福島原発事故の責任を問われた東電幹部、原子力安全委の幹部、菅直人元首相らについて、東京地検は昨年9月、42人全員を不起訴処分にしました。
それを不服として申し立てられた検察審査会の審査で、東京第五検察審査会は23日、6人を不起訴とした東京地検の処分に対し、勝俣恒久元会長ら3人を業務上過失致死傷罪で「起訴相当」、小森明生元常務は「不起訴不当」、別の元副社長ら2人は「不起訴相当」と議決しました。
検察審査会は、東電が2008年に15m超の津波を試算しながら対策を取らなかったことについて、想定を大きく超える津波が来る可能性について報告を受けたとき、東電の最高責任者として各部署に適切な対応策をとらせることができたとして、業務上過失致死傷罪に当たるとしました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「東電元3幹部 起訴相当」 福島原発事故 検審議決 検察、再捜査へ
東京新聞 2014年7月31日
東京電力福島第一原発事故は東電が津波対策を怠ったために起きたとして、福島県民ら約五千七百人が歴代の幹部六人の捜査のやり直しを求めている問題で、東京第五検察審査会は三十一日、六人を不起訴とした東京地検の処分に対し、勝俣恒久元会長(74)ら三人を業務上過失致死傷罪で「起訴相当」と議決したと公表した。議決は二十三日付。検察が再捜査するが、仮に再び不起訴としても、別のメンバーによる検審が再び起訴相当と議決すれば強制起訴される。
福島第一の事故をめぐり、市民で構成する検審が関係者を起訴すべきだと判断したのは初めて。今も約十三万人が避難生活を送る未曽有の事故で、刑事責任を問われる可能性が出てきた。
ほかに起訴相当となったのは、武藤栄元副社長(64)と武黒一郎元副社長(68)。小森明生元常務(61)は不起訴不当、別の元副社長ら二人は不起訴相当とした。
捜査の最大の焦点は、東電が二〇〇八年に十五メートル超の津波を試算しながら対策を取らなかったことが過失に当たるかどうかだった。東京地検は「最も過酷な条件での試算で、数値通りの津波の襲来を予測することは困難だった」として過失を認めなかった。
これに対し検審は「地震や津波が具体的にいつどこで発生するかは予見できない。想定外の事態が起こりうることを前提とした対策を検討しておくべきだ」と指摘。試算を受けた東電の対応を「時間稼ぎ」と断じた上で「容易に無視できないと認識しつつ、何とか採用を回避したいとのもくろみがあった」と批判した。
勝俣元会長は事情聴取で「重要な点は知らなかった」と供述したが、検審は「信用できない」と一蹴。「想定を大きく超える津波が来る可能性について報告を受けたと考えられる。東電の最高責任者として各部署に適切な対応策をとらせることができた」とした。
事故をめぐっては、福島県民らでつくる福島原発告訴団が一二年六月、「東電が津波対策を怠り事故を引き起こした」として東電や原子力安全委員会の幹部ら三十三人を業務上過失致死傷などの容疑で告訴・告発した。東京地検は昨年九月、告訴団と別の市民らが告発した菅直人元首相らを合わせ、四十二人全員を不起訴処分にした。
告訴団は不起訴を不服とし翌十月、対象を東電幹部六人に絞り検察審査会に審査を申し立てていた。
菅元首相ら当時の政権幹部三人を不起訴とした東京地検の処分については、別の検審が今年四月に不起訴相当と議決している。
<検察審査会>
選挙権のある国民からくじで選ばれた11人の審査員で構成。審査は非公開。検察官による容疑者の不起訴処分について、11人中6人が納得できなければ「不起訴不当」、8人以上が納得できなければ「起訴相当」と議決する。従来は議決に拘束力がなかったが、2009年5月施行の改正法では、起訴相当と議決された事件を検察官が起訴しなかった場合、自動的に再審査。再び起訴相当と議決すると、裁判所が選んだ検察官役の指定弁護士が容疑者を強制的に起訴し、公判を担当する。再審査時は必ず審査補助員の弁護士が立ち会い、検察官の意見を聴く。