東京電力は、福島原発の汚染水抑制策の一環として、1~4号機原子炉建屋の周囲にある「サブドレン」と呼ばれる40数本の井戸から地下水をくみ上げ、浄化処理後海に放出することを計画し、月内にも地元漁業関係者に説明し理解を得たい考えです。
新設する浄化設備で放射性セシウム・ストロンチウムなどを取り除いてから、原発の専用港内に流すもので、1日200トン程度の汚染水抑制効果を見込んでいます。
これは、現在実施している上流側(山側)地下水のバイパス放流が効を奏していないための代替案であると同時に、工事中の凍土壁の完成自体が疑問視されていることに対する苦肉の代替策とも考えられます。
問題は建屋周囲の地下水からは1リットル当たり3000ベクレル近いセシウムや、同9万6000ベクレルのトリチウムなどが検出されていることで、浄化設備を新設してもセシウムなどは同1ベクレル未満まで取り除けるものの、トリチウムを除去することは原理的に不可能です。
またいわゆる「多核種除去装置」自体も、これまでは一向に安定的に運転できていないという問題があります。
従って東電の提案が地元漁協に受け入れられるかどうかは疑問です。
追記) 漁協が懸念するのはいわゆる風評被害ですが、現状はその高度汚染水が地下水となって、沖合い10キロの辺りで海底からそのまま湧出しているわけなので、浄化設備を通せばその分海の汚染を軽減できることは間違いありません。
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福島第一の汚染地下水、処理して海へ 今秋にも東電検討
朝日新聞 2014年8月7日
東京電力福島第一原発の汚染水対策で、建屋周りの井戸から放射性物質を含む地下水をくみ上げ、浄化処理して海に流す検討を東電と政府が進めていることが分かった。建屋に流れ込む地下水を減らす狙いで、今秋の稼働に向け地元への説明を始めた。処理した汚染水を海に流すことになれば事故後初めて。
検討しているのは建屋周囲の「サブドレン」と呼ばれる井戸。事故前はここから地下水をくみ上げて海に流し、地下水位を下げていた。事故でポンプなどが壊れ、地下水が汚染されたために使えなくなっていた。
地下水の流入で、汚染水は1日400トンずつ増え続けている。東電は既存の27本のほか15本の井戸を新たに掘削し、稼働により1日200トン程度を抑えられると試算する。地下水に含まれる放射性セシウムや放射性ストロンチウムは、浄化処理で検出できないレベルに下がるとしている。
東電は「地元の了解がない限り、海に流すことはあり得ない」としている。すでに処理設備の審査を原子力規制委員会に申請し、福島県漁業協同組合連合会にも計画の概要を伝えた。県漁連によると、7、8両日に地元漁協を東電と政府の担当者が訪れ、計画を説明する。漁協幹部らは「より建屋に近く汚染水そのもの。漁業者の反発は必至で理解を得るのは容易ではないだろう」と話す。
東電は5月、山側の離れた井戸の水をそのまま流す「地下水バイパス」を稼働。ほかに、地下水の流れを遮るため地中に氷の壁をつくる「凍土壁」の工事も進めている。