2014年8月27日水曜日

火山専門家会合の全否定を受けても川内審査変更なし

 原子力規制委員会が25日に開いた火山の巨大噴火リスクを検討する専門家会合は、期せずして川内原発をめぐる九電や規制委の認識を厳しく批判するものとなりました。
 
 九州電力と原子力規制委は、川内原発の半径160キロ圏内に位置する複数のカルデラが、近く破局的な噴火を起こす可能性は十分に低いうえ、全地球測位システム(GPS)などによる監視体制を強化すれば、噴火の少なくとも数年前(初期には数ヶ月前と説明)には前兆を捉えることができるので、発電所内の核燃料を搬出する時間的余裕があるという見解をとっています。
 
 それに対して火山噴火予知連絡会などは一貫して、川内原発の運用期間中に、破局的噴火が起こるかどうかについて「起こるとも、起こらないとも言えない」と述べてきました。
 
 25日の会合では、「『GPSによる周辺の地面の動きや地震の観測などで噴火の予知ができる』というのは思い込みで俗説」、九電は川内原発に厚さ15センチの灰が積もっても発電所の要員が参集して対応することは可能と強調するが、「灰が数センチ積もれば車は坂道を上れない。作業員はどうやって出勤するのか。雨が降ればさらに難しくなる」、また九電が巨大噴火の兆候から実際の噴火までは数十年あるとの論拠とした論文について、「論文の筆者にも確認したが、一事例を述べたもので、ほかの火山に当てはまるものではない、とのこと、などと原子力規制委の見解に批判が集中しました
 
 しかしこうして火山の専門家から全否定を受けても、規制委側は、専門会会議の趣旨は、「原発を危機に陥れないための火山監視システム等を考える」ことであり、「川内の審査結果案に変更はない」との見解です
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川内審査 専門家「待った」 規制委・九電に疑問続々
東京新聞 2014年8月26日
 原子力規制委員会が二十五日に開いた火山の巨大噴火リスクを検討する専門家会合では、噴火を事前予知することは極めて困難という指摘が相次いだ。「当面は巨大噴火はないだろう」と推測し、九州電力川内(せんだい)原発は新規制基準を満たしているとの判断を固めた規制委にも疑問が呈された形。今後の審査のあり方にも影響しそうだ。
 
 「『衛星利用測位システム(GPS)で周辺の地面の動きや地震の観測などで噴火の予知ができる』というのは思い込みで俗説」。冒頭、京都大学の石原和弘名誉教授(火山物理学)は、新燃岳(しんもえだけ)(鹿児島県、宮崎県)などの事例を挙げ、噴火予知がいかに難しいか詳しく説明した。他の専門家も違う角度から難しさを述べた。
 会合は、原発を危機に陥れないための火山監視を考える趣旨だったが、実質的に川内原発をめぐる九電や規制委の認識に疑問を突き付ける内容になった。
 
 九電は噴火で川内原発に厚さ十五センチの灰が積もっても、要員が参集して対応することは可能と強調し、規制委も主張を認め、新基準で初の合格を出すつもりでいる。
 これに対し、東京大地震研究所の中田節也教授(火山岩石学)は「十五センチの降灰はとんでもない話。数センチでも車は坂道を上れない。作業員はどうやって移動するのか。雨が降ればさらに難しくなる」と疑問を投げかけた。
 
 藤井敏嗣(としつぐ)・東大名誉教授(マグマ学)も、九電が巨大噴火の兆候から実際の噴火までは数十年あるとの論拠とした論文について、「論文の筆者にも確認したが、一事例を述べたもので、ほかの火山に当てはまるものではない、とのことだった」と述べた。
 川内原発の審査の中で、火山の専門家から意見を聴いていれば、規制委の判断は違う展開になった可能性がある。
 しかし、同委の担当者は「川内の審査結果案に変更はないと思う」と報道陣に述べた。