2018年4月24日火曜日

米・原子力大手ウェスチングハウス(WH)社の現在

 東芝が大赤字に転落し破綻を免れるために金の卵の半導体事業を売らなければならないくなった原因は、06年に米国の原子力大手ウェスチングハウス(WH)社を買収したことでした。東芝は昨年3月、多額の補償金を添えてWH社を手放しました。
 WHは今年1月、カナダの資産運用会社ブルックフィールドによる買収が決まり、3月には米連邦破産裁判所から再建計画の了承を得ました。
 同社のCEOが毎日新聞の取材に応じました。
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原発「再興」実現せず 新興国受注で再建へ 米ウェスチングハウスCEO
毎日新聞 2018年4月24日
【ワシントン清水憲司】東芝傘下だった昨年3月に経営破綻した米原子力大手ウェスチングハウス(WH)のホセ・グティエレス最高経営責任者(CEO)が毎日新聞の取材に応じた。破綻の要因について、「原発ルネサンス」と呼ばれた2000年代の原発建設ブームが「現実的ではなかった」ことや、原発建設の経験が長期にわたり失われていたことを挙げた。今後は新興国での受注を中心に再建を目指す考えを示した。 
 
 東芝は06年にWHを買収。当時は地球温暖化対策の切り札として原発が脚光を浴び、米国をはじめ各国で原発建設計画が相次いでいた。しかし、08年のリーマン・ショックに伴う経済危機で電力需要が落ち込んだことや、11年の東京電力福島第1原発事故の影響で各国の原発需要は急速に縮小。グティエレス氏は「ルネサンスは実際には起こらなかった」と誤算を認め、東芝による買収当時の経営陣が世界で数十基もの受注を見込む強気な予測を立てていたことについて「振り返れば現実的ではなかった」と語った。 
 
 また、米国では1979年に発生したスリーマイル島原発事故の影響で新規の原発建設がストップし、WHが手がけた4基の建設は約30年ぶりだった。建設は大幅に遅れが生じて費用が増大。親会社の東芝は巨額の損失処理を迫られて経営危機に陥り、WHも米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請して経営破綻した。 
 
 グティエレス氏は「既に経験が失われ、準備が整っていなかった」と建設がスムーズにいかなかった要因を指摘した。 
 
 WHは今年1月、カナダの資産運用会社ブルックフィールドによる買収が決まり、3月には米連邦破産裁判所から再建計画の了承を得た。グティエレス氏は、インドやサウジアラビアなど新興国での原発受注のほか、欧米向けには小型原発の技術研究を進め、廃炉ビジネスも成長させて経営再建を目指す方針を示した。