関する説明を加え、予定どおり講演した。妥当な対応だろう。

 エネルギー教育モデル校事業は2014年度に始まった。
 「多様なエネルギー源とその特徴」を学ぶといった目的が掲げられているが、これが授業への干渉を招く口実になるとしたら、事業自体に疑いの目が向けられよう
 エネルギー政策のPRがしたければ、別の方法を考えるべきだ。
 ニセコ町は北海道電力泊原発の30キロ圏内に位置し、避難計画の策定も義務づけられている。当然ながら、住民には不安もある。
 こうした立地周辺自治体の事情にも鈍感と言わざるを得ない。