9日、佐賀新聞と福井新聞が、玄海・美浜・高浜3原発の再稼動への動きを報じましたが、いずれも問題山積です。
九州電力・玄海原発について佐賀新聞は、「玄海の地震想定、規制委ほぼ了承 審査会合『あと数回』」とし、残る問題は「地盤」「基礎地盤及び周辺斜面の安定性」「津波」の3つで、あと数回の会合で完了するとしています。
しかし規制委が了承した「基準地震動」は、従来の値540ガルを620ガルに15%アップさせただけのチマチマしたもので、その範囲であれば現状の設備をそこそこ補強すれば運転に入れるという欺瞞的なものでした。
大飯原発の再稼動を差し止めた福井地裁が述べている、「我が国の地震学会においてこのような規模の地震の発生を一度も予知できていない。したがって大飯原発に1260ガルを超える地震は来ないと確実に想定することは本来的に不可能であり、到来する危険がある」、とした考え方とは似ても似つかないものです。
関西電力・美浜原発について福井新聞は、「美浜原発3基とも見通せない再稼働 老朽化で運転延長『相当高い壁』」とし、まだ再稼働の前提となる安全審査の申請をしていないものの、1、2号機は運転経歴が40年を超えるので廃炉か運転延長申請かの判断を迫られており、同じく37年を超える3号機も安全審査で問題になることを報じています。
150キロもの高圧下で運転され、一旦事故が起きれば取り返しのつかない被害を広範囲にばら撒く原発であるのに、こんなに老朽化し、劣化した装置を稼動させて良いものか、多少の手続きを経ればそれも可能になる(現行基準)というような問題ではあり得ません。
関西電力・高浜について福井新聞は、「原発高浜原発防潮堤かさ上げへ、なぜ? 想定する津波の高さに計算ミス」とし、津波高さの計算を間違えたため、建設中の防潮堤(海抜6メートル)を2メートルかさ上げすることを報じました。
これは関電の子会社が津波規模の計算を行い、一旦結果を規制委に報告したものの、7月になって計算をチェックしたところミスがあることが分かったということですが、問題はそのミスを関電も規制委もチェックできなかったという点です。
津波高さという出力値が明解に理解できる問題でもこうですから、耐震計算等の複雑な計算のチェックは果たして適正にされているのか、大いに疑問です。コンピュータでの耐震計算は、係数や入力値を匙加減(修正)すれば、いくらでも計算結果を調整することできるからです。
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玄海の地震想定、規制委ほぼ了承 審査会合「あと数回」
佐賀新聞 2014年8月9日
原子力規制委員会は8日の審査会合で、九州電力が提出した玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の「地震」の追加説明を受け、おおむね了承した。地盤や津波については次回以降に取り上げる予定で、九州電力は「(地震・津波については)あと数回の会合ですべて完了したい」としている。
玄海原発は、耐震設計の基準になる「基準地震動」はすでに了承済みで、この日は前回会合で説明が求められていた地下構造モデルの妥当性などの資料を追加提出した。規制委側からは、資料の表記などで注文が出たが、異論はなかった。
地震想定の了承により、設置許可変更申請書で求められている項目のうち、残りは「地盤」「基礎地盤及び周辺斜面の安定性」「津波」の三つとなった。
審査会合後、取材に応じた九電の中村明上席執行役員と赤司二郎技術本部原子力グループ長は「残りの項目も、あと数回の審査会合ですべて説明できる」との見通しを示した。
■県議会特別委が川内原発視察-19、20日
佐賀県議会原子力安全対策等特別委員会は8日、理事会を開き、19、20の両日、全国の原発で初めて原子力規制委員会が審査書案を承認した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を視察することを決めた。
川内原発では、新規制基準に基づく安全対策などを重点的に視察するほか、鹿児島県庁も訪れる。原子力災害時の避難計画などのほか、再稼働に向けた現地説明会や地元同意のあり方など立地自治体としての考え方などを確認する。
美浜原発3基とも見通せない再稼働 老朽化で運転延長「相当高い壁」
福井新聞 2014年8月9日
