2014年8月7日木曜日

指定廃棄物の最終処分場 候補地の地元は大反対

 福島原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場の建設候補地に選ばれた栃木県塩谷町と宮城県加美町は、ともに強い反対の意思を表明しています。
 
 塩谷町の町議会は5日、候補地の白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決しました。
 塩谷町は「名水100選」が湧き出すところでもあり、見形町長は「新たな選定手順には地元の意向を十分に聴取した上で検討と書かれていたはず。闇討ちのような提示は、前回の矢板市の時と同じではないか」と、環境省への不信を強調しました。
 
 宮城県加美町の猪股町長も5日、前日の宮城県内市町村長会議で、町が拒否してきた国の詳細調査を受け入れる方針が決まり、石原環境相から意見の取りまとめを依頼されている村井嘉浩知事が、近く調査受け入れの意向を石原氏に伝える見通しであることに対して、「候補地の選定過程の検証がまだ終わっていないのに調査を受け入れることはできない」とあらためて反対しました。
 また町の反対を押し切って国が調査を行う場合は、「訴訟も辞さない」と調査の差し止めを求め提訴に踏み切る可能性を示唆しました。
 
  いずれにしても政府への信頼感が全くない現状では、このままで収まりがつく可能性はありません。
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塩谷町議会 白紙撤回求める意見書 候補地提示「闇討ちのよう」
東京新聞 2014年8月6日
 「指定廃棄物」の最終処分場の建設候補地に、塩谷町上寺島の国有林が選ばれたことを受け、五日、候補地の白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決した塩谷町議会。見形(みかた)和久町長と町議の間で行われた質疑では、町議から「環境省はルール違反だ」「(栃木)県にも質問状を出したい」などの不満が噴き出し、国からの詳細調査の受け入れ要請に激しく揺れる地域の姿が浮かび上がった。 (大野暢子)
 
 「新たな選定手順には『候補地の提示方法は、地元の意向を十分に聴取した上で検討』と書かれていたはず。闇討ちのような提示は、前回の矢板市の時と同じではないか」
 橋本巌(いわお)町議は、厳しい口調で指摘した。根拠は、昨年十二月の第四回市町村長会議で、環境省側が出した「選定手順の見直しについて」の資料。同省は、市町村長会議で決まった基準に従い、塩谷町を選んだとして理解を求めているが、候補地の選定を突然突きつけられた形の町民は納得できない、という考えだ。
 
 折しも四日、同じく処分場問題を抱える宮城県で、村井嘉浩知事が栗原市、大和町、加美町の三つの候補地での詳細調査の受け入れを決定。三市町とも建設に反対、加美町については調査も拒否している中での受け入れ表明だった。
 宮城県の例を示した町議が「私たちの事例とは違うのですよね」と町長に尋ね、同じ事態にならないことを確認する場面もあった。
 
 環境省は最終処分場の安全性を強調するが、渡辺春夫町議は「安全ならば市街地に造ればいい」との持論を展開。国の方針を追認してきた県に、具体的な見解を問う質問状を出すことを提案した。
 見形町長は答弁で、今回の提示方法について「私も非常に疑問に思っている」と共感。環境省には引き続き、提示方法や選定の過程に関する説明を求めていくとした。
 臨時議会後、見形町長と町議十二人は候補地の同町上寺島を視察。ある男性町議は「冬は積雪がある。車両を通すために融雪剤をまいたら、土や水が汚れる」と顔をしかめた。
 
 見形町長は視察後、記者団の取材に応じ、環境省側が示した「住民の理解がなければ詳細調査をしない」との方針に、「守っていただけるものと思っている。信頼するしかない」と述べた。
 
 
「処分場は清流汚す」、塩谷町長と町議会が視察 
指定廃棄物処分場問題
下野新聞8月6日 朝刊
 塩谷町の見形和久町長と同町議会は5日、環境省が指定廃棄物の最終処分場の詳細調査候補地に選定した同町上寺島(寺島入)の国有地を視察した。町議たちは「処分場建設は清流を汚すことになる」などと、町の魅力である豊かな自然環境が打撃を受けることに懸念を示した。
 
 町役場から北西に約6・5キロの東古屋湖から、林道を車で約30分ほど走った候補地近くの豊月橋。
 「この沢を見てほしい。この豊かな自然環境に果たして処分場を造れるだろうか」。見形町長は橋の上で同行した記者団に強調した。
 候補地は沢水が集まる西荒川の右岸に当たる。「この近くに環境省の名水百選の尚仁沢湧水と同じ湧水がある。ここに建設するのがベストなのか(環境省には)しっかり考えてほしい」
 
 町議会は全議員12人が参加。田代浩敏議長は「断固反対の意思を強くした」。町観光協会長を務める渡辺春夫議員は「塩谷町の観光産業は原発事故の被害からまだ回復していない。その上さらに最終処分場の候補地となった。いかに処分場の安全策を講じようと(観光客から)信用されるものではない」と語気を強めた。
 
 
「調査受け入れない」加美町長、会議進行を批判 
河北新報 2014年8月6日 
 福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設をめぐり、加美町の猪股洋文町長は5日、町役場で記者会見した。4日の(宮城)県内市町村長会議で町が拒否してきた国の詳細調査を受け入れる方針が決まったことに対し「候補地の選定過程の検証がまだ終わっていないのに調査を受け入れることはできない」とあらためて反対した。
 
 今週中にも村井嘉浩知事は石原伸晃環境相に調査受け入れの意向を伝える見通し。猪股町長は環境省に対し町との協議を申し入れる考えを示し、「調査受け入れを断った上で、協議を通して選定過程の問題点を明らかにする」と述べた。
 町の反対を押し切って国が調査を行う場合については「訴訟も辞さない」と調査の差し止めを求め提訴に踏み切る可能性をあらためて示唆した。
 (宮城)県が開催した4日の市町村長会議に関しては「候補地の選定基準を決めたのも市町村長会議だった。会議ですべきことは基準に基づき選定されたかどうかの検証で、それをせずに強引に意見集約したのは乱暴」と会議の進め方を批判した。
 
◎仙台市長は賛意「議論を重ねた」
 福島第1原発事故で発生した指定廃棄物の最終処分場建設をめぐり、村井嘉浩知事が候補地絞り込みに向けた国の詳細調査受け入れを表明したことについて、仙台市の奥山恵美子市長は5日の定例記者会見で「一つ前進させることが自治体の選択として望ましい」と賛意を示した。
 調査受け入れは、4日の市町村長会議で取りまとめられた。奥山市長は「全市町村長で長期間、相当の議論を積み重ねている。その経過を踏まえて今後を考える必要がある」と話した。
 
 候補地3市町のうち、加美町の調査拒否姿勢に関しては「プロセスに地元自治体の疑念が残っているのは良くない。少しでも解きほぐす手段が必要だ」と指摘。詳細調査に関する疑問点などについて、国がもっと説明を尽くすべきだとの考えを述べた。