2014年8月21日木曜日

福島原発トレンチ「氷の壁」 止水材注入に「待った」

 19日に開かれた原子力規制委の会合では、2号機建屋海側のトレンチ接合部の凍結止水に関して、福島県関係の出席者から東電の対応が後手に回り続けているとの批判が出され、「あれがだめならこれと泥縄式にズルズルいくのでは困る「止水材を入れるだけでいいのか疑問。凍結以外の方法もあるのではないか」「万が一を考えて、別の対策も早めに詰めるべきなどと指摘されました。
 
 東電の、粘土を詰めた袋と建屋の三十センチほどのすき間に水中でも固まるセメントなどを流し込み、水の行き来をなくし、氷の投入と併用するという対策案についても、
「すき間が残ったままセメントが固まったりしないか」「失敗した場合はやり直しがきかないのでは」などの疑問が続出し、結論を持ち越しました。
 
 凍結止水を基本とすることについては、東電の担当者は「泥縄に見えるところもあるだろうが、非常に狭い環境で難しい作業だ。ただ、目標の9割までは(凍結を)達成しているので努力させてほしい」と強調し、継続する考えを示しました。
 
 凍結が進むにつれて開口部が狭まるとそこの流速が上がることは最初から予想されたことであり、どこかでこれ以上は凍結しなくなるという限界がある筈です。その対策もなしに工事を始めたのは明らかな手抜かりです。
 
 またコンクリートが固まるときには熱を発しますが、それによってそれに接する凍結部分が溶け出して以後その部分の水流が高速化すれば、やはり氷の壁は完成しません。
 ズサンな計画のままに先ず着工することが肝心とばかり走り出したつけが、回ってきた感じです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東電対応「泥縄式」 第一原発止水工事 規制委検討会で本県関係者が批判
福島民報 2014年8月20日
 東京電力福島第一原発の海側トレンチ(電源ケーブルなどが通る地下道)の凍結止水工事をめぐり、19日に開かれた原子力規制委員会の特定原子力施設監視・評価検討会の会合では、本県関係の出席者から東電の対応が後手に回り続けているとの批判が出た。
 トレンチにたまる高濃度汚染水の抜き取りは、事故発生直後から懸案となっていた課題だ。東電はこれまで、トレンチと2、3号機タービン建屋間の接合部の凍結作業に楽観的な見方を示していたが、想定通りにならない事態が続いている。
 
 同検討会メンバーの角山茂章県原子力対策監(会津大教育研究特別顧問)「戦略的にもう一度考えないと、泥縄式にズルズルいくのでは」と指摘。「一つの対策が駄目なら新たに加えるという発想は、福島のプラントでは困る。もう少しクールに頭を氷で冷やさないと」と語気を強めた。
 同会メンバーの渡辺明福島大特任教授は「止水材を入れるだけでいいのか疑問を感じている。凍らせる以外の方法への転換もあるのではないか」と東電に検討を求めた。
 他のメンバーからは「凍結管をさらに増やす作業を優先すべきでは」「まず流量を減らすことが重要。その間に凍らせる戦略を検討してほしい」などの意見も出た。
 オブザーバーとして出席した高坂潔県原子力専門員は止水材注入の効果に不安があるとして、「万が一(失敗した場合)を考えて、別の対策も早めに詰めてほしい」と注文した。
 
 東電の担当者は「泥縄に見えるところもあるだろうが、非常に狭い環境で難しい作業だ。ただ、目標の9割までは(凍結を)達成しているので努力させてほしい」と強調し、凍結止水を継続する考えを示した。
 
 
第一原発トレンチ 止水材注入持ち越し 規制委 効果疑問の意見相次ぐ
福島民報 2014年8月20日
 東京電力福島第一原発の汚染水がたまる海側トレンチ(電源ケーブルなどが通る地下道)の凍結止水工事が難航している問題で、原子力規制委員会の特定原子力施設監視・評価検討会は19日、セメントなどの止水材を注入する追加策の可否について、結論を持ち越した。同日の会合で、委員から効果を疑問視する意見が相次ぎ、東電に対し、より詳細に検討するよう求めた。
 
 19日の会合で東電の担当者は、これまで実施してきたトレンチへの氷とドライアイス投入による止水効果について説明した。これによると、凍結した面積は拡大したが目標の約9割にとどまっている。凍った面積が増えたため、汚染水の流路が狭まり流速が3倍以上に達し、残りの部分が凍りにくい状態になっている。
 このため、流路付近に止水材を注入して流速を抑制し、凍結を促進させたい考えだ。止水材の素材として、セメントなどを検討しているという。
 
 東電の説明に対し、同検討会担当の更田(ふけた)豊志原子力規制委員は「止水材がうまくいかなければ、(固形化したセメントが障害になり)今後の対策の足かせになりかねない」と指摘。9月上旬から中旬に会合を開き、東電に再度、追加策に対する説明を求める考えを示した。「止水材を入れるだけでいいのか疑問だ」との声も上がった。
 東電は模擬試験などを通じて止水材注入での課題を探る。解決策を検討した上で、次回会合で報告する。
 福島第一原発2、3号機のタービン建屋につながるトレンチには高濃度汚染水約1万1000トンがたまり、海洋に漏れだしている可能性が指摘されている。
 東電は建屋とトレンチの接合部に凍結管を入れて氷の壁を築き、汚染水を抜き取る計画だった。しかし、接合部が十分に凍らず、凍結管を増設するとともに氷、ドライアイスをトレンチに投入。今月中旬までに氷の壁ができ、建屋とトレンチ間の汚染水の流れを止められると説明していた。