2014年8月31日日曜日

川内原発・適合性審査火山影響評価に関する緊急要請

 発の規制における火山活動のモニタリングに関する検討チームの第回の会合が 月25日に開かれ、そこでは川内原発再稼動に向けての原子力規制委の審査の誤りが、完膚無きまでに批判されました
 ところが原子力規制庁は、検討チームの日の第回の会合において「基本的考え方」をまとめるとしています。どんなに批判されようとも川内原発の審査結果には反映(=修正)させずに、専門家からの批判は聞き流して終わりにするという意図です。
 
 原子力規制を監視する市民の会ほかが、30日、規制委の田中委員長他宛に、「川内原発・適合性審査火山影響評価に関する緊急要請」を行いました。
① 川内原発の火山影響評価を、火山学者を検討の場に加えて一からやり直すこと
② 検討チーム第1回会合における指摘事実から、九州電力の申請はその根拠が失われ、火山ガイドの要求も満たさないことが明らかになったことから、再稼動を許可をしないこと 
③ 9月2日に「基本的考え方」をまとめるのはやめ、第1回会合での指摘事項について、火山検討チームでさらに検討を続けること 
を骨子とするもので、九電と原子力規制の判断の誤りを詳細に指摘する内容になっています。
 
 規制委側の誤りについて噛んで含めるように説明していますので、ご一読ください。
 なお、太字や下線の強調は原文で行われているものです。
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2014 年8 月30 日/9 月2 日
原子力規制委員会委員長     田中 俊一様
原子力規制委員会委員長代理  島﨑 邦彦様
火山活動のモニタリングに関する検討チーム御中
原子力規制を監視する市民の会他
 
原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チーム第一回会合を踏まえて
川内原発・適合性審査火山影響評価に関する緊急要請
 
要 請 事 項
 
一.川内原発の火山影響評価はこれを白紙とし、審査を一からやり直すこと。火山審査に際して、火山学者を検討の場に加えること
一.検討チーム第一回会合における指摘事実から、九州電力の申請はその根拠が失われ、火山ガイドの要求も満たさないことが明らかになったことから、これの許可をしないこと
一.9月2日に「基本的考え方」をまとめるのはやめ、第一回会合での指摘事項について、火山検討チームでさらに検討を続けること
 
要 請 理 由
原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チームの第一回の会合が8 月25 日に開催されました。会合は、実質的に川内原発の適合性審査火山影響評価(以下「火山審査」)についての検討の場となりました。
会合の中で、藤井敏嗣東大名誉教授からDruitt et al.(2012)(以下「ドルイット論文」)の紹介とコメントがありました。「ドルイットのこの論文は、3,500 年前のサントリーニ火山のミノア噴火では、準備過程の最終段階の100 年間に数~10kmのマグマ供給があったということを述べただけで、カルデラ一般について述べたものではない、これは本人にも確認をしましたけれども、一般則を自分は述べたつもりはないというふうに」との発言がありました。
さらに藤井氏から、ドルイット論文に即して、マグマ溜まりが沈降するなどし、マグマの供給に見合うだけの地表の隆起が起こるとは限らないこと、マグマ中の水の量について議論をしておらず、将来結論が変わる可能性があること、岩石学的調査では追試は行われないことから、ドルイット論文に反論がないからといって、それが正しいとみなされたわけではない旨の指摘がありました。
これは、川内原発の火山審査の結論を左右する重大な指摘です。というのも、まず、これも藤井氏が会合で指摘していたように、ドルイット論文は、火山審査に関する九州電力の以下の主要な3つ主張の根拠とされています。
(1) 原発の運用期間中に巨大噴火が発生する可能性は十分に小さい
(2) モニタリングにより巨大噴火を知ることができる
(3) 予知をしてから噴火までに核燃料を搬出するための十分な時間がある
そして、そのいずれもが、ドルイット論文に書かれていることがカルデラ噴火一般に適用でき、よって南九州のカルデラにそのまま適用できること、そしてマグマの供給がそのまま地表面の地殻変動に現れることを前提としているからです
火山影響評価ガイドは、立地評価において、「設計対応不可能な火山事象が原子力発電の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分に小さいと評価できない場合には、原子力発電所の立地は不適と考えられる」とし、十分に小さいと評価された場合でも「火山活動のモニタリングと火山活動の兆候把握時の対応を適切に行うこと」を条件としています。九州電力の申請内容は、巨大噴火の可能性が十分に小さいこと、兆候把握時の対処方針のいずれについても、その根拠が崩れたのです。よって、火山ガイドの要求を満たしているといえず、申請を認めることはできません
 
