2014年8月20日水曜日

汚染水の「氷の壁」断念 坑道にコンクリ投入へ

 福島原発2号機建屋トレンチ接合部の汚染水を凍らせて「氷の壁」で止水する工事が難航している問題で、東京電力は氷の隙間に充填材(コンクリート)を流し込む新たな対策を行う方針を固め、原子力規制委員会の会合に諮ることを決めました。
 
 東京電力は凍結管だけでは凍らなかったので、先月30日以降、バックアップとして氷やドライアイス400トン余りを入れた結果、トンネルの断面の90%余りが凍ったとしていますが、それ以上の進展はありませんでした
 
 汚染水対策の切り札「凍土壁」工事も地中に30mの凍結管を1m間隔で挿入して凍らせるという、同じ考え方で進められていますが、これについては実証実験が成功していることを理由に今後も続けるということです。
 
 確かに、4号機建屋の西側に縦横10メートル、深さ26・4メートルの範囲に厚さ2メートルの凍土壁を構築する実証実験で、凍土壁が計画通り完成したとして、5月16日にメディアに公開されました。しかしそのとき公開されたのは地下1.2mまでの範囲で、その下まで完全に凍結していたのかは不明で、地下水流があったのかどうかも不明でした。
 従って実証実験で成功したから大丈夫というのはあまりにも楽観的であり、とても納得することはできません。
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汚染水“凍結断念”坑道にコンクリ投入へ
 テレビ朝日 2014年8月19日
 福島第一原発で汚染水がたまった地下の坑道トレンチを凍らせる工事がはかどらない問題で、国と東京電力は、坑道にコンクリートを投入する方針を固めました。
 
 高濃度の汚染水がたまる坑道については、冷却装置を使って原子炉建屋との接続部分で水を凍らせて壁を作り、坑道から汚染水を抜き取る予定でいました。しかし、凍結が進まず、氷とドライアイス合わせて410tを投入しても効果が出ていません。このため、国と東電は事実上、凍結を諦め、水の中でも固まるコンクリートなどを投入する方針を固めました。近く作業に着手します。
 
 一方、汚染水対策の切り札「凍土壁」作りについては、同様の凍らせる手法で進めていますが、実証実験が成功していることを理由に今後も続けるということです。
 
 
凍結のみの止水断念 追加対策へ
NHK NEWS WEB 2014年8月19日
福島第一原子力発電所で地下のトンネルに流れ込んだ汚染水を凍らせて止水する工事が難航している問題で、東京電力は、氷やドライアイスを入れるなどの追加の対策を行っても完全に止水することは難しいとして、氷の隙間に充填(じゅうてん)材を流し込む新たな対策を行う方針を固め、原子力規制委員会の会合に諮ることを決めました。
 
福島第一原発では「トレンチ」と呼ばれる地下のトンネルに高濃度の汚染水が流れ込み、ここから地下水と混ざって海に流れ出しているとみられることから、東京電力はことし4月からトレンチと建屋が接する部分に「凍結管」と呼ばれる装置を入れて汚染水を凍らせ、氷の壁で止水したうえで汚染水を抜き取る計画でした。
ところが、3か月たっても十分に凍らないことから、先月30日以降、氷やドライアイス400トン余りを入れた結果、トンネルの断面の90%余りが凍ったとしています。
しかし、障害物があって凍結管を入れられない部分などが依然として凍っていないことから、東京電力は、氷の壁だけで完全に止水することは難しいと判断し、氷の隙間を充填材などで塞ぐ新たな対策を行う方針を固め、19日開かれる原子力規制委員会の専門家の会合に諮ることを決めました。
それでも障害物がある場所などに確実に充填材を詰められるかといった課題は残っているということです。
 
さらに、福島第一原発では1号機から4号機の周囲の地盤を凍らせて建屋への地下水の流入を防ぐ「凍土壁」の建設も進められていますが、トレンチの汚染水を抜き取ることが前提となっているため、トレンチの対策の遅れが凍土壁の建設に影響することも懸念されています。
 
 
福島第1原発、凍土遮水壁の実証試験公開/経産省が地下水流入防止対策
(日刊)建設工業新聞 2014年5月19日
 東京電力福島第1原発事故の汚染水問題で、原子炉建屋内への地下水の流入を防ぐ抜本的対策として計画されている「凍土遮水壁」の実証試験が16日、報道関係者らに公開された。地中に凍土の壁を造り、1~4号機の周り約1500メートルを囲う計画で、地盤条件が同じ原発敷地内に試験ヤードを設置。施工方法や遮水効果などを確認した。原子力規制委員会の承認を経て、6月中にも本工事に着手する見通しだ。
  凍土壁は、地中深くに一定間隔で鉄製の管を埋め、管内に冷却材を循環させることで管の周りに凍った土の壁を造成する技術。海底や地下トンネルの止水対策に採用されるケースが多い。
  実証試験は、経済産業省資源エネルギー庁の汚染水処理対策事業の一環として、鹿島と東電が共同で昨年8月に開始した。現地で遮水壁を計画通り構築できるかどうかを検証するため、4号機建屋の西側に縦横10メートル、深さ26・4メートルの範囲に厚さ2メートルの凍土壁を構築。管に計測器を付け、温度などのデータ収集も行った。
  本工事では、原子炉建屋の周囲に約7万立方メートルに上る大規模な遮水壁を構築する。「国内では過去最大の凍土造成」(高村尚鹿島土木設計本部地下空間設計部原子力環境グループ設計長)となる。管は1500~1600本を想定。総事業費に320億円を見込む。15年夏までに完成させ、20年までの7年間にわたって凍結状態を保つ。東電によると、年間の維持コスト(電気代)は一般家庭1万3000世帯分の年間使用量に相当するという。