経済産業省が2050年に向けたエネルギー長期戦略の提言の中で、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを「主力電源化」する目標を明記したことを、北海道新聞が肯定的に社説で取り上げました。
日本は、風力発電と太陽光発電では世界の進歩に比べて周回後れになっているので、極めて当然のことで、日本において、最も実現性と発展性が高いとされる大規模な洋上風力発電をはじめとして、世界に追いつくべく大々的に取り組んで欲しいものです。
その一方で社説は、50年の時点では既存原発の大半が40年の運転期間を終えているとして、その時点でも原発の存続に含みを持たせているのは疑問(その時点では核燃料が高騰し入手も容易でなくなるという指摘もあります)だとして、脱原発と再生エネの主力化が両立する未来像を追求すべきとしています。
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(社説) 再生エネルギー 主力化への道筋明示を
北海道新聞 2018年4月15日
経済産業省が2050年に向けたエネルギー長期戦略の提言をまとめ、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを「主力電源化」する目標を明記した。
脱炭素化に向けて化石燃料依存から脱却し、再生エネを主役に据えようとの方針は納得できる。
ただしその実現には、欧州の2倍以上かかる発電コストの引き下げが不可欠だ。自然環境に左右されずに電力を安定供給する仕組みづくりも求められるだろう。
必要な投資をいかに呼び込み、技術革新を促していくのか―。国は、今夏に改定を予定するエネルギー基本計画で、再生エネを主力化するまでの具体的な道筋を示してほしい。
日本は、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、50年に温室効果ガス排出量を8割減らす目標を掲げている。今回の長期戦略は、その達成に必要なエネルギー政策の方向性を示したものだ。
現在、日本の発電量の8割を占めるのが火力である。脱炭素化の担い手として再生エネを育成し、火力への依存を着実に減らしていくことが急務と言える。
そのために必要な取り組みとして、長期戦略は、再生エネの割高なコストを引き下げ、固定価格買い取り制度の補助からの自立を急ぐ方針を掲げた。
日本の再生エネは、平地が少ないにもかかわらず太陽光に偏重しており、地価や造成費の高さがコスト高の一因となってきた。
沖合に大規模な洋上風力発電所を設置するための法整備を急ぐなど、国は対策を進めてほしい。
北電など大手電力各社が、送電線の空き容量不足を理由に再生エネ事業者の接続を制限している現状をどう変えていくかも重要だ。
長期戦略は、送電網の増強や効率化、高性能蓄電池の開発などに着手する考えを示した。
これらを絵に描いた餅にしないためには、資金調達や技術開発のスケジュール、官民の役割分担などについて、国が詳細な見取り図を明示することが求められよう。
疑問なのが、長期戦略が示した原子力の位置付けだ。
「可能な限り依存度を低減する」「脱炭素化の選択肢」などの表現で存続に含みを持たせた。
しかし、50年の時点では、既存原発の大半が原則40年の運転期間を終えているはずではないか。
国民の多くは再稼働に懐疑的だ。運転延長や新増設を前提とせず、脱原発と再生エネの主力化が両立する未来像を追求すべきだ。