原子力規制庁は、検討チームの9 月2 日の第二回の会合において「基本的考え方」をまとめるとしています。第二回でいきなり「まとめ」というのは非常に不可解です。これがもし、川内原発の火山審査に関わる事項はさっさと終わらせてしまおう、あるいは、川内原発については審査書が確定する前に火山学者の意見を聞く場を設けたことを既成事実にしよう、ガス抜きの場としようというのであればとんでもないことです。
第一回の会合で明らかになったことは、川内原発の火山審査について、九州電力の申請内容には根拠がなく、火山ガイドの要求も満たしていないこと、審査を白紙とし、一からやり直す必要があること、そして、これまで火山の専門家を排除してきたことにやはり問題があったということです
 
◆原発の運用期間中に巨大噴火が発生する可能性について
原子力規制委員会による審査書案において、申請者が巨大噴火の活動可能性が十分に小さいと評価する根拠の一つとして記載されています。「Druitt.et al.(2012)がVEI7 以上の噴火直前の100 年程度の間に急激にマグマが供給されたと推定している知見、…に基づき、国土地理院の電子基準点間基線距離の変化率からマグマ供給の状態を推定し、…現在のマグマ溜まりがVEI7 以上の噴火直前の状態ではないと評価し、…運用期間中のVEI7 以上の噴火の活動可能性は十分に小さいとしている。」(P63)とあります。
しかし、藤井氏がドルイット氏本人に確認した結果から、ドルイット論文を巨大噴火一般についての知見として扱っている点に誤りがあることになります。また、マグマ供給の状態を地表面の地殻変動(電子基準点間の距離の変化率)から推定することにも疑問が呈されています。なお、ミノア噴火はVEI6 レベルであり、審査書案の記載はその意味でも誤りです。
 
◆噴火の兆候の把握について
兆候の把握について、九州電力の申請はドルイット論文に依拠しています。100 年程度前にマグマ供給速度が増えたことを地殻変動で捉えればよいという理屈です。
さらに、適合性審査会合の場で提示した兆候把握時の判断基準案にも用いています。すなわち、ドルイット論文によると、100 年程度前から、マグマの供給速度が上昇し年間0.05 立キロ以上となるが、これが姶良カルデラにおける現在の供給速度の5 倍であることから、姶良カルデラ周辺で、地殻変動の速度が現在の5 倍以上になれば警戒体制に入る…といった具合です。ミノア噴火によるマグマ供給の知見を、全くそのまま姶良カルデラに当てはめています。しかも、マグマの供給速度が地殻変動の速度に完全に一致することも前提にしています。しかし、その根拠が崩れたことになります
原子力規制委員会による審査書案には、「兆候を把握した場合の対処方針を示している…火山ガイドを踏まえていることを確認した」とあるだけです。詳細は保安規定で確認するとしています。しかし、対処方針の根拠が失われた以上、「確認」の意味はありません
検討チームの会合では、他の委員からも、噴火予知の困難さ、特に何年、何十年もかかる核燃料の搬出を考慮した場合に、それに対処できるだけのモニタリングが可能であるかについて疑問の声が出ました。藤井氏の指摘については、原子力規制庁を含む他の委員から反論はありませんでした。
以 上
 
 8/30 現在9 団体(鹿児島・佐賀・関西・首都圏)賛同募集中
原子力規制を監視する市民の会/反原発・かごしまネット/避難計画を考える緊急署名の会/玄海原発プルサーマルと全基を止める裁判の会/グリーン・アクション/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/国際環境NGO FoE Japan/グリーンピース・ジャパン/福島老朽原発を考える会
 
<連絡先> 原子力規制を監視する市民の会:東京都新宿区下宮比町3-12-302
TEL:03-5225-7213/FAX:03-5225-7214/090-8116-7155(阪上まで)