2018年4月28日土曜日

28- エネ計画 議論尽くしたか 経産省審議会の骨子案判明

 政府が改定する「エネルギー基本計画」については、これまでも概要を伝える記事を紹介して来ましたが、東京新聞が27日の記事でかなり詳しく解説していますので、改めて紹介します。
 
 特に「原子力より再生エネのコストのほうが安いというのは間違いだとか、「再生エネルギーは響きがいいが、安定していない」などの誤った言説に対しては、丁寧に反論していますので記事に目を通していただきたいと思います。
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エネ計画 議論尽くしたか 経産省審議会の骨子案判明
東京新聞 2018年4月27日
 政府が改定するエネルギー基本計画の骨子案が二十六日、分かった。原発は、二〇一四年に策定した前回計画と変わらず「重要な基幹電源」と位置付けた上で、新たに安全性向上などの「原子力政策の再構築」を明記。原発維持の姿勢を鮮明にした。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは主力電源化を進めるとした。
 三〇年度の総発電量に占める原発比率を20~22%、再生エネを22~24%とする数値目標は変えなかった。
 原発は「依存度を可能な限り低減する」とのこれまでの方針を維持しながらも、人材や産業基盤の強化を打ち出した。焦点となっている原発の新増設については触れなかった。
 再生エネは大量導入により主力電源化が期待されるとした。太陽光はさらなる発電コストの削減を促し、洋上風力の拡大に向けて、海域利用のルール整備を進めるとした。
 
 経済産業省が二十七日に開く審議会で骨子案を示す。五月にも計画を取りまとめ、今夏に閣議決定を目指す。
「エネルギー基本計画」策定の前提となる経済産業省の審議会の議論は原発推進派の委員が大勢を占め、再生可能エネルギーへの批判が目立つ。世界が再生エネに大きくかじを切る中、原発にこだわり続ける日本。審議会の外にいる専門家に聞くと、異なるエネルギーの未来図が浮かび上がった。 (伊藤弘喜)
 
◆再生エネ高コスト前提→廃炉費増計算せず
 「原子力より再生エネのコストのほうが安いと言われるのは明らかに間違っている」 (二月二十日、地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾氏)
 「原発は安い」の根拠は政府が二〇一五年に行った試算。一四年に原発を新設した場合の発電コストを一キロワット時当たり「一〇・一円以上」と推計した。火力発電の石炭(一二・三円)も下回る最も安い電源と位置付けた。その後、廃炉や除染費用など原発事故費用は増大した。「安い」の論拠は崩れたが、政府は試算を見直さず、エネルギー基本計画をつくろうとしている
 これに対し、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は四月に独自の試算を公表。建設費や事故リスク対応費が政府試算より二~三倍増えた結果「一七・六円以上」に膨らんだとした。
 
 太陽光発電は二千キロワット以上の大規模型の場合、再生エネの普及を目指す「固定価格買い取り制度」に基づく買い取り価格が一七年度は一七・二円。ここから利益を除いた分が発電コストになるためさらに安くなる。太陽光パネルの価格下落を受けて、世界平均は一〇・五円とのデータもある。
 
 審議会では、消費者が大半を負担する買い取り費用が一七年度に約二兆七千億円に上ることを挙げ、「再生エネは高い」といった意見も出た。だが、これらの負担は再生エネ発電所の建設や運営に使われ、二酸化炭素(CO2)排出を削減する「投資」でもある。関西学院大の朴勝俊教授(環境経済学)は「再生エネ投資は景気を後押しする。負担ばかり強調するのは一面的だ」と指摘する。
 
◆再生エネは不安定→IT駆使し出力変動予測
 
 「再生エネは響きがいいが、安定していない」(三月二十六日、日本電鍍(でんと)工業の伊藤麻美社長)
 メッキ加工会社を経営する伊藤氏は「製造業は精密なものづくりを要求されている。万が一、停電が起きると品物すべてがだめになる」とも発言。他の経済界関係者も「再生エネの導入が進むと、電気が不安定になる」との懸念を示した。
 しかし、電機大手シーメンスなどが生産拠点を置くドイツは再生エネの発電比率が日本の倍の三割に上るが、停電時間は特段増えていない。国内総生産(GDP)も伸びている。
 
 スペイン最大手の電力会社で欧州最大の風力発電会社、イベルドローラの国際企業担当、カルロス・ガスコ氏は「再生エネは出力が変動するものだ。変動にきちんと備えれば、使いこなし、安定的に電力を供給できる」と話す。同社はITを駆使し、翌日の需要を精密に予測。電気が足りなくなるとみれば、揚水発電所が発電できるよう水を蓄えておくなど準備する。問われるべきは再生エネの不安定さではなく、使いこなす電力会社の力量だ。
 
◆独は隣国から買電→脱原発後も「電力輸出国」 
 「ドイツは原発をなくすと言いながら、隣国から原発の電力を買わないと産業が成り立たない」(昨年十一月十三日、コマツの坂根正弘相談役)
 確かにドイツは地続きである隣国フランスとの間で電力を融通し合っているが、これは欧州では通常行われていること。それでも、ドイツは二〇〇三年以来、電力の輸出が輸入より多い「純輸出国」だ。
 ドイツは二酸化炭素(CO2)を大幅に削減する「脱炭素」と脱原発の両立を目指す路線。一一年に、当時十七基あった原発すべての運転を二二年までに段階的に停止する方針を決めた。稼働中の原発は現在、七基まで減った。一方で、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力を原発のようには減らせていない。
 ドイツの温室効果ガス排出量は一五年が九億七百万トンで、一九九〇年比で27%減を実現。だが、一六年は九億九百万トンと微増、一七年は九億五百万トン(速報値)と微減するなど横ばいとなっている。
 「ドイツは脱原発と言ったが、壁にぶつかっている」(四月十日、坂根氏)との指摘も出た。だが、ドイツは再生エネ比率を一六年の29・2%から三〇年には50%とする目標を掲げている。温暖化問題が専門の東北大の明日香壽川(あすかじゅせん)教授は「ドイツは、石炭火力を閉鎖するための新たな計画を策定中。行き詰まったというのは時期尚早」と見ている