東京電力福島第1原発事故後、定期検査で停止中の関西電力美浜原発(福井県美浜町)は、蒸気噴出事故から丸10年を迎える3号機を含め3基とも現時点で再稼働は見通せない。敷地内の破砕帯が活断層かどうかの原子力規制委員会の調査が続き、再稼働の前提となる安全審査の申請もしていない状況だ。いずれも高経年化(老朽化)が進み、運転40年を超える1、2号機は廃炉か運転延長申請かの判断を迫られている。37年超えの3号機も安全審査でハードルとなる課題がある。
■委員交代前に結論出ず
美浜原発敷地内には9本の破砕帯がある。近くを走る活断層「白木―丹生断層」とともに動く可能性を否定できないとして、規制委の有識者調査団が昨年11月から調査している。
新規制基準では活断層の真上に安全上重要な施設を設置することを認めておらず、破砕帯調査で“シロ”判定が出ない限り、規制委は「安全審査の申請があっても個別的な審査には入らない」とのスタンスだ。
敷地内には破砕帯の活動性を判断するための地層が少なく、調査は長期化。関電は5月に「白木―丹生断層と関連しない」とする追加調査結果を出したものの、評価会合の開催予定は今のところない。調査を担当する島崎邦彦委員長代理が9月中旬に退任し別の規制委員に交代するが、「交代前に結論は出ない」(規制庁担当者)状況という。
■ケーブル防火策が鍵
関電の県内原発では高浜3、4号機と大飯3、4号機の4基が安全審査中で「今は高浜と大飯に全勢力をつぎ込んでいるが、次のステップで美浜をやりたい」と関電関係者は話す。美浜原発でも新基準対応の工事は行われており、3号機を軸に申請の準備を進めているとみられる。
津波対策では、若狭湾に面した外海側の高さ6メートル(海抜11・5メートル)の防潮堤が既に完成。新基準により敷地内が浸水しないようにしなければならず、津波が回り込むと考えられる内海側でも建設を進めている。2016年3月を予定する内海側の防潮堤完成までは少なくとも再稼働できない。
安全審査を申請した場合の最大の課題は、ケーブルの火災防護対策。建設時期が古い1~3号機は、原発内の長大なケーブルが新基準で求める燃えにくい材質ではない。「延焼防止剤を塗るなどして対応する」としているが、規制委が交換など大幅な対策を求めれば多額の費用が掛かる。
■「秋は一つの目安」
高経年化対応も課題だ。1号機は運転開始から43年、2号機は42年が経過。昨年7月に運転年数「原則40年」が法令で定められ、例外規定で運転延長をする場合、この2基は来年4~7月に申請しなければならない。申請時には原発の重要機器の劣化状況を調べる「特別点検」の結果が必要になる。
しかも規制委が運転延長の認可を判断する16年7月までに、新基準に合格し詳細設計となる「工事計画認可」が確定していなければならない。「時間的にも厳しく、相当にハードルが高い」(規制庁担当者)条件となっている。
運転延長か廃炉かの方向性について、関電の八木誠社長は今秋にも判断する考えを示していたが、7月の記者会見では「秋は一つの目安。具体的な時期は決めていない」と述べるにとどまった。
高浜原発防潮堤かさ上げへ、なぜ? 想定する津波の高さに計算ミス
福井新聞2014年8月9日
再稼働に向けて安全審査が進む関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)をめぐり、関電は8日、同原発で想定する津波高さで見つかった計算ミスに関し原子力規制委員会の審査会合で再計算結果を提出した。従来の想定より水位が高くなり、建設中の防潮堤(海抜6メートル)では浸水を防げないとして、2メートルかさ上げする方針を示した。
規制委は今後、変更された防潮堤の設計が妥当かどうかを審査で確認する。
計算ミスをめぐっては、関電が子会社に津波規模の計算を委託し、いったん結果を規制委に報告。7月になって計算をチェックしたところ、海底活断層の地震とともに起きる地滑りの発生から終了までの時間を「951秒」(約16分)とすべきところを「120秒」(2分)と誤入力していたことが判明した。
その結果、従来は「海抜4・4メートル」としていた放水路奥の水位が「6・2メートル」となり6メートルの防潮堤を超えるなど、津波の影響が大きくなることが分かった。同様に大飯原発の津波想定も変更されるが、再計算は終了していない。
関電は、防潮堤の改造工事について「月単位で時間がかかる」としている。
高浜は焦点だった基準地震動(耐震設計の目安となる地震の揺れ)が了承され、審査で2番手に付けている。ただ、審査書案を作る段階にはまだ複数回の審査会合が必要とみられ、その後の工事計画認可などの審査日程は読めない。基準地震動の引き上げに伴う設備の耐震評価解析も続けており、再稼働の時期が見通せない状態が続いている。