福島原発の事故後、福島県川俣町から避難を強いられ、一時帰宅中に焼身自殺した女性の遺族が東電に計約9100万円の賠償を求めた訴訟で、福島地裁は26日、東電に約4900万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
訴えていたのは、亡くなった渡辺はま子さん(当時58)の夫の幹夫さん(64)ら遺族4人です。
福島地裁は、女性が自殺したのは「避難生活で精神的に追い詰められ、うつ状態になったため」として事故と自殺の因果関係を認めました。原発事故と自殺の因果関係を認めた初めての判決※となります。
※ 東日本大震災から間もない11年3月24日に自殺した福島県須賀川市の農業の男性(当時64)の遺族に対しては、裁判外紛争解決手続き(ADR)で、東電が賠償することで和解しました。
判決を受けて、東電は「今後は、判決の内容を精査したうえで、引き続き真摯に対応していく」(広報部)とコメントしました。
内閣府によると、福島県の震災関連の自殺者は、統計を取り始めた2011年6月から今年7月までに56人で、11年に10人、12年に13人、13年に23人と年が経つにつれて増加する傾向にあります。
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原発避難「うつで自殺」 東電に賠償命令 福島地裁
東京新聞 2014年8月26日
二〇一一年七月、東京電力福島第一原発事故で避難していた福島県川俣町山木屋地区の渡辺はま子さん=当時(58)=が自殺したのは「避難生活で精神的に追い詰められ、うつ状態になったため」として、遺族が東電に計約九千百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁(潮見直之裁判長)は二十六日、東電に約四千九百万円を賠償するよう命じた。
東電によると、原発事故が原因で自殺したとして東電に賠償を求めた訴訟で、初の判決。夫の幹夫さん(64)ら四人が訴えた。
訴状によると、一一年三月十一日の原発事故で、山木屋地区は四月二十二日、政府による計画的避難区域になった。はま子さんは六月、幹夫さんら家族とともに福島市内のアパートに避難。一時帰宅していた七月一日、自宅敷地内で焼身自殺した。
避難後、顔色が悪くなって食欲がなくなり「生きているうちに戻ることができるだろうか」などと話すようになったといい、原告側は「自宅に戻る見込みが立たず、勤めていた養鶏場も閉鎖され、精神状態が悪化した」と主張した。
東電は「原発事故で強い心理的負担が生じたことは認めるが事故前から睡眠障害で薬を飲んでおり、原発事故以外の原因を考慮するべきだ」として争っていた。
原発事故と自殺をめぐっては、東日本大震災から間もない一一年三月二十四日に自殺した福島県須賀川市の農業の男性=当時(64)=の遺族が賠償を求めた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、東電が賠償することで和解した例がある。
◆自殺増加 避難長期化原因か
福島県では、東日本大震災との関連で自殺したと認定される人が増え続けている。集計する内閣府の担当者は「東京電力福島第一原発事故の影響で避難先の生活が長期化しているのが原因ではないか」と分析する。
内閣府によると、福島県の震災関連の自殺者は、統計を取り始めた二〇一一年六月から今年七月までに五十六人。同様に震災で大きな被害を受けた岩手県の三十人、宮城県の三十七人と比べても多く、全国最多だ。福島では一一年に十人、一二年に十三人、一三年に二十三人と、増加傾向が著しい特徴もある。
自殺防止対策について内閣府は「福島県には対策費を多めに配分している」とし、県も相談ダイヤル設置や仮設住宅への相談員派遣などに取り組んでいるが、十分な効果が挙がっていないのが実情だ。
震災関連の自殺と認定されるのは、仮設住宅で遺体が発見されたり、亡くなったのが原発事故の避難者だったりしたケース。ほかにも遺書や遺族の話を基に、震災関連かどうか判断している。
<原発事故と避難> 東京電力福島第一原発事故に伴い、政府は2011年4月22日、福島県内の原発周辺11市町村に避難区域(警戒区域と計画的避難区域)を設定。12年4月からは順次、放射線量が高い順に、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域の三つに再編した。避難区域は14年4月に田村市で初めて解除され、現在10市町村で継続中。自主避難を含め今も約12万5000人の福島県民が、県内外で避難生活を続けている。