これまで「福島原発事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」は、公開の会議の前に「秘密会」が開かれてたことが2012年9月に毎日新聞によって暴露されたり、その後、長崎大から出向していた山下俊一氏が退陣するなど一定の改革が行われたことにはなっていましたが、児童の甲状腺がんが異常な高率で発生していても、原発事故とは関係ないと一貫して言い張るなど、環境省(・福島県)主催の専門家会議は「疑惑の宝庫」視されてきました。
それが前回の8回目辺りから急速に風向きが変わってきたようで、いわゆる御用学者たちによる放射線被害隠蔽のための会議から、脱皮しつつあるということです。
ここに紹介する9日付のブログ:「避難の権利」は一見硬い文章に見えるかも知れませんが、一読すると専門家会議の実態と最近の変化がとてもよく理解できます。
それにしても、山下氏といい、現在福島医大に残っている鈴木氏といい、このブログに出てくる長瀧氏といい、長崎大学医学部は本当に国のために協力する人材を輩出していることが分かります (^○^)。
なおブログ中にも出てきますが、傍聴の女性たちが政務官に提出した「長瀧重信座長(長崎大名誉教授)の恣意的で独断的な会議運営に抗議し彼の解任を求める要請文」(全文)は、下記にアクセスすれば見ることができます。
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異例続きの環境省専門家会議
~傍聴の女性たちが、議長解任を求める直訴
「避難の権利」ブログ 2014年8月9日
8月5日、午後5時から8時半まで、「第9回東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が開催されました。今回の専門家会議は、前回の会議における5名の外部専門家による異論や批判的な意見の提出、正規委員達がそれにまともに受け答えできない不勉強ぶりの露呈に続いて、再び極めて異例な会議となりました。
異例さの第1は、会議が始まる直前に、傍聴の女性たちが長瀧重信座長(長崎大名誉教授)の恣意的で独断的な会議運営に抗議し彼の解任を求める要請文を、浮島政務官に手渡すという事態が発生したことでした。要請文を手渡したのは、この会議に毎回数名の傍聴者を出して参加してきた関東ネットの母親達でした。また会場では、「偏向座長は要らない」「良心はあるのか」「国民の声を聞け」などの紙を掲げる傍聴者もいました。環境省の職員がこの行為を制止しようとしましたが、声をあげているわけでもない傍聴者から逆に「シー、静かに!」と注意をされる始末でした。
異例さの第2は、これまで長瀧座長の会議運営に付き従い、御用意見を展開してきた本間俊充委員(日本原子力開発機構)や阿部正文委員(福島県立医科大)などが、「中間取りまとめに向けた線量評価部分の要点(案)」への疑問を呈したり、明確な批判的意見を述べたことでした。阿部委員は、“福島県内の外部被曝は5mSv未満が99.8%だと言うが、それがすべてではない。不確実性がある”等々と発言。本間委員に至っては、“これではミスリーディングをもたらす。100ミリを超える被曝を受けた住民がいたとは考えられないという記述と、その可能性を否定することが出来ないという記述の併存は、科学的にはあり得ない文章。こういうまとめ案をつくることがいいのか自信がない、まとめの前の段階の長い文書についても問題がある”等々と言い出す始末でした。
御用委員の中からのこうした非協力と不満の声の表面化は、御用委員の幾人かが、こんな結論に共同責任を負わされたのではたまらない、という気分に傾き始めていることを示すものです。彼らは、「難破船(環境省=長瀧体制)から逃げ出す鼠」のごとく、責任回避に走り始めているのです。
異例さの第3は、この会議の正規メンバーの中で春日文子委員(国立医薬品食品衛生研究所)とともに良心的な見解を述べ続けてきた石川広巳委員(日本医師会)の発言によって、長瀧座長が想定していた会議のスケジュールが変更されたように見えた点でした。石川委員は、これまでの8回にわたる会議がもっぱら線量評価や健康リスク評価に費やされた来たことにいらだちを示しつつ、この会議の目的は子ども被災者支援法の趣旨に則って健康調査や医療施策についての方向を示すことにある、すぐにでもそうした議論に移っていくべきだと述べたのですが、これに明確に異を唱える委員は現れず、長瀧座長はしぶしぶ“線量評価、リスク評価と健康調査にあり方の検討の同時並行”という苦肉の方向を示さざるを得ませんでした。
そもそも、大方の委員たちは、線量評価についてだけは自分は専門家として振る舞える、この議論で福島原発事故がもたらした被曝線量は大したことは無いという印象をつくりだし、だから被曝リスクも小さいと決めつけ、そして健康調査や健康管理の必要はないと強引に結論づけるつもりでした。しかし、石川委員や春日委員の発言によって、また前回の5名の外部専門家達の発言によって、そして何よりも毎回の傍聴を続けてきた多くの市民の監視とチェックによって、御用学者達のこの目論見は脆くも崩れつつあります。
長瀧座長は、よっぽど悔しかったのでしょう。石川委員の発言への皮肉のつもりで“甲状腺を取ってしまえば心配ない、10人に1人、100人に1人の甲状腺を取っても安心であれば良いのではないかという考えについてはどうか”などと発言をしましたが、この日、外部委員として招かれていた宮内昭氏(隈病院院長)に、“それは極端な議論”とたしなめられる有様でした。こうした子供じみた発言を公式の場で平気で行えることの中に、長瀧座長の「専門家」としての資質とレベルがどの程度のものか、見事に、端的に、示されていると言えます。
環境省と長瀧座長は、この専門家会議を出来るだけ早く店じまいにしたいようです。しかし今回の会議における議論によって、健康調査、健康施策の議論にも時間を割かざるを得なくなるでしょう。またいったん信頼と権威を失い始めた環境省=長瀧体制は、今後は内部の御用委員達を今まで通りにつなぎ止めることも難しくなっていくに違いありません。
専門家会議への監視とチェックを、さらに強めていきましょう。
長瀧座長の解任を求める声をさらに大きくしていきましょう。
会議の全容は、アワプラネット(0urPlanet-TV)をご覧下さい。↓